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ロールプレイン・ディス・ワールド  作者: たる。
第四章 未来へ至る希望と
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「悠月! この……ふざけんな!」

 志乃は一層大きくバットを振りかざし、そして……。

「〈放て〉!」

 〈バグ技〉を発動し、殴りかかる。魔力を纏ったバットは〈魔者〉の魔力障壁をすり抜けた。

「――?」

 〈魔者〉はその時初めて志乃に注意を向けた。綾音の剣を押し返し、その手で志乃のバットを掴む。

「……あ…………?」

 その拍子に、綾音の束縛が溶ける。混乱した様子でふらふらと後ずさり、剣をだらりと下ろした。

「悠月、今だ!」

「え……?」

「逃げろ! お前だけでもいい!」

「逃げる……? ……だめよ、あたしは……勇者だから……そんな……」

「そんなこと言ってる場合か! 早く……ぐあっ!?」

 〈魔者〉はバットごと志乃の体を振り上げ、無造作に放り投げた。

「このっ……!」

 なんとか受け身を取って着地し、未だ〈魔者〉を呆然と見上げている綾音に向かって叫ぶ。

「悠月、聞け!」

「駄目……だって、このままじゃ……あたしが、なんとかしなくちゃ……」

「チッ……!」

 志乃は再び〈魔者〉の居る方へ駆けて行き、まだわずかに力をまとわせたままのバットを振りかざした。

「う……おおおお……!」

 不意を突いた一撃は、〈魔者〉の肩を殴打する。

「くっ……」

 鉄の塊でも殴りつけたような衝撃に手がしびれ、バットが飛んでいってしまった。〈魔者〉が煩わしげに腕を振るう。

 志乃は紙一重でそれをくぐり抜け、綾音の手を掴んだ。

「あ……」

「行くぞ悠月!」

 茫然自失の綾音を掴みそのまま駆け出す。すると、向かう先から何かが向かってくるのが見えた。

「あれは……〈警備ゴーレム〉か!」

 それは町を巡回する数体の〈警備ゴーレム〉。異常を察知して向かってきたのだろう。志乃の隣をすれ違って〈魔者〉へ向かっていった。

 その装備は学園の訓練用のものなどとは比にならず、力はレベルにして70以上。彼らに任せておけばひとまずは安心だろうと、志乃は安堵した。

 ところがその時、志乃はほんの数週間前の出来事を思い出す。

「〈ゴーレム〉って……まさか、あいつ!」

 思い出して足を止めるが、志乃に何かができるはずも無かった。

 〈魔者〉の金色の目が妖しく光を放つ。その瞬間、全ての〈ゴーレム〉が動きを止めた。志乃はその光景を見て青ざめる。

 動きを止めた〈ゴーレム〉は、一斉に志乃たちの方へと振り向いた。……その目を赤く染めて。

「暴走……いや、それどころじゃない。今あの〈ゴーレム〉たちは、あいつが制御してるのか……?」

 志乃の言葉を肯定するように、〈魔者〉が手をかざすとそれにしたがって一斉に〈ゴーレム〉が動き始めた。

 不意に、いつかの瑠璃の言葉がよみがえる。自分が戦ったあの一体が、唯一支配に成功したのだと彼女は言った。……そんなはずない。あえて、わざとあの一体だけを動かしていただけだ。

 今あの〈魔者〉は、全ての〈ゴーレム〉を一瞬で支配した。彼には、〈ゴーレム〉の制御を奪うことなど容易いのだ。

「くそっ……!」

 志乃は踵を返して逃げ出す。とにかく〈ゴーレム〉たちが追いつけないところまで、一心不乱に足を動かして。

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