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エンデヴァー・プロジェクト  作者: 国見 紀行
第九章 エアル・ヴェノスを守るモノ
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第41話 次元の管理者

 俺達はPM(プログラムモジュール)「フリーグラビティ」で浮いている。

 これはそもそも今いる環境が低重力で動きにくいからだ。


 ラスボス『ウォーロック』もわずかに浮いている。しかし羽や航空エンジンらしきものは見えない。

 ……もしかしてあいつも?


『みそっち、大丈夫かいな?』


 あれ、八雲ねーちゃんの声が聞こえる


『一時的にARMが聴覚補助するよ!』

「あ、なるほど。助かる! 八雲ねーちゃん、俺なら大丈夫!」

『ほんなら、いつものやつ頼むで!』

「了解!」


 マルチプレイを滅多にやらない俺は、シングル以外での立ち回りは大体サポートにまわる。BATTLE-ARMでは基本的に「近づかない」「短時間で仕留める」「メイン武器が命」の三原則があるため、サポート役のプレイヤーはほとんどいない。

 公式もそれを理解してか、補助目的のPMやアイテムはリリース当初以降ほとんど出ていない。移動力や攻撃力強化、遠距離攻撃武器のリリースばかりでユーザもそっちへと流れていく。


『まずは私が!』


 天間さんがチャージアタックを放つ。ランスシリーズは近距離武器ながらも人気が高く、一定の距離を保てるので攻守ともに優れている。

 フリーグラビティで加速度の付いたチャージアタックはいつものゲーム画面で見るよりも攻撃速度がはるかに早く、チャージ開放と同時に攻撃が命中した。


『んう、ぐっ!?』

『天間っち??』

『ランスが、弾かれましたわ!?』


 二、三回ヒットしながらも相手に傷を負わせることなく、天間さんは攻撃を逸らされて離れていく。


『やはり…… さっきのオレの攻撃もあまりダメージがなさそうだが』

『そんなアホな!? ん、今度はウチがいく!』


 八雲ねーちゃんがメイン武器の「雲落とし」を振り上げる。


『せい、る、ああああああああっ!!!』


 しかしこれも先程同様、相手に当たると同時に甲高い音が響くだけでウォーロックは微動だにしない。


「まさか―― 未実装だから、ダメージ判定が設定されてないとか?」

『それはゲーム内の話ですわ。アレは実際の兵器ですのよ? 現実にあるものが永遠に壊れないなんて……』


 俺はそれについて仮説がある。

 それは、ステラたちエアル・ヴェノスの人々は俺たち地球人と『存在次元を異にしている点』だ。

 彼らは肉体という三次元空間の縛りから解き放たれてより高次の存在となった。

 ってことは……


「ミステラ」

『なに?』

「あの兵器、もしかして――」


 思いついたことを聞こうと口を開いたとき、体の周りの空気が膨張した。


『な、なんや!?』

『え、嘘でしょ!?』


 天間さんや八雲ねーちゃんもその異変に気がつく。

 しかしそれだけじゃない。似たような叫びをあげる他のプレイヤーもメッセージに異変を投げる。ということは、エアル・ヴェノス全体に何かが起こっているということだ。


『!! 来るぞ!』


 ジョーさんが警告を放つ。一瞬視線を外していたウォーロックはまさに空中を滑る勢いで天間さんに突撃し、黒い渦をまとった腕を加速に乗せて繰り出した。


『がっ、ふぐ!』

『天間さん!』


 彼女は動かない体を無理やりPM(フリーグラビティ)で動かしたものの、避けきれずガード状態へ移行。それすら相手は殴り抜けランスとシールドが半壊状態に追い込まれた。

 さらに相手は移動速度を落とすことなく再び施設前(初期位置)まで戻る徹底ぶりだ。


『何が起こった? 体が縛り付けられたように動かなかったぞ……』

『私もですわ。ガード状態だったので装甲だけで済みましたが…… あれは一体?』


 メッセージも被弾報告で溢れかえる。その中の文面に「凍った感じ」「縛り付けられたように」「息が止まった」といったものが多かったことに、俺はある仮説を立てた。


 ウォーロックは「空間」を支配(コントロール)しているのではないか。


「空間、空間…… くう、か!」

『何ですの?』


 俺はPMプリセットをいくつか漁る。幸運にも思っていたPMをセットしているプリセットを発見した。


「ミステラ、これにチェンジだ!」

『え、でもこれにはフリーグラビティが』

「大丈夫」

『……うん!』


 プリセットが入れ替えられ、俺の周囲の重力がエアル・ヴェノスのものに置き換わる。体感では体重が半分以下になり、若干空気抵抗の薄さを実感する。


『な、何やってんねん、みそっち!』

『馬鹿野郎、死にたいのか!?』


 二人が大声で呼びかける。ボイスボリュームを感じるってことは、鼓膜は戻ってきたようだ。

 そして、俺を心配して駆け寄る二人の動きが不意に停止する。


『く、体が!?』

『来ますわ、皆さん!』

『みそっち!!!』


 もちろんウォーロックの狙いは俺だ。フリーグラビティも起動しない今なら逃げることも難しい。


「来い、お前を受け止めてやる!」


 俺はニンジャソードを地面に突き立て、相手の攻撃に備えた。

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