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68/82

68・聖女様と戦うことになりました

 

 人気がないところをご存知?と言われて、城の北側にあるリナリアの秘密基地にやってきた。

 

「あら。素敵なところね」

「リナリアの秘密基地です。ここから奥に進みます」

 

 もちろんたぬきちハウスには行かない。それとは反対側の、離れたところを目指した。そこに広場があるのを知っていたから。

 

「ここでいいですか?」

「よろしくてよ」

 

 中央に立ち、互いを見る。

 

「拳でとおっしゃいましたが、私、めちゃ弱いですよ」

「もちろん私もよ。爪が痛むじゃない」

「それではどのような対戦で?」

「それは、魔法に決まってるでしょ」

 

 無詠唱で魔法を繰り出され、私はその場から飛ばされた。腹に一発、拳で殴られたような衝撃を受ける。

 

「メルヘン!」

 

 メルヘンサークルが現れ、衝撃を緩和してくれるが、近くの木に衝突する。

 

「くっ……」

 

 聖女様は、口元に笑みを浮かべたまま、再び両手に魔力を込める。

 

「私を守って〜。誰か助けて〜♪」

 

 歌いながら自分でも風魔法を展開して、壁を作る。次の衝撃が即座にきて、風魔法程度では角度すら変えることができなかった。高速で動く聖女様の拳に再び飛ばされ、背中から地面に叩きつけられた。

 

「弱いわね。これで弟の側にいようなんて甘いわ」

「私は、友達なだけです」

「甘いわ。あの子には友達というだけで、側に居てはいけないの。あの子を守るものでなければ」

「本人の気持ちはどうなんです?」

「本当に甘いわね。友情以前の問題よ。仲良しこよしじゃ、どちらも傷つくだけの話」

 

 再び聖女様の両手に魔力が籠る。私も痛む体を起こすけど、間に合わない。思わず両手で顔の前で防御の姿勢を作る。

 だけど、衝撃は届かなかった。

 

「待たせたな、マスター」

 

 そこにいたのは、キムラサンだった。

 

「キムラサン、たぬきちは?」

「大丈夫。『我はいい子でお留守番しておるぞ』って言ってましたぜ」

 

 おおお、私もそれ聞きたかった。

 

「さて、マスターをいじめる奴は、誰かな?」

 

 なんか、きらーんって、キムラサンが光った。

 

「何これ?木?」

「木です」

「ほら、キムラサン、ご挨拶して」

「はじめまして、キムラサンと申します」

 

 キムラサンが、ぺこっとお辞儀をする。

 

「ご丁寧に。聖女フランソワですわ。以後よしなに」

「これはこれは、ご丁寧に。素敵な拳ですな」

「いえいえ、あなたも華麗な防御でしたわ」

 

 ふふふと二人が笑う。

 

「うふふ」

「うほほほほ」

「おほほほ」

「ほっほっほ」

 

 なんか、怖い。

 二人の間に、我々凡人には見えない何かがある。

 やだわ、二人の世界ね。

 

「それじゃあ、後は若い二人で……」

「「何勝手に離脱している」」

「はいっ……」

 

 とりあえず、体育座りしとこ。

 

「素敵ね。あなた、最高だわ」

「敵に不満などありませんな。これは楽しいことになりそうだ」

 

 そして、火蓋は切って落とされた。

 

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