78・偵察部隊・リナリア
(リナリア視点)
「行くわよ」
「それでは、お嬢様、よろしくお願いします」
私は双子妖精の一人をサムソンに預けて、空を飛んだ。私の肩には、もう一人の双子妖精が乗っている。
「今日もよろしくね♪」
「お任せ〜♪時給制〜♪」
「一度聞いてみたかったんだけど、時給制ってことは、今もお金がかかっているのよね」
「そうですう。誰も聞いてくれないけど~♫」
「……一度エミに話したほうがよさそうね」
「ですですぅ〜♬」
一体どれくらいの金額になっているのか。
そういえば、支払いは『テオのツケ』って聞いたことがあるわね。
「テオさんとやら。合掌」
払いきれるといいわね……。
上空で止まって、辺りを見回す。あまり高い場所には行かないようにしている。高すぎると、逆に目立つのよね。だから、木々の高さギリギリにいる。服も迷彩じゃないけど、冒険者が良く好む、アーミーカラーっぽい緑だ。
「るるるる~♪」
妖精が歌う。
「どう聞いても、着信音よね」
初めて聞いた時は、何かと思ったわ。
妖精が空に指をさすと、そこに光の輪がうまれて、中から受話器が出てきた。
「まだ絵面に慣れない」
受話器をとって、耳に当てた。
「お嬢様、そちらはどうですか?」
下にいるサムソンからだ。辺りを見回す。
「そうね、今日もいい天気。何もないわ」
「これ、本当に便利ですね」
「そうね。魔王の件が終わったら、遠出もしてみたい……あら?」
「どうかしましたか?」
遠くに光が見えた気がした。
「何か見えた気がしたのよ。ちょっと待ってて」
「はい、お気をつけて」
そのままの高度を維持したまま、光の方を目指した。次第に音が聞こえてきた。何か争っている?
「うああああっ!」
叫び声だ。
「サムソン、誰かの声が聞こえた!叫んでいる」
「わかりました。どちらの方向ですか?」
「先程の位置から南東へ向かって!私も戻って位置を教えるわ」
「了解です」
サムソンが仲間に指示を出す声が聞こえる。通信はそのまま切らずにおく。
私は持っていた布を、風魔法ではためかせる。要するに、旗を空中に掲げた状態ってことだ。
これ、エミのアイデアなのよね。
私が空から下を見てもキムラサンが見つけられなかったのと同じで、下からも私を見つけるのが困難って話になってね。
それと私が移動したら、元の場所がわからなくなるってことに気がついたのよ。それで、旗をつければどうかなって話になったの。
この布を近くの高い木に止めて、下に錘付きの紐をたらす。これで場所がわかる。
私はサムソンと合流して、先程の場所に戻った。
*****
「いやあ、助かりました」
先程の悲鳴の主が、ニコニコ笑っていた。
旅の途中で魔物に遭遇して逃げていたところを私が見つけて、サムソン達が魔物を退治したところ。
「ホント、死ぬかと思いました。ありがとうございます」
きっちりお辞儀をして、両手を合わせてスリスリする姿。商人かしら。それにしても荷物が少ない。先程見たときは、馬に乗って爆走していたわね。馬にも慣れていた様子。
「我々は、辺境伯領の騎士団です。ここらには魔物がいるもので、巡回していました。あなたはどのような目的でこちらに?」
少し緊張した声でサムソンが問う。
走り疲れた馬を労っていた青年が笑顔のまま、再び頭を下げた。
「これは、辺境伯領騎士団様にお助けいただくとは、なんという幸運。いや、マジ助かった」
そのまま彼は座り込んだ。どうやら、かなり疲れていたようだ。
「つかぬことをお聞きしますが、そちらにエミという冒険者はおられますか?」
「エミのことを知っているの?」
「はい、私は……」
「あ、テオさん、来たの〜?」
「お、エミんとこの妖精か。久しぶりだなあ」
双子妖精が彼の元に飛んでいった。今、テオって言ったわよね。
「あなたがテオさん?エミの友達の」
「そうです。彼に会いに来ました」
「そう、あなたが」
あなたが、時給制の支払い担当。
なんとなく、目を逸らした。たくさん妖精を使ってごめんね。合掌。




