58・光魔法部隊に呼び出しくらいました
翌日のこと。今日も元気に洗濯物を運んでいる時に、見知らぬ騎士から声をかけられた。
「お前がエミという者か?」
「そうだけど、どちら様?」
この服は、確か光魔法部隊の人よね。
「洗濯物かしら。持っていくわよ。用意してくれる?」
「それはありがたい……んじゃなくて」
ノリは悪くない人ね。
「我が隊の副長がお呼びだ。一緒に来てもらおう」
「そんなに洗濯物ためてるの?」
「そうなんすよ、うちの副長ったら……んじゃなくてー」
「ノリが絶好調ね」
「いやいやいや」
お互いはっはっはと、笑って解散した。
「いや、待って!お願い!」
後ろから呼ばれてるけど、無視していいかな。周りも振り返るほど呼ばれるから、仕方なく振り向いた。
先ほどの騎士さん、嬉しそうに寄ってくる。なんか、ワンコっぽいわね。可哀想だから、ついていってあげますか。
一緒にいた洗濯室仲間には申し訳ないけど、後を託して私は騎士さんについていった。
光魔法部隊御一行様の宿泊先と思われる建物に到着した。
だけどその前で、光魔法部隊の人達と辺境伯領の騎士さん達が、なんか揉めてた。連携うまくいっていないって聞いてはいたけど、大丈夫かしら。
そちらを遠巻きに見て、我々は建物に入った。奥の部屋に案内される。
「失礼します。例の方をお連れしました」
「入れ」
例の方って誰よ。変な噂されているのかしら。
「失礼しまーす」
ワンコの後に続いて入る。
そこには、光魔法部隊の方が5人ほどいた。全員が私を睨んでいる。
部屋を見回すと、奥に大きな布が見えた。何かのカバーのようね。洗濯物かしら。
「洗濯物をいただきにきましたー」
「おお、頼むわ。って、違うから」
「んじゃ、失礼しまーす」
「ご苦労さーん。って、待てよ」
この流れで抜けようと思ったけど、ダメか。
「お前がエミという者か」
一人だけ、ノリの悪そうな男が私に圧をかけてくる。真ん中に立っていた奴だ。腕を組んで顎を上に向けて、私を睨んでいる。
「そうですが、何かご用ですか」
一応冷静に答えてみた。
「私は光魔法部隊の副長、バルトルト・ヤーン。ヤーン伯爵家のものだ」
「はあ」
ヤーン伯爵家っていえば、光魔法で有名なとこよね。
ここは『よっ、お噂はかねがね』とか持ち上げたほうがいいのかしら。なんて考えているうちに、話が進んだ。
「お前、変わった固有スキルがあるようだな。死者を使うとか。死人使いか?」
「いいえ、特殊すぎて説明できないのですが」
「まあいい。お前、その力で、死人の軍隊を作れ」
「は?」
「なんでも、遠くの者とも会話が出来るのだろう?それを使うのだ」
なんでこの人、知っているの?まあいい。
「申し訳ございません。私は死人使いではありません。ですからお役には立てないかと」
「嘘をつくな。リナリアとかいう娘は、死者だと聞いた。空を飛び、瞬時に会話が出来る。そのような死人を使う者など聞いたことがない。私の元で働けることを幸いと思え」
「ですから、それは不可能でございます。私の固有スキルは特殊すぎて、どのようになるのかわかりません。ですから……」
「うるさい」
急に頬を叩かれた。軽く当てた程度に見えたが、そのまま床に倒された。魔力で増強してあったようだ。
「私の命に従え。魔王討伐の為に、力を貸すのは当然であろう?」
「お断りします」
「何だと?」
こいつの仲間も、はあ?って顔で睨んできた。
「私は死人使いではありません。洗濯室で縫い物をしているただの手芸好きです」
「つべこべ言うな!お前は私の言うことに、従っていればいいんだっ!」
親みたいなこと言ってるわね。ふいに父親のことを思い出したわ。まあ、関係ないけど。
「洗濯物がなければ、失礼します」
立ち上がって後ろを向いた途端に、私の足元にカップが投げつけられた。大きな音をたてて半分に割れてしまった。もったいない。
仕方なく、ゆっくり振り返った。
「平民風情が。我々は魔王討伐のために戦う、国の誇りだ。それをなんだと思っている」
こんなバカに権力持たせたの誰よ。見えるようにわざと大きく溜息をつく。
「それなら、あんたは、汚れた服で一生過ごしなさいよ」
「なんだと?」
「お腹空いても、自分でご飯作りなさいよ。汚れた部屋で過ごしなさいよ。割れたカップも自分で片付けなさいよ」
「おい、やめとけ」
小声でワンコが止めてくれるけど、止まらなくてごめんなさいね。
「あんた一人で戦えるわけないでしょ。もちろん騎士も魔法使いも、聖女だって必要だわ。だけど、掃除のおばちゃんや、コックのおっちゃんも、洗濯室のお嬢さん達も、みんな必要なのよ!」
びしっと、指を刺す。
「それと、そもそも討伐じゃないわよ。魔王は眠らせるものなの。殺すためじゃないのよ!そんなことも知らないで、のこのこ来てんじゃないわよ!」
「……遺言はそれだけか?」
あ、やばい。温度が下がった。
前方にいた四人とワンコが横に逃げた。逃げるの早いけど、それ上司のブチ切れに慣れてますってことよね。
だったら、止め方学んでおいてよ~。




