71・ルカス、辺境伯に願う
勝手に決闘?らしきことをしたので、辺境伯様から少し怒られた。私じゃなくて、聖女様が。
「まったく、聖人らしくないというか」
「拳のほうがよく語るというじゃない?」
「その綺麗な顔が傷つかなくてよかったな」
「そんなのすぐに治せるから問題ないわよ」
「便利だな、それ」
辺境伯様、マジで羨ましそう。
部屋には辺境伯様、ルカス、デレク、聖女様と私がいる。あかりはリナリアに連れて行ってもらった。あの子には、このメンツは濃すぎる。
全員でお茶を飲んでいるけど、辺境伯様だけビールだ。ジョッキで。やってらんねー感を全身で表現している。
「それで、仲良くなったのか?」
「まあ、多分?」
「そこそこで頼むぞ」
「うふふ」
聖女の弟が微妙な顔してて、切ない。お兄ちゃんが、いろいろといろいろで。
「エミさん、ごめんなさいね。あなたのことは、認めるわ。とりあえず?」
「はあ」
「兄上、エミは信頼できます。私を信じてください」
「んもー、わかってるわよ。これからはケンカ売ったりしないから」
そう言って、ルカスに抱きつく。私を話しのネタにじゃれているように見えるんだけど。ネタの為にケンカ売られてもな。
「あの、丁度いい機会なので、叔父上にお願いがあります」
兄をぺいっと投げ捨てて、ルカスが辺境伯様の方を向いた。
「私の剣の師匠である、サラがこちらで療養しているはず。母には止められていますが、会わせていただけませんでしょうか」
辺境伯様に頭をさげる。共にいたデレクも同様に頭を下げるから、私も急いで合わせた。
「妹から話は聞いている。会ってどうする?」
「兄上に、もう一度診てもらうつもりです」
「うん?どういうことだ?」
「彼女が毒を盛られて倒れた直後、神殿で診てもらっていますが、後遺症が残った。しかし兄上にもう一度診てもらって症状が回復すればと」
辺境伯は、何か考えているのか、頭を軽く横に振った。
「ああ、そういうことか」
ぼそりと呟き「待っていろと」と、部屋を出て行った。
「何、今の」
「なんか、話が噛み合っていなかったわよね」
私と聖女様が顔を見合わせる。
「それで、聖女様」
「その呼び方嫌いなのよね。あんたもフランソワって呼んでもいいわよ」
顔を背けてぶっきらぼうに話す聖女様。なんか嫌いになれない人だな。
「それでは、フランソワ様」
「何よ」
「その服の下に見えるシャツなんですけど、いい柄ですね」
「「今、それか?」」
ルカスとデレクがハモった。
「そうでしょ?可愛いのよ、これ」
「もう少しよく見せてもらっていいですか。うわ、この花柄きれい〜」
「でしょでしょ?わざと色と輪郭の線をずらしてあるのよ」
「この淡い感じがまたなんとも」
意外と趣味があいそう。
「最近辺境で新しい手芸を始めたのですが、今度見てもらえます?」
「手芸ですって?どんな感じなの?」
私達がきゃいきゃい話していると、辺境伯様が部屋に戻ってきた。一人の女性をつれて。
「お久しぶりです、メインデルト様」
彼女がサラか。騎士服を身にまとった40歳くらいの女性がやってきた。




