誕生日
「友人の家に遊びに行って、どうだった?楽しかったかな?」
夕食の席に、父様から今日の出来事を尋ねられた。ネアのお父さんから、贈り物を貰っているし、頼まれてもいるから、ちゃんと父様によろしくしなくては!!
「友達の家が、ウィンクルム商会ってのをやってるんだ!そこで、色んな商品が見せて貰ったよ!後、家に置いてある物もあったから、品も良かったと思うよ!あ!お客さんもいっぱいたよ!えっと…そ、それに、お父さんもいい人そうだったよ!」
僕なりに頑張って、お店で見た良い所などを父様に語った。その間、父様は静かに僕の話しを聞いてくれていた。他に、何か話す事はあったかと記憶を辿っていると、最後の方に言っていた事を思い出した。
「そういえば、僕の屋敷にも来た事があるって言ってたよ?覚えてる?」
「覚えているよ。そうか、そっちに行ってたのか…。私は、ベルンハルト…騎士団長の屋敷に行ったのかと思っていたよ」
騎士団長の息子って言うと、バルドの事かな?
「何で、バルドの屋敷だと思ったの?」
「友達から誘われたと、朝に言っていただろう?書庫で会った彼が、自分から家に誘う事はしないと思ったんだ。だから、誘われるならマルコの息子かと思ってね」
確かに、ネアよりもバルドの方が誘いそうだもんね。1回しか会っていなくても、父様にはそういうのが分かるんだな。僕は、父様に感心しながら1人納得をしていた。
「あっ!!父様!僕!お小遣いが欲しい!!」
バルドの事を考えていたら、お小遣いの事も思い出した。
「お小遣い?欲しい物があるなら、いくらでも買うよ?」
父様は、不思議そうな顔をしながら、僕に言った。
「そうじゃないの!お小遣いが欲しいの!!それで、やりくりしながら買いたいの!!」
「わざわざ、そんな事をする必要は、ないんじゃないかな?それに、同じお金なのだから、特に違いはないと思うよ?」
「違うの!!」
決められた金額で、一喜一憂しながら買いたいの!それに、バルドだって贈り物を買う時、お小遣いから出してた!僕だって、出来んだって所を見せたいの!
僕の説得と、母様と兄様の助力もあって、見事お小遣いを貰えるようになった。でも、父様は最後まで不思議そうな顔をしていた。
休みが明けて教室に行くと、バルドが楽しそうに何かを2人に話しているのが見えた。
「おはよう」
「おはよう!リュカ!」
「何だか今日は、何時もより元気だね?」
「分かるか!リュカのおかげで良い事があったんだ!!」
「良い事?」
「おぅ!一昨日、親父に酒を渡したら、子供が気を使うなって言ってたんだけど、今度、剣術の稽古付き合ってくれるって!それに、小遣いも増やしてくれるって言ってたし、良い事だらけだった!!贈り物はする物だな!!」
別に、そういう意味で言ったわけじゃなかったんだけどな…。
「選んだ酒も、悪くなかっただろ?」
「親父が、上手いって飲んでたぞ!」
「はぁ…。バルドは、本当にしょうがないですね…」
楽しそうに話している姿を、何処か呆れた目でコンラットは見ていた。
「今度、みんなの誕生日にも何か贈るな!リュカとネアは、誕生日は何時なんだ?」
「僕は冬産まれだから、まだ先だよ」
「俺は、秋だな」
「珍しいな?俺の親父とかも、春や夏しかいないのに?」
「そうですね。僕の家族にもいないですね」
「2人は何時なの?」
「コンラットは再来月で、俺は来月だな」
「アルノルド様と同じ月とか、普通に羨ましいです…」
羨ましそうに見るコンラットと、少し自慢げなバルドに、僕はどういう顔をすれば正解なのかな…。その後も、僕の家族の誕生日で盛り上がる2人を、僕は微妙な顔をしながら見ていた。
「父様!誕生日おめでとう!!」
「ありがとう。リュカ」
父様の誕生日は、家族や使用人達、みんなでお祝いをした。
僕は、父様に懐中時計を贈った。渡した時は、嬉しそうだったのに、商会での出来事を説明したら、父様は何故か複雑そうな顔をしていた。
父様の誕生日も無事に終わり、週明け、何時ものように、兄様と過ごしながらも、バルドの誕生日に何をあげるのか考えていた。
「リュカ。友人に聞いておいて欲しいと頼んだ件はどうなった?あれから、だいぶ時間もたったと思うのだが?」
「?」
僕は、兄様が何の事を言っているの分からず、首を傾げながら兄様を見つめる。
「手合わせの件だ」
「ああ!!」
あの日は、朝から揉め事があって、聞くのをすっかり忘れてしまっていた。そして、その後も忘れたままになっていた…。
「忘れてたのか…?」
「ご、ごめんなさい…」
「怒ってはいない。ただ、今週の週末なら、時間を取れそうだったから確認をしただけだ。友人に、その日の予定が空いているか、確認して貰ってもいいか?」
「分かった!!」
学院に行ったら、朝一番に確認しよう!僕が忘れないように、リタにも声を掛けて貰えるように、頼んでおかなければ!!
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