67・騒動の後、お茶会に呼び出しくらいました
あの後は、思ったより大変だった。
まず、バルトルト副長は、辺境に来る数日前からの記憶がまったくなかった。
もちろん日記帳と戦った記憶もない。そこは、不幸中の幸いなんだろうけど。
だけど、部下にいろいろバレているし。
顔にも『私は胸派』って書かれていたし。それ、みんなに見られていたし。
恐らく落ち着いた頃に日記帳が夢枕に立って、状況を教えてくれると思う。がんばれ。
あと、例のバルトルトの耳から出て来たものは、いつの間にか消えてしまった。
痕跡を調べても何もわからなくて。でも、
「微かに闇魔法を感じますが。恐らく人を操るものの類いでしょう」
って、光魔法部隊の女性が話していた。記憶喪失の時期からいくと、恐らく王都で襲われたのでは、と。
「絶対、胸派のタイプの女性ですよね」
「間違いないな」
「副長がそういった女性と会っていたか、本部に確認するんだ」
まあ、確かに副長ともあろうお人を襲うなら、その人の弱点を調べるのはセオリーよね。まあ、がんば?。
でもあいつ、弱みが拡散されまくって、もう王都に帰れないかもね。
あと、リナリアは、メルヘン魔法で元に戻ることが出来た。
「ほんっと、エミの魔法がなかったら、どうなっていたかわからないわ」
「無事でよかったわね」
「あいつの光の檻に入れられた途端に、魔力が吸い取られたのよ。このままじゃ危ないって思っていたら、子供に戻ったの」
「セーフモードみたいなものかしらね」
とにかく無事でよかった。
カップご夫妻は、辺境伯家で普通に使用されている。
本当は保管するかって話になったんだけど、本人達の希望で普通に使用されている。
時々お茶会の話に混ざってくるらしいけど。
これで一件落着ね。
そう思っていたこともありました。……聖女様に呼び出しくらうまでは。
「お呼びいただき、光栄に存じます」
聖女様からお茶会に呼ばれた。私だけ。まあ、聖女様と言っても男性だから、二人っきりになっても問題ないし。
ただ、なぜか蛇に睨まれたカエル気分になるのよね。なんか、目が怖いのよ。笑っているけど、目は、ターゲットロックオンというか。私、なんかしたっけ?
世間話をして、お茶を飲んで。それから徐に聖女様が、
「あなたのスキル、不思議ね」
と、本題に入られた。多分これが聞きたかったことだろう。
「あなた、何者?」
「私は……」
「弟からある程度は聞いているわ。エミール・ガーデン伯爵令息。前世持ちで、勇者の兄だと。でもね、それだけじゃない。魔王が現れたこの時に、不思議なスキルを持った者が現れた。しかも、勇者の関係者ときている。
君は、何者だ?」
何と答えればいいのだろう。だって、私は私だ。
「正直にお答えしますが、私は私です。何か策略がある訳でもない。ただ死にかけて、前世の記憶を戻して。それで、自分に正直に自由に生きようと思っただけです。
たまたま妹に会ってあの子を守りたいと思い、ここにいるだけです」
「私はね、弟が大切なの。あの子を守りたいのよ。あなたが妹を守るのと同じ」
「わかります」
「だからね。弟の側にいるあなたが、本当に信頼できる人間なのか、確認したいのよ」
「どうすれば、信じて貰えるのでしょうか」
聖女様が立ち上がり、窓辺に進む。窓の外を見て眩しそうに目を細める。
「そうね」
振り返り、私を見つめる。
「私、こう見えて、簡単なのよ」
「それはどういう……」
聖女様はにっこり笑うと、
「拳で語り合うのが一番だと思うの」
とても恐ろしい提案をしてきた。
マジ?




