77・アダルベルトとパトリシア兄妹
短めとなります。申し訳ございません。
(アダルベルト視点)
深夜。アッコンチ侯爵邸の人々は、すでに眠りについている。そんな遅くに、
「お兄様」
突然、妹が私の部屋を訪れた。
「どうした、何かあったのかい」
「ええ、私の可愛い子が、見つかってしまいましたの」
私は、読んでいた本を横に置いて椅子から立ち上がり、妹を迎える。彼女の手を取りソファへと誘導する。妹は嬉しそうに微笑んで座った。私も同じソファの横に行く。
「珍しいね。パトリシアのあの子を見つけるなんて」
「本当に」
「それで、どうなったんだい?」
「どうやら取り出されてしまったみたいなの。いろいろ調べられても困るから、こちらで消しておきましたわ」
「そうか。どうせ彼らではそれが何であるかさえ、見当も付かないだろうけどね。それでもいろいろ調べられても面倒だから、仕方ない」
人事のように、澄まして話す妹は、私の手を離さない。
「だが、アレを取り出すとは。やはり聖女かな。いや、聖女の姿をした第三王子か」
美しい顔を思い出す。あれで男性とは、世の中は不条理だ。
「聖女様にも、あの子をつけようとしたのですが、弾かれてしまいました。残念ですわ」
「そうだったね」
もしかしたら、固有スキルの上下により、自分より下のもののスキルは弾くのかもしれない。
「ということは、光魔法の奴らはもう使えないか。仕方ない、そろそろ次のものを用意するとしよう」
「そうね」
「私もね、以前から放っておいた『毒』が消えてしまったんだ。あれも恐らく彼の仕業だろう」
「本当に邪魔なお方。私、あの方が嫌いですわ」
「私もだよ」
そう言いながら、微笑んでみせた。妹は嬉しそうに私の顔に両手で触れる。頬にゆっくりキスをして、妹は立ち上がった。
去り行く妹に声をかける。
「そういえば、以前にも、あの子が使えなかったことがあったね」
「ええ、お兄様。なぜかあの子が行くのを拒んだの。だから、彼を川に捨てるしかなかったのよ」
そう、エミール・ガーデン。彼の固有スキルは、読むことすらできないダメスキルと言われていたが。
「生かしておいたほうがよかったのか。いや、あの子が使えないのでは、生かしておく意味もないからな。そうだ、代わりの弟はどうしている?」
「安心して、お兄様。もうあの子が入っているから、いつでも使えるわよ」
妹の口が、にいっと大きく笑みを浮かべた。




