第26話 挑戦、節約・自家栽培
舟継島に戻ったはいいが、俺はこの島を出るまで宇宙空間を飛行する船だと知らなかったため、最初に運転制御室を探す羽目になった。
しかし、ステラによる捜索で島の船内制御室は案外すぐに見つかり、生活環境や航行ルートの確認を終えると、俺達は再び島生活へと戻った。
「『基本的な生活機能はどこも異常はなかったから、備蓄のやりくり次第ではライフリサイクラーの計算上30年は大丈夫だと思うよ』」
「さ、三十年!?」
「『うん。でも、エアル・ヴェノスに到着するのはもっと先だから、ライフリサイクラーに頼らない生活が出来ないといけないよ?』」
「あっ、そういえば残り60年とか言ってたっけ」
「『本艦の機能が十分に動いて60年だから、もっとかかるかも』」
そういえば、本土で艦長さん達にステラたちのことを色々話を聞けたけども、このディープ・アドバンスのことはあまり知らない。機能や性能、今の状態でどれだけ到着に時間がかかるかも不明瞭だ。
なんとかステラを助けたものの、生きてたどり着けるかもわからない。
「『……やっぱり、二人じゃちょっと不安?』」
「あ、そういうわけじゃなくて。――俺、何もできてないなって」
「『みそらは私を助けてくれたよ?』」
「確かに島に来る時はそうだったけど」
現状は、ステラにおんぶにだっこ状態だ。これから30年以上そんな状態が続くのは居心地が悪い。俺だって男だ、何か手伝えることがあれば……
「そうだ、学校の図書室に何かないかな?」
図書室と言っても、実際はライブラリサーバに保存されている電子書籍を開くだけ。そして、やはりというかローカルに保存されているデータは学習用の物が多く、船に関する情報やエアル・ヴェノスに関するものは全くと言っていいほどない。
「『何か見つかった?』」
「うーん…… まいったな。アテが分からないから探しようがない」
所詮14歳が考えつくことなどたかが知れている。けど、どうすることもできない。つい低学年書籍のほうに懐かしのおとぎ話に手を伸ばしたりと時間を浪費しだしたので、最終手段「AIに聞く」を実行する。
「ミストル、俺は何ができるかな?」
『現状できることは食糧の確保と、船内機材・環境の保持に務めることが最優先です。植物のサンプルがいくつか保管されています。それを育ててはいかがでしょう』
「なるほど!」
俺たちはGPSを起動して食用植物の種が保管されているという町役場裏の倉庫に足を踏み入れた。
「『なんだか、ちょっと寒くない?』」
「確か、保存のために温度と湿度を管理してるんだよ。えっと…… あった」
俺は『じゃがいも』『さつまいも』のサンプルを一掴みずつ取ると、早々に倉庫を出た。室内温度の上昇を防ぐためにもなるべく長居しないほうがいいだろうとの判断だ。
「っていうか、ここの環境で作物って育つのかな」
「『それは問題ないよ。人工太陽と適度な水分は用意できるし』」
「ならいいか。学校の野菜畑を使おう」
町の隅っこにある倉庫から歩いて学校に向かう。普段からあまり人とすれ違うことのない道だが、誰もいないと分かっていながら歩くのは何だか背中がむずむずする。
「鳥や虫はいるんだな。人の気配は全くないのに」
「『モデルになった島の環境を再現するために生態系の一部を持ち込んだみたい』」
「すごいな…… って言っても俺が地球の環境を覚えてないから、よくわかんないや」
学校に到着すると、農耕具を探しにあちこち見て回る。畑近くで見つけたクワや、すぐ近くに積んであった腐葉土の使い方をミストルやステラに聞きながらなんとか種イモを植え付け、作業は終了した。育成環境は多少いじれるらしいので、雑草や害虫の処理だけ気をつければ割と早く収穫できるそうだ。
「意外と簡単だな」
「『こうやって、植物は育つんだね』」
「やったことないの?」
「『データの外にある経験は、ほとんど知らないことばかりだから』」
知識として理解することと、実際に動いて経験することは別。それは分かるけれど、やはり自分が触れて、いじって、体感することは何においても最高の学習だと思う。
「『でも、この島の住人がいつまでも二人っていうのはさみしくない?』」
「!?」
ステラさん? 何の話を!??
「『なんせ今の私たちは半分漂流してるに等しいから。救難信号はたまに発してるけど、ほかの船が見つけてくれるまで二人の生活が出来ないと続きそうだよ』」
「あ、ああ。そういう」
頭の中に浮かんだ、最初の頃の姿を頑張ってかき消す。
……俺って、スケベなのかな。
「じゃあそろそろ…… あ」
「『どうしたの?』」
「家…… 壊れたままじゃなかったっけ」
思い出して家まで戻ると、やはり壊れたままだった。
別に他の家でも問題ないし、なんなら野宿でもいいんだけど、幼い頃から住んでた家が傷んだままというのはちょっと悲しい。
「……とりあえず、また公民館行こうか」
「『私、ここがいい』」
「でも、二階部分が中見えてるし、外も……」
俺が離れるよう促すと、ステラは目を閉じて何かをブツブツ口にし始めた。
「ステラ??」
「『確か、中がこうで、外側が……』」
ふっ、と周囲が暗くなる。慌てて周囲を見ると、どうやら俺たちの周りだけ変に暗い。そして、暗い空間がどんどんと広がっていく。
「な、なんだ!?」
「『よし、イメージできた』」
次の瞬間、周りに光が戻る。その反動なのか自宅が眩い光に包まれ、目を開けていられなくなる。
「な、なに!? なに!??」
「『これでどう?』」
まぶたの向こうにあった光が収まると、そっと目を開けて驚いた。
「あ、あれ?」
「『覚えてる部分をメモリアライズしてみたの』」
「す、すげぇ!」
くう。
「……ん? 今の音は?」
「『あはは…… 今のでお腹減っちゃった』」
「……当分、メモリアライズは禁止な」
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