出会い(バルド視点)
何時から剣に興味を持ったかは、覚えてないけど、物心付く頃から、父や兄が庭で剣術の稽古をしているのを見ていたし、父から初めて貰った物も剣だった。
強い父は俺の憧れだったから、兄と一緒に稽古を付けて貰うのも楽しかったし、過去の武勇伝などを聞くのも好きだった。だけど、父も兄達も、屋敷にいる時間が少なくて、1人で稽古をしている事も多かった。
「オレにも…弟がいればなぁ…」
そうすれば、一緒に稽古して遊んだり出来るし、屋敷にいても寂しくないのにな…。
訓練場の隅に、1人座りながら空を見ていた。
その日も、1人で訓練場まで来たけれど、最近は誰も相手をしてくれないので、何も楽しくない。
「クー兄も、遊んでくれなくなったしなぁ…」
2番目の兄は、学院から帰って来ると、一緒に遊んでくれていたのに、最近は外に遊びに行く事が多くて、中々帰って来ない…。
俺も、外に抜け出してやろうかと思ったけれど、前に失敗して以来、使用人達の監視が厳しくなったので、門から出るのは無理そうだった。他の場所から出ようにも、屋敷の周りにある柵が邪魔で抜け出せそうにない。
「もっと、出入りしやすいように作れば良いのに…」
他に何か、面白そうな事はないかと、頭を捻っていると、裏庭に立っている小屋の事を思い出した。
裏庭にある小屋は、古くて危ないから、近付くなと普段から言われていた。だけど、誰も相手してくれないという不満もあって、俺は忠告を無視して小屋へと向かった。
小屋の前まで来ると、屋敷の窓から見るよりもボロく見えた。誰も使っていないからか、所々傷んでいて、扉の鍵も錆びついて壊れかけている。
俺は、近場にあった石で鍵を壊すと、小屋の扉を開けた。扉を開けると、部屋の中に溜まったカビ臭いような匂いが漂って来た。
「うっ!!」
漂ってくる匂いに顔をしかめ、手で鼻を覆いながら、俺は小屋の中に入って行った。
「何か、面白い物ないかなぁ?」
部屋には、家具が置いてあったが、虫が食ったような後があったり、湿気でカビが生えていて使えそうになかった。
「ちぇっ…。何かあるかと思ったのになぁ…」
諦めて小屋を出ようとした時、足元の床がギシと音を立てて鳴った。他の床はならなかったのに、そこだけがギシギシと音をたてて鳴っていた。不審に思ってよく見れば、床板に指が入りそうな小さな穴が空いていた。試しに、穴に指を入れて引っ張ってみれば、床板が簡単に外れて、下へと続く階段が現れた。
「すげぇー!!隠し通路!!」
こんな面白そうな物を見つけて、そのまま帰るなんていう選択肢がなかった俺は、迷わず階段を下りて行った。
中は薄暗くて、歩き辛かったけど、手探りで様子を伺いながら、何とか進んで行った。しばらく歩いていると、足先が何か当たった。しゃがんで触ってみると、どうやら階段があるようだった。確認するように上を見れば、床板の切れ目から薄っすらと、明かりが溢れているのが見えた。転ばないよう、ゆっくり階段を登り、床板を上へと押せば、床板は簡単に持ち上がった。
床板の隙間から周りを見渡せば、そこは倉庫になっているようで、荷物などが多数置いてあるだけで、人の気配はなかった。
俺は、床板を脇に置くと、小屋の外へと出るために扉へと向かった。扉の鍵はかかっていたが、内側からも開けられる仕組みだったから、俺は鍵を開けて外に出た。
小屋の外に出てみれば、俺の屋敷が柵の向こう側に見えた。此処は、柵越しに見ていた屋敷の裏庭だった。結構長い距離を歩いたと思っていたけど、対して歩いていなかったようだ。
「とりあえず!探検続行だな!!」
初めて屋敷を出た開放感と、ワクワク感であちこち探検をしていた。その途中、屋敷を覗いたら本を読んでいるコンラットを見つけた。
自分よりも小さいコンラッドを見て、弟が欲しいと思っていた俺の願望が、叶ったのかと思った。俺は、自分の事に気付いて欲しくて、窓ガラスを叩いたら、悲鳴を上げられるほど怖がらせてしまったと、その時は少し反省した。
その後、言いつけを守らず小屋に近付いた事から順に、父達からこっぴどく怒られた。後から知ったけど、あの小屋は、此処が空家になる前に住んでいた住民が作った物で、その当時のまま放置されていたそうだ。
まあ、そんな事はどうでもいいんだけど。俺は、怒られたからといって、せっかく見つけた遊び相手を諦めるつもりはなかった。
その後も、コンラットの屋敷に行っては、一緒に色んな事をして遊んだ。コンラッドは、誘う度に不満を言うけど、何時も俺の遊びに付き合ってくれる優しい奴だ。
だけど、俺よりも体格が小さいので、弟分のようにも思っていた。まあ、はしゃぎ過ぎて怒られる事も増えたけど、まったく気にもならなかった。
コンラットが、俺だけが怒られているのを、気不味そうに見ている事があったけど、言い出したのは俺だし、弟分を守るのは当然だからな!さて、明日は何して遊ぼうか!!
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