79・テオの固有スキル
リナリアからの知らせで、私とルカス、デレクは騎士団の一室に向かった。
森の中で、一人旅の男性を発見した。彼の名はテオ。エミの友人と名乗っていると。だが、あまりにも軽装なのと、アッコンチ領側から来たということで、騎士団の取り調べ室に待機させているとのこと。
テオとは久しぶりに会うから、元のエミールバージョンに戻っている。あかりに会わないようにしないと。
「失礼します、テオが来ているって……」
「よお、エミール。お、ルカスとデレクもいるのか」
そこには、ソファでまったりお茶を飲んでいる、テオの姿があった。思ったより元気そうで、ホッとしたわ。
「よかった、無事で」
「三人一緒にいるってことは」
「ああ、我々の素性は、エミールにばれている」
「もう、怒られた後だ」
「了解。エミール、悪く思うなよ。お前だとすぐ顔に出るからな」
「そこは否定しない」
取り調べ室の皆さんに、テオの身元保証人として説明をした。だけど、いくつか確認することがあるらしい。
「彼が来た方向に問題があるので、いくつかお聞きしたいことがあります」
そう言って地図を広げたのは、サムソンさん。みんなでテーブルの上の地図を見た。
「先程テオさんと会った場所がここです」
そこは、リナリアが以前いた、例の狩猟小屋の近くだった。ということは、
「テオ、どうやってこの国に来たの?」
「まあ、いつものやつだ」
「いつものとは?」
サムソンさんが尋ねる。
「テオの固有スキルよ」
「ええ、俺の固有スキルの『商人の声』ってやつです」
これのおかげでどれだけ助かったことか。
「俺のスキルは、まさに商人の声で、儲け話がどちらにあるかを聞くことができるんです。例えば右と左、どっちの方向に行けば儲かるかと」
「え、それだけ?」
サムソンさんの隣にいた騎士さんが呆れた顔をしているけど、それは誤解よ。
「どうやら勘違いしているようだね。これを応用すると、どちらに行けば安全かわかるということだ。安全でなければ、儲けは消えてしまうからね」
「ああ、そういうことですか。それはすごい話だ」
ルカスの説明に、ようやく騎士さんが理解した。そう、利益はつまり安全であることも加味される。このスキルのおかげで冒険者の時、どれだけ救われたか。ただし、
「それでもやっぱり、安全よりも利益を追求するスキルなんだけどね」
「ああ、おかげで助かったけど、死にかけたことも多かったな」
私達では倒せないような魔物に遭遇してなんとか倒したけど、冒険者ギルドに怒られたこともあったわね。それでもまあまあのお金になって、
「これが商人の声か……」
「最悪な商人だな」
「利益より安全を重視する設定とかないの?」
「俺に聞かないでくれ」
ぐったりしたみんなに、頼むからレベル上げてくれって怒られていたわね。
「それで今回も、スキルの言う方向から来たってこと?」
「そうなんだ。ガーデン伯爵領からこのスヘルデン辺境伯領に行くには、いくつかのルートがある。確かに安全重視なら、アッコンチ侯爵領を通るのは、悪手だ。だが、商人の声が俺を呼ぶのだ。そっちやあらへんで〜。こっちやで〜ってな」
そう言うと、テオは指先で自分が通ってきたルートを、地図の上に示した。
「かなり裏ルートじゃない?」
私が落ちた川からも離れているわね。
「そ。俺の情報網を舐めんなよ」
「つまり、商人独特の裏ルートからここに入ってきたと」
「そんなものがあるとしたら、厄介ね」
「なんで?」
「アッコンチ侯爵が、そこから攻めてくるかもしれない」
「可能性はあるな」
テオも頷く。
「そういう理由でここから入ってきたことは、理解しました。あと、来る時に何か目撃しましたか?アッコンチ侯爵領のことで」
「いや、何もなかった。無事に来れてよかったよ」
サムソンさんの問いに、テオは笑顔で答えて、我々に向かってウインクしてみせた。




