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それと相対す

 虚はギシギシと音を立てながら長い梯子を下りてゆく。


 下を見ても灯りは見えず、音の反響で深さを測れるほどに耳も良くない為、一歩ずつ降りているが、やはり退屈である。



「こうして無防備な姿を晒しているんだ」

「なぜ攻撃を仕掛けてこない」

「もしや本当に私の勘違いだったりするのか?」



 色々と考えてしまい、ついには自分の出した結論を疑うようになってしまっている。


 いくら身体が人間離れしているとしても、精神はそれほど人間と乖離していないのか、暗闇の中にずっといるのでは流石の虚でも不安定になってしまうようだ。



「暗闇というのは恐ろしいな」

「うむ、私でさえ不安になるのだ」

「昔に見た新聞の事件の子供は相当に恐ろしい目に遭っていたのであろうな」

「潜伏作戦中に発狂する奴らの気持ちも分かるというものよ」



 不安定になった自己を安定させるように自身と会話を繰り返す。


 生前の出来事などを思い出しながら独り言に耽っていると、ふとこの長い梯子での移動を終わらせる方法を思いつく。


 そう、飛び降りればよいのだ。


 再生しなくなる恐れもないわけではないが、”もしも”を考えてもしょうがない、と梯子から足を外し、手を放す。



 落下するとき特有の浮遊感をその身に感じながら、穴の中を降下していく。


 加速していく落下速度に、少々ヒヤッとしたものを感じ、心の中で覚悟を決めようとした瞬間、膝から下が破裂し、全身へ衝撃が迸る。



「い”た”い”」



 墜落の衝撃によって、足だけでなく、顎や脊椎まで損傷してしまったようで、少々ぎこちない発言をしながら倒れこむ、


 全身の激痛によって顔を顰めるが、その際に砕けた顔の骨を動かしてしまったことでさらに激痛が走り、表情が固まる。



 それから一拍置いて、全身の再生が始まる。


 砕け散った骨が繋がっていく感覚や、足が生えていく感触を感じながら、跳ね起きる。


 再び地面に着地した時には足は治っており、他の身体の損傷も修復されている。再生しなくなるかもという心配は杞憂に終わった。



 落ちてきた場所を見上げれば、遥か高い場所にほんの少し光が見えた。


 かなり落ちてきたようで、梯子を登っていくのも一苦労だろう。


 そして周囲を見回せば、灯りの類は一切なく完全な闇が形成されていた。



「この体に暗視の機能は着いていないのか」

「まさか壁伝いに歩くことになろうとはな」



 ペタペタと左手で壁に触りながら、壁伝いに先へ進んで行く。


 ここで原始的なトラップでも仕掛けられていたら大変なことになるが、幸いにもそういった類の罠は仕掛けられていなかった。



「罠は無し、か」

「ここまで何もないと逆に不自然だぞ?」

「罠の概念を知らない、とかか?」



 ここまでで罠っぽいものが檻の中の人間だけだったということを考えると、人が思いついたような罠を張ることが苦手なのかもしれないと仮説を立てる。



 精神的に不安定にならないよう、自身と会話しながら進むことしばらく、ついに壁のような物にぶつかった。


 触ってみるが、材質は木でできており、そこまで頑丈に作られているわけではないらしいことが読み取れた。



 壁を開くための仕掛けもないようなので、その木の壁に向かって拳を振りかぶり、大きい音と共に破壊する。


 衝撃でこの洞窟が崩れるような様子もなく、目の前の壁だけを破壊することに成功したようで、壁の奥にほんのりと灯りが見えた。


 そしてその灯りを囲むように人影のようなものがいくつも並んでいた。



 声を掛けるか悩んだ末、気付かれない程度の距離まで近寄ってみることに決めた虚は、極力音を立てないようにゆっくりと足を動かす。


 裸足であることを最大限生かした忍び足は、ほとんど音を立てぬままにその影へと近づくことが出来た。


 灯りを囲む人影は、灯りの中心にあるものを崇めるかのようにしゃがみ込んでおり、まるで宗教の礼拝のような雰囲気すら感じた。



 虚も気になり、灯りの中心にあるものを見れば、そこにあったのは人間の腕だった。


 遠目に見ているため確証はないが、虚は中心にあるそれが、自分の腕のような気がして体を震わす。



『矢岸のように面と向かって神だなんだと言われるのはまだいいが』

『こうして私が与えた体の一部を崇められているかもしれなというのはこう、気持ちのいいものではないな』

『事実がそうでない可能性もあるが』

『可能性がある時点で不気味さを感じても仕方あるまい』



「おい、そこの妙なことしてるお前たち」



 直感的に自分の身体の一部が崇拝対象になっているかもしれないことに寒気を覚えた虚は、思わず声を掛け、その人影たちと対峙する。



 振り返ったその人影は、悍ましい化物の風貌をしていたが、六華と離れた広場で出会った生命体ほどではなく、そこらにいる異形とそこまで大きな差のないものであった。


 幸いと言うべきか、不幸と言うべきか、その異形は辛うじて表情のようなものを読み取れる造形をしており、振り返った時に見せたその表情は、怨嗟に満ちていた。



「お前は……怒っている、のだよな?」

「すまんな、お前たちの表情を読み取るのが私には難しくてな」



「オ前は、誰ダ」

「ナゼ我ワレの儀式ノ邪魔をすル」

「どうヤッて、コノ場所を見ツケたのだ!」



「我ラの存在ヲ引き上げるタメの供物ヲ捧げる儀式の邪魔ヲスルな!!」

      この先、星があるぞ     

     あぁ、星  おそらく星   


ブックマーク、評価の程よろしくお願いいたします。


カクヨムにて、コンテスト用の作品として新作を出しています。

もしお暇があれば読んで、評価やブクマをして頂けると大変うれしいです。

暇がなくても興味があれば読んでください。よろしくお願いします

「空想を演じる底辺役者〜キャラ設定でデスゲームを生き残る〜」

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