表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンデヴァー・プロジェクト  作者: 国見 紀行
第二章 現実の侵食
PR
7/50

第7話 本土からの来訪者

 本土から人の出入りが制限されて数日後。

 朝から港の方が妙に煩かったので、学校へ行く前に少し覗いてみた。


「あ、巡里くん」

「天間さん、おはよう。……なにがあったの?」

「なんかね、お偉いさんが来るんだって。お父さんが言ってた」


 俺は水平線の向こう側を少し離れたところから見てみた。いつもと変わらない水平線は、特に何かを運んできている様子はない。


「お偉いさん、ねぇ」

「あ、そう言えば聞いた? 学校」

「へ? 何が?」

「少しの間、授業は自宅参加するようにって」


 これについては、俺はあまり驚かなかった。

 校庭には、例のHDC-025(ゲームエネミー)との戦闘跡がしっかりと残っており、現場の保管も兼ねて発見された当日に緊急休校。他の地域の生徒は普通に授業を受けていたが、広範囲の爆破後でサッカーをする他地域の仮想体(せいとたち)を見ていると、やはり俺たちが住む島にだけ起こったことなのだと思い知る。


「だろうね。原因不明の爆発痕があったんじゃあ、安全性も考えると妥当だと思う」

「……」

「な、なに?」


 天間さんはにこにこ俺を見るだけで、特に声をかけてこない。


「と、とりあえずARMつけてないし、家に戻るよ」

「うん。またね」


 そういって戻ろうとすると、不意に港がざわついた。海の遠くに視線を送ると、小さな点が徐々に大きくなるのが見えた。


「なんか、小さいな」

「いつもの船じゃないみたいよ。でも、本土からあんな小さな船で行き来できたかしら……」


 舟釣りをする小型のモーターボートと見間違えるほどの小ささで、しかし速度は異様に早い。あのままだと船首がひっくりかえ……


「うわ、危ない!!」


 ぎゅるん! と船は一回転する。もう少しでこちらに接舷できたのに速度を落とさないから海面に弾かれたようだ。


「……え!? なんだあれ!」


 本来ならひっくり返った船ごと乗員が沈むはず。しかしそうはならず、船は再び正しい向きで海面に着地し、乗員は海面に着地した(・・・・・・・)のだ。

 そして、何事もなかったかのように再びモーターを稼働してこちらまでやってきた。


「え、何が起こった?? どういうこと?」

「不思議ね」


 あっけにとられている俺を横に、天間さんはさも当然と言わんばかりに言い切った。


 小型のボートから降りてきたのはどう見ても科学技術者か医者っぽい白衣のおっさんだが、頭には旧式のARMをセットしていた。まだ網膜接続が実装される前の、大きな水中眼鏡のようなマウントディスプレイを搭載したモデルだ。重くて価格も高いので早々に市場から消えたのも記憶に新しい。


「うわ、なんかすごい人が来たって感じね」

「なるべく関わりたくない格好してる」

「そうかしら? 私はちょっと面白そうかも」


 ……天間さんって、そういう趣味がある人だったんだ。





『ああ、巡里くん。授業が終わったら学校まで来てくれるかい?』


 自室でリモート授業を受けていた俺に、先生から一報が入る。


「え、いいんですか?」

『うん、そっちの校舎内で問題があったとは聞いてるけど、上から君の話が聞きたいと連絡があってね』


 背筋がゾワッとする。

 例の襲撃で俺が関わったということは知られている(・・・・・・)

 そりゃARMつけた状態で学校の校庭に入ろうものなら、バレないはずがないのだ。

 あるいは、ステラの事かもしれない。

 あれから、誰からも彼女の事を追求する話題が出てないのが静かすぎて怖いくらいなのだ。


『あっ、くわしい状況は聞いてるよ。君の周りで起こっている事象について一通りの確認と…… 必要ならお願いがあるって話らしい』

「お願い……?」

『詳しくは先生も聞いてないんだ。けっこう大事な話らしい』

「はーい」


 先生の仮想体(アバター)がかき消える。

 俺はズボラな恰好から制服に着替えて出かける準備をすると、傍で座っていたステラが声をかけてきた。


「『ミソラ、お出かけ?』」

「うん。ちょっと学校まで」

「『が、こう?』」

「集団で勉強する所。夕飯遅くなりそうだったら先に食べていいよ」


 自動料理提供機(オートクッカー)は昨日から2人分の食事を作るよう設定してある。彼女は割と好き嫌いがなく、俺たちと同じものを食べられるらしい。ちょっとした文化の違いも学んでもらったのはいいが、これからのことを考えると犬猫と違うだけに頭が痛い。


「んじゃ、いってきまーす」


 あまいやで買っておいた駄菓子で小腹を満たしつつ学校へ向かう。

 ふいに視界の隅にあるPM(プログラムモジュール)に視線を落とす。今は激しい動きをするようなプリセットをつけてない。もし何かの拍子に起動して目立ってしまうようなことがあればと思うと、とても使う気にならないからだ。


 一歩、一歩が重く感じる。それでも学校にはそんなに時間はかからない。


『お、来たね』


 先生の仮想体(アバター)は校門をくぐると同時に出現し、とある教室まで案内するとあっけなく消え去った。

 扉のプレートには「指導室」とだけ書かれており、普段使われてない廊下は、そもそも生徒がいない静けさで空気が凍っているかのようにひんやりしていた。


「……巡里です」

『開いてるよ、入りなさい』


 ガラガラ、と扉を開けて中に入る。

 部屋の中は狭く、自分の部屋にちょっと毛が生えた程度の広さしかない。

 そんな指導室にはただ机と椅子のセットが二つ。その内の一つには、今朝港で見たマウンドディスプレイをつけて水上を歩いてたおっさんが、その時の格好のまま座っていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

↓にある☆☆☆☆☆で評価、感想、いいねなどで応援いただけると励みになります。

ぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ