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75/79

75・さようなら、呪いという名の

 

(ルカス視点)

 

 翌日、二日酔いになった。エミとデレクもだ。

 兄上が「特別よ」って治癒してくれたけど、考えたら贅沢な話だ。最高位の治癒魔法使いが、たかが二日酔いを治してくれるのだから。本当に兄上には感謝しかない。

 恐らく、兄上がサラを治してくれたのだろう。あの時のサラは、かなり顔色が良くなっていた。

 ありがとう、兄上。

 

 飲みくらべの勝者は、叔父上だった。

 兄上は途中で自分を治癒していたことがばれて、失格になっていた。エミは早々に倒れていたな。デレクは12位だった。中途半端だな。

 サラは、2位。ものすごく強かった。でも負けて、ものすごく悔しがっていた。

 

「俺より強いやつはいる……」

 

 叔父上、それはまさか私の母じゃありませんよね……。怖くて聞けないけど。

 

 私はというと。

 

「まさかの一杯も飲めないなんて」

「ビールは苦手なんだよ」

「いや、それ以前に酔うの早すぎ」

「みんなで冒険者やっていたとき、ワインは飲んでいたわよね」

「実はあれ、葡萄ジュース」

「まじか」

 

 冒険者時代、ワインを飲むふりをして、ジュースでごまかしていた。飲めないなんて、恥ずかしくて言えなかった。

 だからエミから、


「ちゃんとルカスが勝てそうな競技にしておいたわよ」


 って笑顔で言われて。お前を信じているって、デレクや兄上に、目で語られて。

 言い逃れに「た、食べくらべ?」って言ったけど、わかっていた。ジョッキ見えてた。それでも、現実逃避したかった。

 どうして数多ある競技の中で、ぶっちぎり敗北確定のものを選んだ?エミールよ。

 まあ、自業自得ってこういうことなんだな。

 

「だっていつもワインガバガバ飲んでいたから、勝負できると思っていたんだけど。これ、ルカスが偽装していたせいよね。私悪くないわよね」

「そうだな、エミは悪くない」

「デレク!」

 

 治療のおかげで、笑っても頭痛は起きなかった。

 

「もう、呪いは消えたわね」

「きれいさっぱりですわ~♪」

 

 妖精たちも、笑っていた。

 

 

*****

 

 

 そのまま私はサラの元へ行った。彼女は私の話を聞いてくれた。

 

「師匠、もうあなたを負い目にしません」

「うん」

「あなたを負い目にすることで、私は自分を正当化していたんだ。王子としての使命を捨て、隠れてもいいと」

 

 そう、今ならわかる。私は逃げていたのだ。サラが傷ついたことを理由にして。他人を傷つけたくないから、私は逃げても仕方がないのだと。私がかけた本当の呪いは、逃げるための口実だったのだ。

 

「でもね、メインデルト。私は今回のことで思ったことがある」

「なんですか、師匠」

「確かにお前は王子だ。その責務がある。だがな」

 

 サラが私の耳元で囁く。

 

「守る価値のある存在なのか?親や兄は」

「なっ」

「いいんだ、自由に生きて。お前が求めるものがそれらを守ることなら、そうすればいい。違うのなら、ここで生きることもありではないのか」

 

「サラ……」

「お前の母親なら、そう言うぞ。私もな」

 

 そう言った彼女の顔は、すっきりしていた。あまりにも穏やかな顔をしていたので、思わず尋ねる。

 

「師匠は、二日酔いにならないのですか?」

「そっちかい」

 

 

 後日サラは、洗濯係から異動になった。リハビリに時間はかかるが、剣士として帰ってくると。

 辺境伯様の妹君と一緒に恐れられていた騎士の復活である。

 

 辺境伯領一同「怖い」

 

 え、そっち?

 

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