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それの身体の使い方・2

 筋肉と筋がズタズタになり、だらりと下がった腕を持ち上げ、再生を補助しながら再生した脚に力を籠める。



 脚の筋肉を絞るようなイメージで力を溜め、飛び出すように攻撃を放つ。

 しかしパターンを学んだのか、それとも生物としての勘なのか、敵の生命体は虚の攻撃を紙一重で避け、反撃を加えてくる。



 なぜ攻撃を避けられたのか。それは虚の予備動作の大きさが影響している。


 いかに虚の身体能力が強靭であろうとも、攻撃へ移行する動作を無にできるわけではない。

 予備動作が増えれば、相手にに付け入られる隙も増える。

 事実、先ほど脚に力を込めた瞬間に触手が腕を打ち、二の腕の筋肉が削がれた。



 生前の最盛期であれば、虚が攻撃を繰り出すとき、予備動作をほとんど零にして放つことが出来ていた。ゆえに隙も少なく、敵の反撃や奇襲による攻撃をほとんど受けることなく生き抜いてきたのだ。


 しかし、体が変わった影響か、肉体の強さが変わった影響か、虚が威力の高い技を放つときに必ず溜めが必要になってしまっている。



 今でこそ再生によって無理やりに攻撃を放つことが出来ているが、一瞬でこちらを行動不能にすることが出来る強者が現れた場合、この隙は致命傷へとつながる。


 そんな脳内反省会を終え、先ほどよりも少々溜めを短くしてから放つ。



 意図せずタイミングをずらした攻撃となり、不意を突かれた生命体へ攻撃が届くが、少し跳ね飛ばしただけに留まる。



「隙とかそういうことを気にしていられるような相手じゃないな」

「賢いわけじゃないが、脳無しでもない」

「肉体の強度は私のそこそこの力を込めた攻撃をほぼ無効化する程度、と」

「実験にはちょうどいいが、喧嘩の勘を取り戻すのには使えなさそうだな」



 虚が跳ね飛ばした生命体は、陥没した胴体を見るや否やボールに空気を入れるかのように患部を膨らませ、元の形状に戻す。


 虚のように死に体になっても平然と戻ってくる、とはいかないが、致命傷ではない程度の負傷であれば即座に回復する。


 一般の兵士であれば恐ろしい不死身の生命体に見えるのだろう。



「再生機能もあるか」

「その死体をあの塵山に混ぜたらどうなるか」

「少々気になるところではあるが」

「まずは全員殺してからだ」



 しかし数体を殺す事が出来ている虚からすれば、反撃してくるサンドバッグのような存在であり、群れの中へ置いて来てしまった塵山の卵に混ぜ込んだらどのようなものが生まれるのか、と素材としての価値を見出し始める程度には恐れる必要のない存在である。



 出来るだけ予備動作を少なくするように意識して駆け出す。

 一歩を大きく、無駄な動きを減らして走り、その間に握りこんだ拳へ力を籠める。

 握りこんだ自分の握力で指の骨が折れる音を感じながら握り続け、駆け出した速度のまま振りぬく。



 歪な生命体の胴体の皮膚を引き延ばしながら振り抜かれたその拳は、その腹を突き破って破裂させる。


 そのままその死体を残り六体の生命体の元へ蹴り飛ばし、目隠し代わりに使用する。



 飛来した障害物だと思ったのか、同族の死体を滅多打ちにする敵を見据えながらその背後へと回り、脚を振り上げる。


 空中へ放り出された敵目掛けて飛び上がり、その体を掴みながら地面へと墜落。



 相当に高い場所から落ちたこともあり、虚の半身は潰れて悲惨な状態となっていた。


 一緒に落ちた相手も同様に潰されており、まるでアルミ缶を上から潰したような姿となって動かなくなった。



 死んだ敵をよそに再生して動き出す虚に対して、ようやく警戒という行動を学んだのか、無暗に飛び掛かってくることはなくなり、様子を伺うように攻撃の手が止む。



「馬鹿か」



 その一瞬を虚が見逃すはずがない。


 攻撃が止んだその瞬間を突いて、瞬間移動にも思えるような速さでその中の一体へと接近し、拳を構える。


 緩く握った拳を一瞬の突き出す動作と共に固く握る。


 動作はそれだけ。俗に寸勁と呼ばれる技。


 一瞬の動作で相手の体内へ力を余すことなく伝え、体の内部を破壊する技だが、一般の人間が使っても内臓を破壊する程度の威力が出るのだ。



 今の虚が使おうものなら、目の前の生命体のように破裂してしまうのも仕方のないことだろう。



「さて、残りは……三体だな」

「一気にやるか」



 近づいてきた一体の重心を見抜き、足払い。


 転んだその体へ全力で足を振り下ろす。


 ベギ!!と音が鳴り響き、体が潰れる。



 二体目は、触手を使わずに牙を剥いて飛び掛かってきた為、体の頑丈な部位である背中をぶつけてやる。


 飛び掛かってきた為に衝撃を消し切れず、弾き飛ばされるように吹き飛んだ相手へ追撃の鉄槌。


 地面へ叩き落したその肉体は四肢が千切れ、胴体もプレス機に掛かったかのように潰れ、再生が不可能だと判断する。



 最後の一体には技の欠片もない純粋な力で決着をつける。


 指をかぎ爪のように曲げ、敵の生命体の肩口を掴む。


 指の形を固定したまま、ゆっくりと下に降ろしていき、何かの繊維が切れて、潰れていく感触を直に感じながらその体を引きちぎった。



「ふぅ……」

「これで最後か」

「いい運動になったな」



「さて、奴らのところに行くか」

      この先、星があるぞ     

     あぁ、星  おそらく星   


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