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ロールプレイン・ディス・ワールド  作者: たる。
第四章 未来へ至る希望と
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「こ、こら、待ちなさいっての、この! 返しなさい! 返しなさいよー!」

「わかったって。ほれ」

 校門を出た所で綾音に鞄を返す。綾音はむすっとした表情でそれを受け取った。

「まったく……。やっぱりあんたは邪悪な心の持ち主ね。『ロストマギナ』に毒されてるんだわ」

「まああっちじゃ勇者が敵で魔王が味方だもんな」

「この、やっぱり魔王なのね! 成敗してやるわ!」

「やめとけって。ほれ」

「きゃぅっ」

 擦り傷の一つをつついてみると、綾音はビクンと体を跳ねさせた。

「あ、あんたねえ! 自分で無駄に治療しておきながら傷を刺激するなんて、どういうつもりよ!」

「ダメージ受けてるってことは無駄じゃないってことだろ。ほれほれ」

「あ、やぁっ、は、うぅ、も、やめてぇ!」

 あちこちつついてやると涙目で悲鳴を上げられた。なんだか面白くなってきたが、これ以上やると別の意味で危ない気がしてきたので手を止めておく。

「はあ……はあ……。や、やっぱり悪の手先……」

 真っ赤になって自分の体をかばいながらじとっと睨んできた。やっぱりやりすぎたかもしれないと、今更な反省をする。

「……まあ、焦る気持ちもわからないでもないが、無理もほどほどになってことだ」

「意味分かんないわよ」

「まあ滅茶苦茶やって、次に〈魔者〉が出てきた時に怪我で動けないんじゃどうしようもないからな。肝心な時にお前が戦えなくちゃしょうがないだろ、勇者さん」

「あ……。……な、何よ、急に物分かり良くなっちゃって」

「なんとなくだ」

「ふん、最初からそのくらい素直にあたしの言うことを聞いてればいいのよ」

 いつもと違う志乃の態度に調子が狂っているのか、綾音は少し恥ずかしそうに目を逸らしてしまう。いつも破天荒で向こう見ずで痛々しい言動をとっているが、こんな表情は普通の女の子らしいなとほくそ笑む。

「何よ、急に笑って」

「いや、別に」

「……意味分かんない」

 一度志乃に向けた目をまたそっぽへ向けてしまう。志乃がその視線を追うと、その先には遠目に建設途中のビル群が見えた。この間〈コボルト〉と戦った場所だ。

「……時間が経てば経つほど現実味がなくなってくるな」

「何よ、自分で美味しいところ持ってったくせに」

「けど信じられないだろ。〈魔者〉と戦っただなんて。あれから結局何も起きないし」

「……まあ、わからないでもないわ」

 綾音は道の端のガードレールに手をつき、身を乗り出して開発区を見る。翠晶学園の敷地は高台になっているため、遠くまで一望できるのだ。

「実は夢だったんじゃないかとか、どっかの〈魔術師〉あたりが適当に作った偽物なんじゃないかとか……ふと考えることがあるわ」

「へえ、お前もか。意外だな」

「現実であって欲しいけどね。でなかったら"次"もありえなくなっちゃうじゃない」

「その方が世界平和的にはいいと思うんだが……」

「勇者は悪を倒した上で世界平和をもたらすから勇者なのよ」

 よくわからない理屈だった。

「〈魔者〉、か。次があるとしたら、今度は何が相手なんだろうな」

「そうね、〈ガーゴイル〉とか〈ワイトキング〉とか?」

 ガードレールに腰掛けて、「エルネリシア」の〈魔者〉の名前を上げる。

「動く彫刻ならまだしも、リアルゾンビはちょっと見たくないな……」

「じゃあ〈デモンズドラゴン〉」

「それ終盤の大ボスクラスじゃねえか……」

「いいじゃない。やっぱりドラゴンとの戦いは欠かせないわ。あー、話してたら戦ってみたくなってきたわ!」

 目を輝かせて勢い良く立ち上がる。そして、志乃の手を取った。

「……え? お、おい……」

「探しに行くわよ! 大丈夫、あたしも強くなってるし、いざという時はあんたがいるわ!」

「探しにってどこに……って、こら、引っ張るなって!」

 そのまま、志乃は綾音に引っ張られていく。そうしてさっきとは逆転した構図で、あてもない魔者探しに駆り出されることになるのだった。

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