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悪逆_2
「ーー貴。兄貴!」
「おうっ!?」
少し自分の世界に浸りすぎていたせいか
鼻先まで顔を近づかれた事にも
気付けなかった。
「大丈夫っすか?
最近、なんか調子悪そうですけど」
まだ自分の半分も生きていない子どもに
心配される自分を男は情けなく思った。
「アレすか。燃え尽き症候群。
目標がなくなって、やる気が出なくなった
っていうストレス性の症状ですよね」
しかも概ね正しい指摘を受けて
さらにずんと肩が重くなった。
男は少年の額を軽く弾いた。
「あいて」
「一丁前に人の心配なんかすんな。
お前は自分が生き残る事だけ
考えてりゃ良いんだ」
「でも兄貴。漠然とただ生きてるんじゃ
そこらの草とおんなじですよ?
自分の意志でなりたいものになれることが
人間が動物より優れている点なんですって」
「お前はどこでそんな小難しい事を
覚えてくるんだ」
これ以上は話しても惨めになるだけだと
男は歩き始めた。
「もうすぐ夜だ。
早いとこ寝床を探すぞ」
「ああっ、待ってくださいよー」
少年の前を早足で歩きながら、
今指摘されたことを反芻する。
(なりたいものか。
それならモデルはあるんだがな)
男は悪魔のような高笑いを思い出した。
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