70・聖女フランソワの誓い
(フランシス(フランソワ)視点)
幼い頃から人の顔色を窺って生きてきた。
親ですら。
私の名前は、フランソワ。元の名前はもういらないわ。
父親がたまたま王様だったせいで、子供の頃から、苦労させられっぱなしよ。
母親がたまたまメイドだったのに、父親は母をあまり庇おうとしなかった。いつも母は、恐れていた。全てを失うことを。
側室がきてから、全てが変わった。母は、側室と友人になった。優しい側室様だ。
普通はたかがメイドとその子供など、消してしまっても文句は言えない。だが、彼女は我々を助けようとしてくれた。彼女の息子も優しく育った。
私の弟。
兄とは違い、身分などという物差しを知らない子。
私を「にいたま」と呼んで、ヨチヨチ歩いてくるその姿に、全員が悶えた。はううう。可愛すぎる。
私は決めた。みんなを守ることが出来る人になろうと。
側室様のように身分で守ることはできない。側室様のように、武力は余計無理。それを言ったら教えてくれたけど。
私には、聖魔力がある。
私は側室様に乞い、神殿へ入れてもらった。
「母とは会えぬがよいのか」
「本当は母も連れていきたい。その方が母を守れるのなら」
だが、父が拒否した。放置していても、妻なのだと。勝手なものだ。
私は神殿に入り、修行を行うこととなった。その際、王子という身分は返還している。
母は、側室様の部屋で暮らすことになった。元のメイド仕事に戻るだけだと笑っていた。その方が気が楽だと。
母のことは問題ない。唯一心残りなのは、弟だ。あの子も側室の子と、蔑まれるのだろう。
神殿も、あまりよい場所ではなかった。ここにも身分やら上下関係が存在して、元王子と嘲笑う者もいた。
そんな奴は心のノートに書いておく。
「いつか呪うやつ、いつか呪うやつ、いつか……」
どうも声に出ていたらしくて、それ以来そいつは私の顔を見ると、目を逸らすようになった。ノートからは消してやらぬが。
呪うより拳のほうが効率的だと気がついて、そっちに変更したけど。側室様に教えてもらってよかったわ。
*****
私は、自分で言うのもなんだけど、顔がよかったし、元王子という肩書もある。そのせいか、非常にもてた。そのせいで、男どもには嫌われていた。
そんなある時、運命の歯車がカチンと動いた。
風呂から上がったら、服が聖女用のものになっていた。
あいつか。脳内のノートをめくって、太文字に変えておく。呪う。叩く。
仕方ないけど、多分似合うから、問題ない。
問題はあった。
似合いすぎた!
その頃には、髪がかなり伸びていたこともあり、鏡の中には、風呂上がりの蒸気した肌に濡れた髪の、美しい人が写っていた。
誰これ私よ綺麗じゃない?
目覚めた。
その日から私は聖女服を着た。
怒られたけど、問題ある?似合うものを着るのは普通のことでしょ?
女子トークも楽しくて、盛り上がった。おしゃれのことや化粧も教えてもらった。
そうね、私に足りなかったものは、好きなことを楽しむことだったのね。
気持ち的に自由になったら、なぜか聖魔力も効果が倍増した。
これよ。
みんなにも勧めた。
ただし、自由には責任が伴うことを理解させた上でね。常識の範囲内で、私達は最強を目指した。
そんな中、魔王が目覚めたらしいとの連絡がきた。
国からの要望により、辺境へ支援に向かうことになった。
トップは私。兄弟を助けなくてはいけないもの。
その前に勇者召喚が行われた。
召喚の儀は、我々神殿が執り行う。流石に取り仕切ったのは、神殿長。私は、補助だけ。
やがて魔法陣から勇者が現れた。
どんな男がやってくるのかと思ったら、
「え、子供?」
「失礼ね、高校生よ」
よくわからない単語が聞こえた。それにしても、
「男の子?」
「お姉さん、ケンカ売ってる?買うよ?」
「ごめんなさいね。私もお兄さんなんだけど」
「ごめんね。私も女の子なの」
素直に謝る、小さい子。
好みすぎた。
なに可愛い、最高やばい、可愛い、持ち帰りたい。
「お持ち帰りはちょっと」
隣にいた神殿長に、こっそり止められた。
「聞こえましたか」
「おもいっきり」
私は勇者・あかりを守ると誓った。
ついでに弟も守る。
魔王なんて、さっさと眠らせて、みんなで幸せになるのよ。




