89・妖精さんとギャラの相談をしました
ギャラかあ。
「それならキムラサンにも払ってないわね」
「誰だ、キムラサンって」
「木よ」
「歌って踊る木だな」
デレクの説明に、テオは首をかしげていた。後で本人を見て驚いてね。
「エミさんの手芸の特許料。そこから我々のギャラを頂戴いたします。受け取り方法はのちのちで」
「はいい」
スキルってお金がいるの?
「エミさん、わかっていないようですから、はっきり言いますけどね」
「はあ」
「通常、魔法を使うには魔力がいるんです。固有スキルも同じです」
「私の固有スキル、コスパ最高って思ってた」
「違う。ツケ払いでした」
「スキルのツケって初めて聞いた」
全員頷く。
「まあ、普通はそうでしょうね。でも、エミさんの場合、魔力でこのスキルを使用したら」
「したら?」
鶴さんが、後ろを向いて、
「ふっ」
小声で笑った。ああ、そういう感じで……。
「つまり魔力であれば、エミは生きてここにはいなかったってことだな」
「エミ、スキルに感謝しとけよ」
「そうね。みんな、ありがとう」
本当にありがとう。今までのことが脳裏をよぎった。魚に助けられてから、いろんな不思議なキャラに助けてもらった。これからもよろしくね。
「それじゃあ、これからもバリバリ手芸しなくちゃ。ということは、平和のために手芸を毎日しても怒られないということね!」
急いで世界平和しなくちゃ。
「ちょっと待ってくだせえ~♪」
いきなり私の背後から、伝言妖精さんが出てきた。
「あら、伝言妖精さん、どうかした?」
「今、我々のギャラの話が聞こえたので、参上しましたわ~♪」
伝言妖精さん以外にも、受話器でお馴染みの双子妖精もいる。
「私達も、ギャラにはお願いがあるのよ~」
「あるのよ~」
妖精さんのギャラは確か。手をポンと叩く。
「みんなには、テオのツケでって話してあったわよね」
「そう、そのことなんだけど」
「おお、そうだよな。主のエミからもらいたいよな」
テオの弾んだ声が大きく響いた。そうよね、私が払わないとダメよね。
「うんにゃ、これからもテオからもらいたい」
「「え?」」
「そう、テオのお茶がいいの~」
「いいの~」
テオの顔を見た。彼も驚いた表情を浮かべている。
「え、師匠は俺のお茶がいいの?」
「そう、金をもらうより、他の妖精たちとお茶を飲んだほうが楽しいからなあ」
「「ねー♪」」
テオが腕で目元をぬぐった。
「泣かせるなあ、師匠。おう、これからも俺でよければ……」
「その言葉、待ってたで」
「「ふふふ」」
あら、妖精さんたちの目が光ったわ。
「わしら時給制でな。今までの支払い、だいぶ溜まっているんすわ~。まあざっとこのくらい?」
時給妖精さんがテーブルに置いてあったメモ用紙に、自分達の身長より長い鉛筆を持って、器用に書きはじめた。
「……かなり几帳面というか」
「細かいというか」
「詳細な時間を……」
そうね、かなり頑張ってもらった記憶があるわ。特にリナリアがお世話になったわね。
「双子妖精さんには、通信でかなりお世話になったわ」
「そうです、そうです。毎日がんばってますう~」
「うんうん」
「と、まあ、今のとこ、こんな感じですわ」
「かなり多いわね」
「で、時給はいくらなんだ?」
デレクが一番聞きたくなかったことを聞いてきた。
「わいらのギャラは、基本夜のお茶や」
「え、お茶?」
ルカスが驚いている。
「へえ。夜寝る時に、窓辺にテオとエミさんが作ったお茶をカップに一杯入れて、置いておくこと。それがワイらの報酬なんや。だけど、もうかなり溜まりましたなあ」
「こ、この前は三日置くだけって話だったよな」
「でも、最近は双子を使ってますやん」
「まさかとは思うけど、かなり高額?」
私とテオの汗が止まらない。何日?それともまさか。
「年単位?」
「おい、まさか」
その途端、パンパカパーンとファンファーレが鳴り響いた。
「おめでとうございまーす」
「大当たりでーす」
「私達、時給10日でーす」
・・・
「「「ええーっ!!」」」
「まじか!」
テオが倒れた。私も倒れた。
「もうかなりの日数助けてもらっているよね」
「使用した本人が払うシステムはないのか?」
リナリアじゃあねえ。
「テオがいいんだもん」
「テオ、これからもよろしくね」
「え、えええええ」
妖精に囲まれて、テオは引きつった笑顔でこたえていた。
「傍から見ると夢のような光景なんだけどな」
「実際は、妖精に金を要求される男」
「あわれね」
「「お前が言うな」」
「はい……」
結局何日お茶を用意すればいいのか。
とりあえず、テオ、合掌。
*****
以前、『余談だが、テオは生涯、寝る前にお茶を窓辺に置くようになる。それは子孫も受け継ぐこととなった。』と、記したことがある。
そう、借金が生涯終わらず、子孫が……。
「「「まいど~♪」」」




