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89/96

89・妖精さんとギャラの相談をしました

 

 ギャラかあ。

 

「それならキムラサンにも払ってないわね」

「誰だ、キムラサンって」

「木よ」

「歌って踊る木だな」

 

 デレクの説明に、テオは首をかしげていた。後で本人を見て驚いてね。

 

「エミさんの手芸の特許料。そこから我々のギャラを頂戴いたします。受け取り方法はのちのちで」

「はいい」

 

 スキルってお金がいるの?

 

「エミさん、わかっていないようですから、はっきり言いますけどね」

「はあ」

「通常、魔法を使うには魔力がいるんです。固有スキルも同じです」

「私の固有スキル、コスパ最高って思ってた」

「違う。ツケ払いでした」

「スキルのツケって初めて聞いた」

 

 全員頷く。

 

「まあ、普通はそうでしょうね。でも、エミさんの場合、魔力でこのスキルを使用したら」

「したら?」

 

 鶴さんが、後ろを向いて、

 

「ふっ」

 

 小声で笑った。ああ、そういう感じで……。

 

「つまり魔力であれば、エミは生きてここにはいなかったってことだな」

「エミ、スキルに感謝しとけよ」

「そうね。みんな、ありがとう」

 

 本当にありがとう。今までのことが脳裏をよぎった。魚に助けられてから、いろんな不思議なキャラに助けてもらった。これからもよろしくね。

 

「それじゃあ、これからもバリバリ手芸しなくちゃ。ということは、平和のために手芸を毎日しても怒られないということね!」

 

 急いで世界平和しなくちゃ。

 

「ちょっと待ってくだせえ~♪」

 

 いきなり私の背後から、伝言妖精さんが出てきた。

 

「あら、伝言妖精さん、どうかした?」

「今、我々のギャラの話が聞こえたので、参上しましたわ~♪」

 

 伝言妖精さん以外にも、受話器でお馴染みの双子妖精もいる。

 

「私達も、ギャラにはお願いがあるのよ~」

「あるのよ~」

 

 妖精さんのギャラは確か。手をポンと叩く。

 

「みんなには、テオのツケでって話してあったわよね」

「そう、そのことなんだけど」

「おお、そうだよな。主のエミからもらいたいよな」

 

 テオの弾んだ声が大きく響いた。そうよね、私が払わないとダメよね。

 

「うんにゃ、これからもテオからもらいたい」

「「え?」」

「そう、テオのお茶がいいの~」

「いいの~」

 

 テオの顔を見た。彼も驚いた表情を浮かべている。

 

「え、師匠は俺のお茶がいいの?」

「そう、金をもらうより、他の妖精たちとお茶を飲んだほうが楽しいからなあ」

「「ねー♪」」

 

 テオが腕で目元をぬぐった。

 

「泣かせるなあ、師匠。おう、これからも俺でよければ……」

「その言葉、待ってたで」

「「ふふふ」」

 

 あら、妖精さんたちの目が光ったわ。

 

「わしら時給制でな。今までの支払い、だいぶ溜まっているんすわ~。まあざっとこのくらい?」

 

 時給妖精さんがテーブルに置いてあったメモ用紙に、自分達の身長より長い鉛筆を持って、器用に書きはじめた。

 

「……かなり几帳面というか」

「細かいというか」

「詳細な時間を……」

 

 そうね、かなり頑張ってもらった記憶があるわ。特にリナリアがお世話になったわね。

 

「双子妖精さんには、通信でかなりお世話になったわ」

「そうです、そうです。毎日がんばってますう~」

「うんうん」

「と、まあ、今のとこ、こんな感じですわ」

「かなり多いわね」

「で、時給はいくらなんだ?」

 

 デレクが一番聞きたくなかったことを聞いてきた。

 

「わいらのギャラは、基本夜のお茶や」

「え、お茶?」

 

 ルカスが驚いている。

 

「へえ。夜寝る時に、窓辺にテオとエミさんが作ったお茶をカップに一杯入れて、置いておくこと。それがワイらの報酬なんや。だけど、もうかなり溜まりましたなあ」

「こ、この前は三日置くだけって話だったよな」

「でも、最近は双子を使ってますやん」

「まさかとは思うけど、かなり高額?」

 

 私とテオの汗が止まらない。何日?それともまさか。

 

「年単位?」

「おい、まさか」

 

 その途端、パンパカパーンとファンファーレが鳴り響いた。

 

「おめでとうございまーす」

「大当たりでーす」

「私達、時給10日でーす」

 

 ・・・

 

「「「ええーっ!!」」」

「まじか!」

 

 テオが倒れた。私も倒れた。

 

「もうかなりの日数助けてもらっているよね」

「使用した本人が払うシステムはないのか?」

 

 リナリアじゃあねえ。

 

「テオがいいんだもん」

「テオ、これからもよろしくね」

「え、えええええ」

 

 妖精に囲まれて、テオは引きつった笑顔でこたえていた。

 

「傍から見ると夢のような光景なんだけどな」

「実際は、妖精に金を要求される男」

「あわれね」

「「お前が言うな」」

「はい……」

 

 結局何日お茶を用意すればいいのか。

 とりあえず、テオ、合掌。

 

 

*****

 

 

 以前、『余談だが、テオは生涯、寝る前にお茶を窓辺に置くようになる。それは子孫も受け継ぐこととなった。』と、記したことがある。

 そう、借金が生涯終わらず、子孫が……。

 

「「「まいど~♪」」」

 

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