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落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!  作者: ユーリ
2章

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誕生日


「今日は友人の家に遊びに行っていたようだけど、どこへ行ってきたんだい?」


夕食の席で、父様が今日の出来事を尋ねてきた。


最初は父様達への贈り物を買うつもりでネアの所へ行った。けれど、それを商会からの贈り物として受け取ってしまったので、結局はお土産として、みんなに渡していた。だからだろうか、父様は僕がどこへ行っていたのか、不思議そうだ。


「ウィンクルム商会っていうお店をやってる友達の家に行ってきたんだ。色んな商品を見せてもらったんだけど、屋敷にも置いてある物があったよ。あっ!お客さんもいっぱい来てたし、それにネアのお父さんも、いい人そうだったよ!」


途中で頼まれていたことを思い出し、ネアには違うと言われたけれど、商会で会った父親のことや店の様子を父様に話す。僕なりに一生懸命話すと、父様は静かに頷きながら最後まで聞いてくれていた。


(他に、何か話すことあったかな……?)


記憶を辿っていると、途中で話題になったことを思い出した。


「ウィンクルム商会なら覚えているよ。そうか……そちらに行っていたのか。私はてっきり、ベルンハルト。グラディウス家の屋敷に行ったのかと思っていたよ」


「なんで、バルドの屋敷だと思ったの?」


誰の家に行くとは言っていなかっただけに、僕は不思議に思って尋ねる。すると父様は、少し真剣な面持ちで答えた。


「彼には書庫で一度会ったが、自分から人を家に誘うような性格には見えなかった。だから、誘われるとしたらベルンハルトの息子の方だろうと思ってね」


(確かに……ネアよりバルドの方が誘いそう)


一度しか会っていないのに、そんなことまで分かるなんて、父様は色々と見ているんだな。と僕が一人で感心していると、ふと思い出して声を上げる。


「あっ!!父様!僕、お小遣いが欲しい!!」


バルドのことを考えていたら、お小遣いの話も思い出し、思わず声を上げてしまった。それは、自分でも驚くくらい、大きな声だった。


「お小遣い?欲しい物があるなら、いくらでも買ってあげるよ?」


急に声を上げた僕に驚きながらも、父様は何か欲しいものがあるのかと、不思議そうな顔をして言う。


「そうじゃなくて、一人でお小遣いをやりくりしながら買いたいの!!」


「わざわざそんなことをする必要はないんじゃないかな?」


苦労しなくていいことを、わざわざ苦労する意味が分からない。父様はそんな顔をしていた。


「決められたお金で何を買うか悩んだり、足りるかどうか考えたりしながら買う方が楽しいでしょう!それに、バルドだって、お小遣いから出して買ってるって言ってたよ!」


親に言わなくて良い分、バルドは内緒で物を買うこともできると言っていた。だからこそ、父様達への贈り物もだって秘密で買える。それに、僕だってできるんだってところを見せたい。そう思って言うと、父様は首を傾げながら言った。


「しかし、それでは不便なこともだろう。もし、私達に知られたくないというのなら、リュカ専用の金庫でも用意して好きに持ち出せるようにしようか?それならば、不便なく一人で買い物ができるだろう」


「そうじゃないの!!」


父様との認識に差があり、どう説明したらいいか僕が困っていると、二人から助け舟が入った。


「アル。欲しい物をただ買うだけというのも良くないわ。リュカがそうしたいと言うなら、いいんじゃないかしら?」


「勉強の一環にもなると思いますし、良いのではないでしょうか」


母様と兄様にそう言われた父様は、一瞬意外そうな顔をした。それから少し戸惑ったような声で言う。


「いや、私としても特に反対する理由はない。皆がそう言うのなら……ドミニクと金額を相談して、後で渡そう」


父様は最後まで、どこか理解できないというような不思議そうな顔をしていた。それでも、無事に、お小遣いをもらえることになった。


休み明け。教室に入ると、バルドが楽しそうに二人へ何か話しているところだった。


「おはよう」


「おはよう!リュカ!」


「今日は、いつもより元気だね?」


「分かるか!?リュカのおかげで良い事があったんだ!!」


「良い事?」


不思議に思って聞き返すと、バルドは嬉しそうに笑った。


「おう!一昨日買った酒を親父に渡したらな!子供が気を使うなって最初は言ってたんだけど……今度、剣術の稽古に付き合ってくれるって言うんだ!それに小遣いも増やしてくれるって言ってたし、良いことだらけだった!!贈り物はするもんだな!!」


(別に、そういう意味で言ったわけじゃないんだけどな……)


興奮した様子で語るバルドを前に、僕が心の中で小さく呟いていると、その話を聞いていたネアが口を開いた。


「選んだ酒も、悪くなかっただろ?」


ネアが淡々と言うけれど、自分が選んだ品だからか、どこか得意げにも見えた。


「あぁ!あんまり話さない親父も、うまいって言って飲んでたぞ!今度、みんなの誕生日にも何か贈るな!」


「はぁ……バルドは本当に単純ですね……」


楽しそうに宣言するバルドを、コンラットが少し呆れた目で見ていた。


「そういえば、リュカとネアは誕生日いつなんだ?」


「僕は冬生まれだから、まだまだ先だよ」


「俺は秋だな」


僕達が答えると、バルドは不思議そうに首を傾げる。


「珍しいな?俺の親父とかもそうだけど、だいたい春か夏生まれが多いのに」


「そうですね。僕の家族にもいません」


「そういう二人はいつなの?」


僕にとってはそれほど珍しいことでもないため、逆に聞き返してみる。するとバルドが元気よく答えた。


「コンラットは再来月で、俺は来月だな!」


「アルノルド様と同じ月なのは、普通に羨ましいです……」


コンラットが少し羨ましそうに言うと、バルドは得意げな顔をした。でも、当事者である僕は、どういう顔をすればいいのか分からず、微妙な気持ちで二人を見ていた。


その後もしばらく、僕の家族の誕生日の話で盛り上がっていた。その流れで、お小遣いを貰えるようになったことをみんなに話し、そのお金で買えそうな物をネア達に相談していた。


そして迎えた、父様の誕生日。


「父様!誕生日おめでとう!!」


「ありがとう、リュカ」


「はい!これプレゼント!」


いつもと同じように、家族と使用人達みんなで父様の誕生日をお祝いしながら、僕は用意していたプレゼントを父様に手渡した。


「開けてもいいかな?」


「うん!」


僕の返事を聞くと、父様は静かに箱を開けた。すると、中に入っていた物が姿を現す。


「懐中時計だね」


「うん!ネアの所で買ったんだ!今度は、ちゃんと買ったんだよ!」


「……そうか」


箱を開けた時、父様は嬉しそうだった。でも、僕が買った場所を聞いた瞬間から、少しだけ複雑そうな顔をした。けれど、その後は母様や兄様達からの贈り物を渡し、みんなで楽しくお祝いしていれば。そんな表情のことも、いつの間にか忘れてしまっていた。


そして、父様の誕生日を終えた週明け。僕はいつものように兄様と過ごしながら、今度はバルドの誕生日に何を贈ろうか考えていた。その時、兄様がふと口を開いた。


「リュカ。友人に聞いておいて欲しいと頼んだ件はどうなった?あれから、だいぶ時間が経っていると思うのだが」


「?」


兄様の言葉の意味が分からず、僕は首を傾げる。すると、その様子で察したのか、兄様が続けて言った。


「手合わせの件だ」


「ああ!!」


あの日は朝から揉め事があって、聞くのをすっかり忘れていた。そして、そのまま今日まで、完全に忘れていた。僕が答えられずにいると、兄様が静かに口を開く。


「……忘れていたのか?」


「ご、ごめんなさい……」


忙しい中で時間を作ってくれているのを知っているだけに、思わず小さな声で謝る。けれど、兄様は首を振った。


「怒ってはいない。ただ、今週の週末なら時間が取れそうだったから確認しただけだ」


そう言ってから、少しだけ言葉を続ける。


「だから、その日に予定が空いているか、相手に確認しておいてくれるか?」


「うん、分かった!」


学院に行ったら、朝一番でバルドに確認しよう。そう思ったけれど、また忘れてしまいそうで少し不安だった。だから僕は、リタにも声をかけてもらおうと思い、一度部屋へ戻ることにした。

お読み下さりありがとうございます

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