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エンデヴァー・プロジェクト  作者: 国見 紀行
第九章 エアル・ヴェノスを守るモノ
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第45話 塵の盾

「ミステラ、PMを一つ作ってくれないか?」

『え、今ここで?』

「簡単なものだよ。なんなら相手にコピーされるの前提でさ」


 俺は詳細を口に出さず、網膜のメッセージアプリを介してミステラにコマンドを送る。


『それくらいならできるけど、その間私のサポートもないよ?』

「大丈夫、逃げるのは慣れてるよ!」

『分かった!』


 ふい、と視界が広がる。画像の変換処理を行わなくなった分表示領域が広がったのだ。


「まずは……」


 ニンジャソードを持つ手をいじって刃を自分に向ける。刀の背を相手に向けて防御を硬くするのだ。

 相変わらず黒い俺は殺意のない、しかし殺す気しかない攻撃を急所狙って放ってくる。だが逆にそれが軌道を読ませ、致命傷には至らない。

 効率的だが、人間同士なら非効率だ。

 まして一対一のタイマンでその戦法はむしろ逆効果だと改めて思う。


「そら、こっちだ!」


 PMで強化された移動速度で相手と距離を取る。もちろん相手も近距離攻撃しか持ち合わせがない以上近づくしかないので距離を詰める。俺はそれをランダムに方向を変えて逃げ続け、相手はそのルートを追いかけながら距離を詰める。


「どうした? 逃げ続けるだけでは外の連中が先に死ぬぞ」

「心配どうも!」


 八雲ねーちゃんたちが負けることなんかない。そう思いつつもウォーロックを倒せなかった自分の頭の中ではかなり心配になる。


『できた! セットするよ!』

「サンキュ!」


 急ごしらえで作ってもらったのは、ちょっとした拡張プログラムだ。

 名付けて『エアブロアー』モジュール。


『でも、ただニンジャソードから空気が出るだけだよ?』

「その空気に《《アレ》》も出るようにしてくれただろ?」

『う、うん』


 ならそれでいい。


「ゼラレイド、残念だったな!」

「どうした? 頭でもおかしくなったか?」

「ふふ。ようやく、地球を出てから開発していた、対HDC最終兵器PMがたった今届いた!」

「……何ぃ?」


 黒い俺の動きがピタッと止まる。コントロールはまだ向こうにあるのか。


「俺の剣からすべての存在情報をただの塵に変えるデバイスをセットした」

「……下らん。そんなものこちらでもできる」


 ゼラレイドは空に手をかざし、目を瞑って何かを念じる。すると黒い俺が一瞬光り、構えていた刀に僅かな変化が見られた。


「わざわざ仕様変更内容を伝えるとは馬鹿な地球人よ。せいぜい《《同じ技術》》をもって滅びるがいい!」


 黒い俺は、再び俺に攻撃を仕掛ける。

 多分うまくいく。

 なぜならゼラレイドが俺の言葉を真に受けるまでが想定通りだからだ。


『来るよ、みそら!』

「ああ、頼むぜ!」


 それは俺でもなく、ミステラでもなく、黒い俺に放った言葉。

 相手は空中で縦回転をしながら俺に突進する。遠心力でほどよく加速度の付いた刀は、ゼラレイドによって『存在情報を塵にするプログラム』を付与された最強の武器だ。


「いけ、俺の最強の剣んんんんんんんんん!!!!」


 ぶわ、と風が舞う。

 その風には《《塵》》というプロパティ(設定)がセットされている。

 

 その塵、なんと情報サイズが10ペタバイト。


 バカみたいな小さい塵は、本来ならただ舞い散って終わる。

 けれど、今の黒い俺が持つニンジャソードには、《《あらゆる存在情報を塵に変える変換を強制的に行う設定》》が付与されている。


「この『発想』は、エアル・ヴェノスの人間にはできないだろおおおおおお!!!」


 舞い上がる塵。いや、埃と言ってもいいかもしれない。

 黒い俺が振り下ろすニンジャソードの勢いが止まる。湧き上がる塵の情報分解に剣速が追い付かないのだ。


「な、何が起こってる?」

『え、え、え?? どうして??』


 黒い俺が一歩下がる。自分の刀が切ったものの正体が理解できず、次の動きを決めあぐねてるようだ。


「おいおい、こっちの分解もしてくれよ!!」


 畳みかけるように「エアブロアー」を付加したまま切り付ける。相手もそのまま刀で受けてしまい、再び相手は塵まみれになる。俺はこっそり「エアキープ」で吸い込まないようにちゃっかり防御済みだが、相手はどうだろう?


「うっ、ぐ、ご、がはっ!!」

「へえ。やっぱり息するんだ」


 ご丁寧にサーバルームということもあって空調が存在するのか、舞い上がった埃は部屋のどこかへと消えていく。しかし、大半の埃はまだまだ空気中に霧散したままだ。


「これは…… どういうことだ!?」


 ゼラレイドは慌てて空気中の塵を吹き飛ばす。黒い俺も刀を振り回すが、それは逆効果になってますます塵が舞う。


「お前のHDCが分解した《《残りカス》》じゃないのか?」


 しかし、舞い散った情報のゴミは一向に減らない。

 そして、部屋の塵が一定の量で満たされた瞬間。


ブランダ>『みそっち! 外のHDCの様子がおかしいんや! なにかあったんか?』


 八雲ねーちゃんから予想外のメッセージが入った。

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