68・聖女様と戦うことになりました
人気がないところをご存知?と言われて、城の北側にあるリナリアの秘密基地にやってきた。
「あら。素敵なところね」
「リナリアの秘密基地です。ここから奥に進みます」
もちろんたぬきちハウスには行かない。それとは反対側の、離れたところを目指した。そこに広場があるのを知っていたから。
「ここでいいですか?」
「よろしくてよ」
中央に立ち、互いを見る。
「拳でとおっしゃいましたが、私、めちゃ弱いですよ」
「もちろん私もよ。爪が痛むじゃない」
「それではどのような対戦で?」
「それは、魔法に決まってるでしょ」
無詠唱で魔法を繰り出され、私はその場から飛ばされた。腹に一発、拳で殴られたような衝撃を受ける。
「メルヘン!」
メルヘンサークルが現れ、衝撃を緩和してくれるが、近くの木に衝突する。
「くっ……」
聖女様は、口元に笑みを浮かべたまま、再び両手に魔力を込める。
「私を守って〜。誰か助けて〜♪」
歌いながら自分でも風魔法を展開して、壁を作る。次の衝撃が即座にきて、風魔法程度では角度すら変えることができなかった。高速で動く聖女様の拳に再び飛ばされ、背中から地面に叩きつけられた。
「弱いわね。これで弟の側にいようなんて甘いわ」
「私は、友達なだけです」
「甘いわ。あの子には友達というだけで、側に居てはいけないの。あの子を守るものでなければ」
「本人の気持ちはどうなんです?」
「本当に甘いわね。友情以前の問題よ。仲良しこよしじゃ、どちらも傷つくだけの話」
再び聖女様の両手に魔力が籠る。私も痛む体を起こすけど、間に合わない。思わず両手で顔の前で防御の姿勢を作る。
だけど、衝撃は届かなかった。
「待たせたな、マスター」
そこにいたのは、キムラサンだった。
「キムラサン、たぬきちは?」
「大丈夫。『我はいい子でお留守番しておるぞ』って言ってましたぜ」
おおお、私もそれ聞きたかった。
「さて、マスターをいじめる奴は、誰かな?」
なんか、きらーんって、キムラサンが光った。
「何これ?木?」
「木です」
「ほら、キムラサン、ご挨拶して」
「はじめまして、キムラサンと申します」
キムラサンが、ぺこっとお辞儀をする。
「ご丁寧に。聖女フランソワですわ。以後よしなに」
「これはこれは、ご丁寧に。素敵な拳ですな」
「いえいえ、あなたも華麗な防御でしたわ」
ふふふと二人が笑う。
「うふふ」
「うほほほほ」
「おほほほ」
「ほっほっほ」
なんか、怖い。
二人の間に、我々凡人には見えない何かがある。
やだわ、二人の世界ね。
「それじゃあ、後は若い二人で……」
「「何勝手に離脱している」」
「はいっ……」
とりあえず、体育座りしとこ。
「素敵ね。あなた、最高だわ」
「敵に不満などありませんな。これは楽しいことになりそうだ」
そして、火蓋は切って落とされた。




