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……が、そう簡単にはいかないようだった。
『第九層に侵入者を発見。警戒レベルA。〈ギガス〉を起動します』
「な、なんだ!?」
空間に響く機械音声。志乃は辺りを見回した。
「し、志乃さん、あれ……」
「天ヶ崎、一体……は……?」
瑠璃の指し示した方を見て、志乃は言葉を失う。
広間の壁際、扉のすぐ近くに、巨大な柱が立っていた。
否、柱ではない。そう見えるほど巨大な……。
「〈ゴーレム〉……なのか……?」
二人で見ている前で、超巨大〈ゴーレム〉が起動していた。見上げるほどに大きな、10メートルはあろうかという巨体。〈ギガス〉という名の通り、その姿はさながら巨人のようだ。
〈ギガス〉はゆっくりと起動し、その柱のような足を持ち上げ、下ろした。あれだけ巨大な体をしているというのに、その挙動は不思議と重さを感じさせない。
「なんでこんなのがいるんだよ! 悠月は先に行ってたんじゃないのか!?」
「いえ……。あそこを見てください」
瑠璃が指し示したのは、〈ギガス〉の右腕だった。何故かあの部位だけが動きがぎこちない。
「一部が切断されています。おそらく……」
「悠月が……やったってのかよ」
あの綾音が、この巨大〈ゴーレム〉を一瞬でも無力化して、その隙に突破したというのか。
信じられなかった。自分の知る綾音は、もっと弱い。こんな化物を相手にできる力など持っていない。
ここに辿り着くまでの戦いが、それほどまでに彼女の力を高めたとでも言うのだろうか。
「志乃さん、来ます!」
「くそっ、だったら俺達も越えるしかねえだろ……!」
〈ギガス〉の挙動は巨体に見合わず俊敏だった。走ることは出来ないものの、素早く歩いて距離を詰めてくる。
歩きながら、左肩についているポッドを開く。そこから放たれたのは、十本近くのミサイル。
「嘘だろ、そんな武器持ってるのかよ!」
「志乃さん、わたしの陰に! 〈障壁展開〉!」
瑠璃の広げた防御魔法がミサイルを受け止める。
「くっ……」
爆風の衝撃がビリビリと伝わってくる。耐え切れなくなった障壁が砕け散った。
「うああ!」
「ぐあっ!」
二人とも吹き飛ばされる。立ち上がるのを待たず、〈ギガス〉が次のミサイルを装填した。
「させません!」
「天ヶ崎!?」
瑠璃はグンジョウを起こして前に出た。〈賢者の書〉のページが激しくめくられていく。
「わたしがなんとかしますから、志乃さんは隙をついて先へ行ってください」
「こんなヤツ一人で相手できるわけ無いだろ!?」
「バカにしないでください。わたしを誰だと思ってるんですか?」
「だからって……」
「話してる時間はありません。〈雷鎚招来〉!」
空中に出現した巨大な雷球が〈ギガス〉のミサイルポッドに直撃する。一瞬だけ機能が停止したようだ。
「今です!」
「天ヶ崎……。……くそっ!」
混乱する〈ギガス〉の隣をすり抜け、扉へ向かう。志乃の姿を見つけた〈ギガス〉は、兵器が使えないと判断したか拳を振り上げた。
「〈雷槍一閃〉!」
一筋の巨大な雷槍が拳を弾いた。隙を突いて志乃は扉を潜り抜ける。
「天ヶ崎……」
後ろ髪ひかれる思いで、志乃は頂上へ続く一直線の階段を駆け上がる。残っているのは小型の相手ばかりだったが、その全てがバカにならないほど強力だ。
「チッ、あとちょっとだってのに……!」
複数の〈ゴーレム〉が壁を為す。志乃が突破するのは困難だ。
「なら……」
志乃は右手を静かに見下ろす。それは今まで試しのない行いだった。
「"二回目"なんてやったことないが、やるしかない!」
高く刀を掲げて、力を込める。
「はぁぁあああああ……!」
そして、体中の全ての力を、その一点に集約、開放する。
「〈放て〉!」
刀身が炎のように揺らめく魔力を纏う。
「はあああああああああ!!」
〈バグ技〉の刀を振りかざし、〈ゴーレム〉の壁にねじ込んだ。
「邪魔を……するなぁあああああ!!」
全力で振りぬいた魔刃が〈ゴーレム〉を吹き飛ばし、道をこじ開ける。
「悠月……クッ……」
瞬間、体に力が入らなくなった。二度目の〈バグ技〉に体が悲鳴を上げている。
「こんなところで……ヘタってられるか!」
脱力する体にムチ打ち、刀を杖に立ち上がり、よろよろと残りの数段を登る。
そして、頂上へ繋がる階段を開いた。




