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ロールプレイン・ディス・ワールド  作者: たる。
第二章 勇者パーティーと仲間たち
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「……ふん。まあこのゴミの山を捨てるのはあいつがいる時でいいわ」

 積み上げられた机の上に座った綾音がぶつぶつと呟く。

「あはは、でもやっぱり大変そうだなぁ……」

 板が割れて脚も歪んでいる椅子で千歳が苦笑した。不要物の積まれたこの部屋も、ある程度換気をすれば最低限の居場所くらいにはなるらしい。

「……そんで、そろそろ聞かせてもらおうか」

 志乃は壁(触れたら手が真っ黒になったので拭いた)に背を預けて綾音を見上げる。こうして見ると随分な高さだ。

「……いや、その前に悠月。お前、そのポジションでいいのか?」

「何よ。勇者としてふさわしい場所でしょ?」

「いや、気にしないならいいんだけどな。……見えてるぞ、黒」

「な……!」

 気付いたのか、綾音は慌ててスカートを押さえる。

「な、ど、どこ見てんのよ!」

「いや、そんな所に座ってるお前が悪いだろ」

「だからって見るなぁ!」

 顔を真っ赤にしていた。どうやら千歳のように無警戒ではないらしい。むしろこの程度の恥じらいと自意識は今も横で首を傾げている従姉に身に着けてほしいと、志乃は思った。

「……こほん。で、聞くって何よ」

 まだほんのりと頬を赤らめている綾音が咳払いをして本題に戻す。

「ああ、この部の目的だよ。勇者になるって言うが、具体的には何をする気だよ」

「あ、それ私も聞きたいな。勇者ってことは人助けだよね。ボランティアとか?」

「……奉仕活動はもうゴメンなんだが」

 その単語にいい思い出のない志乃は聞くだけでうんざりしてしまう。しかし綾音は肩をすくめて首を振った。

「違うわよ。まあそれも必要なことだけどね」

「へえ?」

 綾音のことだから面倒臭がって全否定するかと思っていただけに、志乃は少しだけ驚く。どうやら言動が破天荒な反面、とりあえず勇者の基本理念には従っているようだ。

 では、その上で綾音がそれ以上に優先することとは何なのか。志乃が目で促すと、綾音は待ってましたとばかりに胸を張った。

「あたしたち〈勇者研究部〉の活動における最優先目標。それは……」

「「それは……?」」

 綾音は、わざわざ一度言葉を切り、思い切り溜めてから力いっぱい宣言した。

「〈アルターストーン〉のあるこの島で、〈魔者〉を討伐して平和を守ることよ!」

 狭い部屋に反響する声。そして静寂。

「……はあ?」

 ……志乃は目を点にした。千歳も曖昧に苦笑している。

「何よ。なにか不満なわけ?」

「いや、不満って言うかな……」

 志乃はこの世界における一般常識を改めて思い返す。

「……この世界に魔者なんて……いない……よな?」

「う、うん。私は聞いたことないかな、あはは……」

 綾音があまりにも自信満々に言い放つのでつい不安になって確認してしまう。どうやら自分の信じてきた常識は間違っていなかったようだとひとまず安堵した。

 〈アルターフェーズ〉に入り、確かに世界はRPGのようなものへと変じた。しかし実際にはただ人間が剣士や魔法使いになったに過ぎず、「魔者」など現れていない。

「……で、さすがのお前もそんなことも知らない訳じゃないだろ」

「もちろんよ。けど、あたしは信じて探し続けていたわ。この世界にも〈魔者〉はいるはずだって」

「倒すべき相手を自分から探すんだね……」

「早速手段と目的が入れ替わってるな」

「結論から言うわ。この島にも〈魔者〉はいる! あたしはこの目で見た!」

「やっぱりスルーか……って、え?」

 今彼女は何と言っただろうかと聞き返す。

「だから、〈魔者〉はいるの! あたしは戦ったわ! 逃げられちゃったけど、でも〈魔者〉がいるのは間違いない!」

 そう言って綾音はその体験談を語る。曰く、見つけたのは昨日の夜。まだ開発途中の区域で、相手は獣のような姿をした〈魔者〉だったと……。

「どう? 信じてもらえた?」

「……野良犬でも追っかけてたんじゃないのか?」

「犬が二足歩行して走るわけ無いでしょ!」

「じゃあ野良猿」

「猿って大きさじゃなかったしそもそもこの島に野生の猿なんていないわよ!」

「あ、じゃあ野良ゴリラさんじゃないかな~?」

「もっといないわよ!」

 さっきと同様綾音は自信にあふれていたが、志乃も千歳も信じられなかった。確かに、十年前にこれだけ突拍子もない変化が何の前触れもなく起きたのだから、「魔者」くらい現れてもおかしくないかもしれない。しかしこの島に「魔者」のようなものが現れたら大問題だし、もしもいるのだとしたら他に誰かが見つけているはずだ。

「でも見たのよ」

 頑なに言い張り続ける綾音。……先に折れるのは志乃の方だった。

「……わかったよ。信じる」

「え、しーくん?」

「悠月が見たってんだから、まあ見たんだろ。まだ生きてるかどうかは別にして」

 仕方なく同調する。……こうなったら何を言っても聞かないのが綾音だということは、この短い間にわかっていた。

「ふふん。わかってくれたようね。じゃあ早速探しに……と言いたいところだけど、今日はもう遅いわね」

 携帯を開きながらそう言う。確かに、もう五時を過ぎている。今から行くには綾音の言う開発地区は遠かった。

「明日から本格的な捜索を開始するわ。……じゃ、今日は解散ね」

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