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エンデヴァー・プロジェクト  作者: 国見 紀行
第八章 空想を力に変えて
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40/50

第40話 BATTLE-ARM

 エアル・ヴェノスの大地には、大量のHDCハイアーディメンジョンクリーチャーがあちこちに湧いていた。さながらARMで遊んでいるBATTLE-ARM(オンラインゲーム)のマルチプレイのように。


「これ、どうなってるんだ??」

『ゼラレイドが放ったんやろな。さっきまでとは大違いやで』

『いや、侵入者をトリガーに出現した可能性もある。どっちにしろ、他の艦にいたプレイヤーも参戦してるから数の上ではこちらが上だ』


 俺は急いで周りを見渡した。

 ジョーさんの言う通り、周囲に停泊していた他の艦から我先にとHDCへ攻撃を開始している。

 しかし、俺には一つ疑問があった。


「あの、俺たちだけなんじゃないの? 電子記録現実化(メモリアライズ)が使えるのは」

『そりゃ、こんだけたくさんの(サーバ)があったら技術的には可能なんちゃう?』

「そういう問題ではないと思いますわ……」


 大兜の下で天間さんもドン引きのようだ。


『ほらほら、ザコは他のプレイヤーが引き受けてくれてるんだから、オレたちは目的の建物に急ぐぞ!』

「あっ、そうか!」


 実際のゲームでも大物を仕留めればその分ランクも上がる。得られるアイテムも差がつく。けれど、今の俺たちはそもそも目的が違う。


『頑張れ、ロウフォーク!』

『ジョー! 今日はその斧は飾りか?』

『「雲落とし」が寂しがってませんかブランダさん!?』


 あちこちからメッセージが流れ込んでくる。流石は有名ランカーだ。


『ダークシャドウ! 期待してるぜ!』

「え、俺??」


 不意に自分のハンドルネームを呟かれて驚く。


「情報が共有されているのなら、今日の主役はダークシャドウ(巡里くん)ですわよ。ほら、何か返してあげてくださいまし」

「え、えっと……」


@everyone>「みんな、後ろは任せた!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!』


「ちょっと盛り上がりすぎじゃない?」

『バカ言え、最終決戦だぞ?』

『せやで。ヒーローの一言でこないに盛り上がるのも悪くないやん』


 ヒーロー…… 俺が?


「さあ、ヒーローさん。ヒロインを助けに行きましょう」

「……うん」


 若干トゲを感じる天間さんの言葉に、とりあえずフリーグラビティを起動する。ふわりと浮かぶ体をPM(プログラムモジュール)で制御し、一気にサーバ施設まで跳躍を試みる。


「よし、いけそう」

「行きましょう!」


 落下速度の倍以上の加速をかけて、移動を開始する。途中味方の声や銃撃音が掠めていくが、構わず移動する。攻撃は俺も天間さんもそれぞれが持つPMで無効化されているためだ。


 だが、それでも無効化できないものもある。


「危ないですわ!」

「へっんぶっ!??」


 突然の警告に、慌ててフリーグラビティをオフにする。直後慣性で前方に滑り、不可視の壁に衝突した。


「な、なんだぁ!? 障害物は無効化してる(壁ジャンプで無視)のに」

「……イベントエリアですわ」


 天間さんの声に反応したのか、透明な壁が消え去り施設の入り口付近に黒い渦が巻き始める。


「やはり、この地形含めて見たことがあると思ったら、未実装マップ『エデン』とその没イベントと一緒ですわ」

「未実装マップ? なんでそんなこと知ってるの?」

「お父様がゲーム会社の開発に携わってるんですわ。私の特殊PM(声やスキン)もその伝なんですの」

「なるほど…… で、その没イベントって?」


 天間さんは手持ちのランスを構え直す。チャージ攻撃をするモーションに似ているが、恐らくガード姿勢を取るか悩んでいるのだろう。


「ラスボスのHDC-1023、コードネーム『ウォーロック(戦争を終わらせるもの)』との戦闘ですわ」


 黒い渦が爆ぜる。

 遅れて衝撃音と爆風が俺達を襲う。フリーグラビティのおかげで吹っ飛ぶことはなかったが、その爆音は完全に鼓膜を吹き飛ばし、平衡感覚を失わせた。


「いってぇぇぇ!!」


 後頭部がキーンと響く。目を開けると真っ暗な空が飛び込んでくる。そこでようやく体が平常時の角度でないことを知る。


「今のが、ウォーロックの!?」


 脳の奥で何かがノックする。代わりに周囲がとても静かなことに気がついた。視界を正常な状態に戻すと、先ほどまであった渦は黒い人のカタチをとっていた。

 腕が2対。

 頭が2つ。

 灰色の肌で全身が覆われ、長く伸びた腹には赤ん坊の足が5対生え、その間から金属に似た光沢を持つ蛇の尻尾をくねらせている。

 驚くべきはその体が俺の倍以上あり、かつゆっくりと空中を上下運動していることだ。


「浮いてるのか、もしかして」

「……って! ……ん!」


 誰かの声が聞こえた気がして注意しながら辺りを見回すと、天間さんが完全防御体制で相手を警戒していた。まだ鼓膜が戻ってないのかもしれない。


「って、あの影は!」


 一旦近場の大岩に体を隠すと、ウォーロックに向かって行く大きな影が地面を走る。視線を上に向けると、巨大な斧が相手を穿つ瞬間を目撃した。ジョーさんの必殺技「脳天爆斧」が見事決まったようだ。


 かぁぁぁぁぁぁ……ん!


「……!! ……ぇ!」


 斧が衝突した甲高い金属音は、今の俺にもしっかり届いた。だが音からして相手にダメージを与えられたかというと、そんな気配はない。


「……!?」


 その反撃か、ウォーロックが体を大きく回転させ、尻尾の衝撃で辺り一面を薙ぎ払う。


「あっ、ぶねぇ!」

「……! ……」


 飛び散る破片の攻撃を、間に入った八雲ねーちゃんが払い落とす。

 しかし、俺に何か言ってるようで何も聞こえな……


@ブランダ>「シャキッとしぃ!」

@ロウフォーク>「次、来ますわ!」

@ジョー>「気合い入れろぉ! 死にたいか!?」


 唐突に表示されたメッセージに、思わず笑みがこぼれた。


「失礼…… しましたぁ!」

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