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エンデヴァー・プロジェクト  作者: 国見 紀行
第一章 島の住人たち
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第5話 試練、来たる

「ランジュ、この子の詳細なんとか分からへんか?」

『個体識別ができません』


 八雲ねーちゃんは自分のARMにステラの情報を探らせる。スマホのカメラから転送された映像解析からは、しかし空虚な答えだけが帰ってきた。


『画像認識からは人類の特徴を多く持つ傍ら、そのどれにも該当しません』

「せやんなぁ。コスプレにも見えへんし」


 ステラは服を着せられ、ぶかぶかの胸部とぴっちりの腰回りに居心地悪そうにしつつも、くっつきながらペタペタ触る八雲ねーちゃんにニコニコしている。

 身長はそう変わらないのか??


「なんやろな? 人造人間か、宇宙人か、あるいは…… ARMの故障?」

「それはないって。俺もねーちゃんもこうして触ってるじゃん」

「そうなんよな」

「ぽぽわ、しゃ…… <ジジ>『ですか?』」


 一瞬彼女の声にノイズが走り、語尾が聞き覚えのある言語になった。


『ステラの発声に翻訳言語を乗算します』

「えっ? 今のミストルの仕業!? ……まあいいや。ステラ、もう一回言って!」

「『え、えっと、……ここはどこですか?』」


 すごい、ちゃんとわかる。


「ここは俺の家。君は俺たちの言葉が分かるの?」

「『はい? あなたはわたしの言葉を話してます』」

「……ミストル? もしかして俺の言葉も彼女の言語に変換してる?」

『はい。通訳しています』

「ランジュ、ミストルの言語機能をコピれへんか?」

『言語・翻訳ライブラリの同期を行います』


 ARMはスマホに次ぐ物理モジュールの発明と言われた理由を俺は目の当たりにしてるのかもしれない。俺の声を翻訳変換って、どうやってるんだよ……


「まあいいや。君はどうしてあの場所に?」

「『わたし、作られました』」

「「作られた??」」


 俺とねーちゃんは顔を見合わせる。いきなり人造人間説が濃厚になったが、続けて彼女は言い放った。


「『わたし、かえるのです。もとのいえに』」

「いえって、どこ? やっぱり研究所とか?」

「『えある』」

「?? エアルっちゅう地方どっかにあったか? ……どこやねん。やっぱ宇宙人か?」


 お互いに顔を見合わせる三人。



『BATTLE-ARMが更新されました。追加ステージ【舟継島】を実装します』



「ランジュ!?」

「ミストル??」


 唐突にARMから不穏なメッセージを伝えられる。


『クエストミッション・防衛戦を開始します』

「はぁあ!? ランジュ、何を言うとんねん!」


 視界にARMが割り込み、ブリーフィングウインドウが開く。それはまさに俺がいつも遊んでいるオンラインゲーム「BATTLE-ARM」の出撃前の設定画面だ。メイン武器とサブ武器のスライダーが、いつも使っているニンジャブレードとスモークグレネードにセットされている。


「これ、いつものゲーム画面と一緒……」

「みそっちもかいな? ウチもや。PM(プログラムモジュール)もプリセットごと表示されとる。もしかして使えるんか?」


 つい癖で「出撃」ボタンをタップすると、ゲーム画面と同じ装備が俺の体にセットされた。


「え、え、え? え!?」

「……ほおおー!、ランジュ、これは何や?」

『ターゲットは高密度情報集合体「HDC-025」です。速やかに対処してください』

『って、まんまゲームの流れやないか!』


 ARMが、まるでゲームのオペレーターになったかのようなアナウンスを行う。ねーちゃんはそれに文句を言いながらも、めちゃくちゃ笑顔になっている。


「これ、どうなってるの?」

「ゲーム通りやっちゅう話なら、今ごろ外で……」


 八雲ねーちゃんは立ち上がって外へ向かう。俺もステラに「待ってて」と声をかけてからねーちゃんを追いかけると、玄関であさっての方向を見上げるねーちゃんに追いついた。


「なんや…… あれ」


 同じように空を見上げると、ちょうど学校のあるあたりの空に、赤か紫かわからない光の渦が浮かび上がっているところだった。


「ええっと…… こうかいな?」


 ねーちゃんがそう呟くと、彼女の足元から光の帯が螺旋状に立ち昇った。公式PM(プログラムモジュール)「フィジカルブースト」を起動したようだ。


「うっわ、体がめっちゃ軽くなったわ。ちょい見てくる!」

「ちょっ、八雲ねーちゃん!!」


 ものすごい土煙を上げながら、実機さながらの装備をした八雲ねーちゃんが学校へ向けて駆け出していった。


「待てよ、もしかして俺も起動できたりする……??」


 俺は視界の端に表示されたPMの一つ「ハイジャンプ」をオンにする。


「せーの…… ほいっ!」


 足に力を込めるた力を解放すと、一気に体が家屋の二階部分を大きく飛び越える。


「うわ? うわ! っぶねぇ」


 着地に一瞬戸惑ったが、たまたま足元が屋根上だったこともあって安全に着地した。

 一気に広がる視界の先、学校のほうへ目を向けると、妙な気配が校庭の上空から漂ってきていた。


 BATTLE-ARMのクエストモード戦う「HDC-025」…… 多脚型侵略兵器のフレームワークが空を切り、まさに出現するところを俺は目撃した。

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