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「あーあ、なんでオレがこんなめんどくさいことを……」
「こっちは条件を揃えてるのよ。教師側に拒否権はないわ」
竹村が心底嫌そうに綾音たちを先導する。顧問に関して綾音が何も言わなかったのは疑問だったが、どうやらすでに話をつけていたらしい。竹村もまさか本当に部員を揃えてやってくるとは思わなかったのだろう。
「はいよ、んじゃここが部室な」
竹村が第三多目的室の前で立ち止まる。
「ふふん。じゃあ今度こそあたしの部室として改造を始めるわよ!」
意気揚々と足を踏み入れる綾音。しかし、
「おーい悠月ー。そっちじゃないぞー」
「は?」
「こっちだこっち」
竹村が指さしていたのは、第三多目的室の隣にある部屋だった。
「こっちって……」
綾音がプレートを見上げる。
「第三多目的……準備室?」
「あー、部室棟は満室で、他にちっとも使う予定もない部屋って言ったらここくらいでな。まあ中々に……あー、その、味のある部屋だぞ」
鍵を開け、引き戸を開け放つ。志乃たちが横から覗きこんだ。
「お、おう……」
思わず息を呑む志乃。その後ろから綾音が割って入ってきた。
「な……!」
目を剥いて声を上げる。
「な、な……何よここー!」
綾音が指さした第三多目的準備室。そこは、教室の三分の一もない広さの空間で、壊れた机や使われなくなった教材などが山積みにされていた。しかも本当に全く使われていないのか埃っぽく、長い間換気もされていないような古臭い臭いがする。
「中にある物は、ジャマだったら第四準備室にどかしといてくれ」
「はあ!? そ、それって校舎の反対側……」
「じゃあな。後は好きにやれ。できるだけオレを呼ぶなよー」
「ち、ちょっと竹村ー!」
竹村は綾音に鍵を押し付け、ふらふらと職員室へ戻っていってしまった。
「…………」
今一度部室の中を見て、呆然とする綾音。声も出ないようだった。
「はうう、埃っぽい……ちゃんと掃除しないと」
「いいんじゃないですか? こんないい加減な部に部室があてがわれるだけ上等です。どうせわたしには関係ないですけど。……それではわたしはこれで」
「まあ、急ごしらえの部だ。こんなもんだろうよ」
綾音の肩を叩く。よっぽど屈辱的なのか、わなわなと肩を震わせて涙目で唇を噛み締めていた。
「……下克上よ」
「は?」
不意に何かを呟く。聞き返すと、綾音はキッと顔を上げて叫んだ。
「下克上よ! いつかそこいらの生意気な部を叩きのめして部室奪ってそいつらをこの汚い部屋にぶち込んでやるわ!」
「お前それ勇者の発言じゃないよな」
「ふん、どうせあたしはまだ勇者じゃないわよ! けど勇者になった暁にはまず最初にここの十倍は広い部室を手に入れるんだから!」
もはや自棄だった。よっぽど屈辱的だったらしい。
「そ、それで綾音ちゃん。この部屋、どうするのかな。このままじゃ座る場所も……」
「全部どかすに決まってんでしょ! 今すぐに!」
「第四準備室までか?」
「瑠璃! あんたの魔法ならこのくらい楽勝でしょ! さっさと……って、あいつどこ行ったのよ!」
「天ヶ崎なら今帰ったぞ」
「うがああああああ!!」
「あ、綾音ちゃん、女の子がそんな声出しちゃだめだよ~!」




