63・呪い(仮)を取り出しました
「こういう時は、やっぱりメルヘン魔法よね」
ポンと手を叩いてリズムをとった。
「怖いものがいるのよ〜♬助けてほしいのよ〜♬」
「「「助けて〜♪」」」
妖精さん達が現れて、コーラスに加わった。
「耳の中の虫取って〜♪」
「なんだか気持ち悪い歌だな」
デレクが一歩引いた。わかる。私も気持ち悪い。
すると、私の前に光の円が現れた。直径50センチくらいかしら。
ズゴゴゴと音がして、そこから出てきたのは。
「こんにちは、鶴です」
「……鶴ね」
「見たことない生き物だな。鳥の仲間か?」
鶴も異世界の生き物なのね。
「鶴さんが、アレと戦ってくれるの?」
「お安いご用です」
鶴がペコリと頭を下げた。そしてバルトルトを睨む。
「ほほう、そんなところに隠れているのか」
「なんだこの生き物は。なぜ私を睨む」
バルトルトさん、今年、厄年かもね。
鶴はズイズイとバルトルトに近づくと、ばっと羽を広げた。バルトルトはびくっと反応したけど、立ち上がることはなかった。あれ多分、足が痺れて動けないやつ。
「く、来るな!あうっ、足が、足が痺れて、うおっ!」
鶴は羽を手のように使ってバルトルトの頭をがしっと掴むと、耳の中に嘴をつっこんだ。
「うおおおおあ!」
たまらずバルトルトが叫ぶけど、皆彼を見たまま固まっていた。
何故なら、鶴が嘴で取り出したものがいたから。
「何これ」
「生き物か?」
「虫みたいだけど、微かに闇の魔力を感じるわ」
光魔法部隊の皆さんが恐々鶴に近づいて、嘴に挟まれてぴちぴちしている、細長い生き物を観察している。
それは黒くて長いモノだった。端に二つの光るものがあるけど、恐らく目ね。ドジョウっぽいけど、まさかそれで鶴が出た?
ワンコが光魔法を展開して檻を作った。鶴がその中に嘴を突っ込んで離すと、謎の生き物は檻に囚われた状態になった。
「鶴さん、ありがとう」
「いえいえ、言い忘れていましたが、決して見ないで下さいね」
「もう手遅れ」
「私は助けてもらった鶴です」
「順番いろいろ違いすぎてる」
「それでは、ボンジュール!」
いろいろツッコミどころ満載だが、鶴は光の円の中に消えていった。
「ところであのドジョウみたいなやつ、あれは何かしら」
ボソっと呟くと、光の円の中から手紙が出てきた。
『鶴です。さきほどのドジョ……もとい、アレは、スキルで作られたものです。生き物ではありません。言い忘れていました。テヘペロ』
読むと手紙は羽になって、消えた。
「演出は凝っているのにねえ」
「いろいろ残念な鶴でしたな」
伝言妖精にもツッコまれている。
それにしても、これが固有スキル?
アレを取り除いたバルトルトは意識を失っていた。だけど、誰も助け起こそうとはしなかった。
やっぱ厄年に違いない。




