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ロールプレイン・ディス・ワールド  作者: たる。
第五章 絶望の先の光と
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 志乃は倉庫の中でうずくまっていた。

 ぼんやりと頬杖を突いて耳をすますと、遠くではまだ戦闘音が聞こえる。しかしここで隠れている以上は安全だろう。

「……いずれにせよ、丸腰の俺じゃ外に出てもどうしようもないな……」

 黙って安全な場所で膝を抱えて震えることしかできない、この無力さが歯がゆい。

 せめてあの〈バグ技〉が自由に使えれば。そう思ってみるものの、悔いた所で何が変わるわけでもなかった。所詮〈バグ〉は〈バグ〉。存在を予期されない、必要とされない、不安定な排斥されるべき存在に過ぎないのだろうか。

「だめだ、考えれば考えるほど嫌な方に行ってしまう……」

 頭を振ってネガティブな思考を振り払う。

「……実際〈バグ技〉無しじゃ無力だ。さっき使っちまったし、もう一発使うのは辛いか……。せめて武器らしい武器があれば違うかもしれんが、そう都合よく手に入るはずが……」

 立ち上がり、周囲を見回した。積み上げられたコンテナはいずれも空の物らしい。手頃な鈍器も見当たらない。

「……って、何か入ってたとしても盗みはいけないか。火事場泥棒は重罪って聞いたことある気がするし……いや、でもこの非常事態じゃ不可抗力……」

 ぶつぶつと呟きながら考えを巡らせるが、答えが出ようはずもない。

 そうしてうろうろと倉庫の中をさまよっていると、不意に奥の方からガタンという音が聞こえた。

「ん……? 誰かいるのか?」

 志乃は荷物の間を縫って音のした方へ向かってみる。どうやら作業途中のフォークリフトなどが放置されているらしいが、人影らしきものは見当たらなかった。

「なんだ、気のせいか……?」

 そのままきょろきょろと辺りを見回す。その時、またも背後で何か音が聞こえた。

「やっぱり何か……って!」

 志乃は振り向いた場所に「ある物」を見つけ、咄嗟に踵を返して逃げようとする。しかし、直後"背後から飛んできたコンテナ"に道を塞がれ、足を止めた。

「くそ、そりゃ居るよな、倉庫にも……」

 再度振り向く。そこに居たのは、貨物運搬作業用の大型〈ゴーレム〉だ。

 学園の物はもちろん、警備用の物と比べてもその大きさは突出している。単純なパワーだけで見れば警備〈ゴーレム〉や最大出力の訓練用〈ゴーレム〉とも比にならない。今まさに大きなコンテナをぶん投げてきたのがその証拠だ。

「何でもかんでも機械化ならぬ〈ゴーレム〉化するからこんなことに……。あんな馬鹿力、シャレにならないぞ……」

 〈ゴーレム〉は無限軌道の足でキリキリと旋回し、次のコンテナを持ち上げる。

「やばいっ……」

 志乃は顔を青くして逃げ出す。投擲されたコンテナが後ろにあったコンテナにぶつかり、耳障りな音を立ててひしゃげた。

「逃げ道……あった!」

 別の道を見つけ、塞がれる前に駆け込む。〈ゴーレム〉も後を追ってきたが、図体がでかくて通れないようだ。

「よし、チャンス……!」

 一気に駆け抜け、倉庫の外へ出る。

 ……しかし、逃げた先にも待っていたのは敵だった。

「……あーあ、見つかってるじゃねえか」

 倉庫の外に待ち伏せていたのは、複数の〈ゴーレム〉と〈魔者〉。志乃はジリジリと後ずさった。

 もう一度中に逃げるか。そう思った矢先、背後のコンテナが吹き飛ばされた。さっきの〈ゴーレム〉が力ずくでコンテナを吹き飛ばして出てきたのだ。

「冗談だろ……詰んでるじゃねえか……」

 完全に囲まれた。逃げ場はない。

「武器も無いのに逃げられるかっての……。はは、こういう時は逃亡用アイテムの有り難みが分かるな……」

 ゲームの中なら迷わずアイテムを使用して逃げるところだが、これはゲームではない。たとえプレイヤーが丸腰の村人Aであろうと、相手がボス級モンスターの群れであろうと、容赦なく戦いは始まってしまう。

「全滅必至の負けイベントかよ……しかも負けたらそのままゲームオーバーなんだろうな……」

 絶望を通り越して笑いが漏れてくる。助かる道が見えない。

「は、はは……」

 わかっている。ゲームオーバーなんていう、"やり直しの効く"終わりではない。

 待っているのは、「死」だ。

 ゲームの中なら何度迎えても終わりなど来ないはずの、しかし現実ではただの一度で全ての未来を閉ざしてしまう、その事象。

「嘘だ……」

 その現実が受け入れられず、志乃は無意識につぶやいていた。

 そのつぶやきをあざ笑うかのように、志乃を取り囲んでいた〈魔者〉と〈ゴーレム〉が襲い掛かってくる。志乃は思わず目をつむった。

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