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エンデヴァー・プロジェクト  作者: 国見 紀行
第九章 エアル・ヴェノスを守るモノ
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第42話 大事な人のために

 ウォーロックは他に目をくれない。

 元から俺を優先ターゲットにしていたのかは定かじゃない。しかし、明らかに味方から外れた位置にいる俺に向かってきたのを見て確信した。


『みそら、来る!』

「まだだ! もう少し!」


 速度は何とか視認できる。それは、アイツが物理法則に則って移動している証拠。

 なら、俺の作戦(・・)はうまくいくはずだ。


「今だ!」

『起動、「エアキープ」!!』


 ふわり、と空気の層が辺りに生まれる。もちろんその中にはウォーロックも入ってる。つまり《《俺の活動可能範囲に敵がいる状態を作り出せた》》ということだ。


「!!?」

「いただき!」


 俺はニンジャソードを引き抜くと、無防備なウォーロックに一閃を浴びせた。ゲームにはない、何かを裂く感覚が手に伝わる。……あまり気持ちのいいものではない。


『は!? なんで動けるんや!??』

『巡里くん??』

「っとっと!! やっぱ力が入りすぎるか?」


 刀の軌跡はウォーロックを見事に捉え、紫色の血液が宙に舞う。俺はというと、刀の重さ腕力の食い違いで体があらぬ方向にふっ飛ばされる。何とか態勢を整えて相手に向き直ると、当の相手も自分が出血したのを初めて見たのか、戸惑いで動きが止まっている。


『チャンス!』


 最初に動いたのはジョーさんだった。

 斧の重さを利用して、ぶん回しから器用にウォーロックとの距離を詰める。あの挙動を見ると、俺に倣ってフリーグラビティを切っているようで妙に慣性移動が強い。


フリグラ(フリーグラビティ)が無くたって、これくらいできるっ!』


 空中制御をこなし、渾身の一撃を解き放つ。ウォーロックは自分が管理できない(エアキープ)空間にすぐ対処できず、長い尾のほとんどを切り離されてしまった。


『さすがはジョーさんですわ!』

『ナイスぅ!』


 しかし相手は冷静に追撃を逃れ、再び定位置に戻ってしまった。

 先程のような攻撃に転じることもせず、じっとこちらを見たまま動かない。


『……籠城作戦に出るとは、なかなか切れるじゃあないか』

『そんなこと言ってる場合ではありませんわ。早々にサーバルームへ行かなければいけないのに』


 だが、あの鉄壁の空間防御は三次元空間(こちらがわ)からは手も足も出ない。

 こうなったら強硬手段しかない。


「俺が囮になるんで、みんなで隙ができ次第あいつに攻撃を」

『アホか』

『バカですわ』

『何考えてんだ』

「みんなして言わなくても!」


 天間さんはフリーグラビティを切り、別のプリセットを呼び出す。すると、彼女の凛々しい騎士の姿がみるみる俺の衣装と同じになっていく。確か彼女のオリジナルPMは声と姿を変えるプログラムだったような……


『巡里くん!』

「へ、や、ちょっと!」


 俺と手を繋いだ天間さんはぐるぐると回り始める。何度か繋いだ手を変えながら回り、目が回るかどうかのあたりでようやく止まった。


「な、何を……」

『ウォーロックはあなたをメインターゲットにしているのは明らかですわ。そして、防御体制を取られたままでは膠着状態。そして時間稼ぎは一番の敵』

「ちょ、天間さん!?」


 彼女が離した俺の手は、いつの間にかゴツい騎士鎧のものに変わっており、見える範囲で確認すると全身の見た目が上書きされていた。


『スキンチェンジですわ。見た目重視の私の奥の手の一つなんですの』

「そんなことしたら――!」


 どん、と彼女は俺の背を叩く。


『いいんですの? 大事な女の子を助けなくて」

「!!」


 背中が熱くなる。何か言おうとして、けれど後ろを振り向けない。


『せっかく突破口は見えたんですの。でも、相手の出方を待つだけのこのタイミングは、ただ時間が過ぎるだけですわ』

「――わかった」


 俺はプリセットを突入時のものに戻す。そしてなるべく天間さんのように振る舞いながらウォーロックの隙をうかがい、距離を取りながら防御に徹する。


『ふふふ。この姿で相手を翻弄しながら戦うのも悪くありませんわね!』

『天間っち! 無茶せんときや!』


 流石に味方はネームマーカーが表示されてるので間違えることはない。

 だが敵は違う。まんまと俺の姿をした天間さんに注意を向け、俺の行動は視界にとどめる程度になった。


「ミステラ、『カモフラ』重ね掛けできる?」

『まかせて!』


 少し離れた岩場で身を隠しつつ、プリセットの一部を変える。

 心苦しいが、ここで敵を倒す時間が惜しいのも事実。なんとか倒し方も見えてきたので、若干不安要素は残るけど俺は俺のするべきことをしなくては。


「みんな、あとはよろしく」

『こらこら、そんな小声でいうんじゃあない』

「え?」

『everyone、つけ忘れてますわよ』


 えぇ、これも全員に言うの……?


@everyone>「みんな、あとはよろしく!」


 途端にエアル・ヴェノス全土から歓声が上がる。

 俺は激しい羞恥に襲われて、早々に施設の中へ突撃した。

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