7・幽霊に出会いました
「そっか、多分あそこで死んだのね、私」
家族での食事会の後、多分私は死んだ。他の家族が巻き込まれていないとは思うけど。
「仕方ないよね。不可抗力よね」
繊維問屋の若獅子見参!の予定だったけど、まあ、仕方ない。あかりが生きていれば、それでいい。いいんだ。
「んで、そっちはそっちとして、あとは現実よね」
今は、捨てられた元貴族のぼっちゃんの自分のことだけど、これからどうやって生きていけばいいのか。
ふと、前世の自分の夢を思い出す。
手芸店、いいな。別に今でもいいよね。
「そっか、今の自分が夢を叶えてもいいんだ」
知り合いのいない土地で、手芸屋さん経営。
「え、よくね?よくね?お店やっちゃう?」
なんだか元気になってきた。
それじゃあ、情報整理。
今いる場所は、隣国の辺境領スヘルデン。
ここはまだ元婚約者の領地と隣だから、バレたら強制送還される可能性がある。それならここから離れて、なんならさらに隣の国あたりに行っても問題なし。
「冒険者登録しといてよかったわ。依頼をこなして資金も稼げて、尚且つ動く理由も作れる」
冒険者登録の名前も、本名とは別に決めておいてよかった。
「とりあえず辺境領の冒険者ギルドを目指すしかない…けど、手配書回ってる可能性はあるわよね」
と、なると、もう少し先のギルドを目指すしかない。
あとは、現在地を知りたい。狩猟小屋があるくらいだから、近くに村の一つでもあるとは思うのだけど。
「仕方ないわね、村を探して現在地確認。そこからギルドを探して進むしかない」
一応姿も少し変えたほうがいいかしら。
「…可愛い冒険者の衣装って売ってるかしら」
なければ作ればいいのよ。なんとかなるわ。
「それじゃ、休むとしますか」
奥のベッドルームに移動する。まずは自分が元気でないと何にも出来ないもんね。お休みお休み。
ぐーっ。
カタカタ…
カタカタ…
ガタガタ…
ガタガタ!!
ぐーっ
「ちょっと、なんで起きないのよ!こんなにうるさくしているのにっ!」
「やかましい…」
「ぐはっ」
あら、何か手に感触が。何かを殴った気がするんだけど。
眠い目をこすりこすり、ベッドから起き上がる。指先に炎魔法を灯して、あたりを伺った。
「なんにもないじゃない。寝よ寝よ」
ぐーっ。
「なんなの、この鈍感なやつは。普通こんな怪しげな小屋で寝泊まりなんてしないよね?仮に泊まったとしても、警戒するよね?幽霊屋敷って知らないのかしら」
ガタンガタンっ!
更に音を立てたが、起きねえ。
「お願いだから、起きてえ〜」
*****
トイレに行きたくなって起きたら、涙目の幽霊が膝の上あたりに座っていた。
「幽霊?」
「よかった、やっと起きたあ」
今までいろんなことがありすぎて、幽霊程度ではビクリとも反応しなくなっていたわ。私、思ったより強いのかも。
でも、なんで幽霊がいるの?
「普通お化けが脅かしたら、起きるもんでしょ?なのに、ずっと寝ているなんて、ひどくない?」
「はあ、すんません」
なぜかベッドの上で、正座して幽霊から説教くらってます。
解せぬ。
「ところで、幽霊さん。いろいろ聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」
怒り疲れた様子の幽霊の隙をついて、質問してみる。幽霊も言いたいことを言い尽くして、なんか薄くなりかけていたけど、はっとして存在色を戻す。
もしかして、声かけなかったら、言ってやったぜっ達成感で、成仏できたんじゃないかな。
「なによ、プライベートはオフレコなんですけど」
「芸能人か」
思わずのツッコミに、幽霊が反応する。
「え、もしかして、日本とか知ってる?」
「はあ、前世日本人ですが」
「まじーっ?」
どうやら幽霊は、お仲間だったようだ。
それからお互いの話を始めた。
まずは私の話から。どうみても私の方が話短そうだったし。
弟と婚約者に騙されて川に流されて、前世を思い出したこと。前世は車に轢かれて転生したって言ったら、
「ベタね」
って、ツッコまれた。だよね。
で、次は幽霊の話だった。
彼女の名前はリナリア。ここ、辺境伯領のスヘルデン辺境伯の娘だったという。
「そんなお姫様が、どうしてこんな狩猟小屋に化けて出てくるのよ」
彼女は寂しそうに笑った。
「私も帰りたいわ。でもなぜかここから動けないのよ」
「地縛霊か」
なぜか死んで、ここにいる。成仏も出来ない。
どうやら、話は長くなりそうだ。
「…ト、トイレ行ってきてもいいかしら」




