57・光魔法部隊に目をつけられました、リナリアが。
聖女様の噂はすぐに広まった。
「え、あのお綺麗なお方が?」
「お会いしたけど、優しいお方だったわ。私の母の持病を診てくださったの」
「我々下の者にも親切にしてくださる。でも、あれが、男なんか?」
「光魔法って、何でも出来るんだな」
そういうことじゃないと思う。
全員心の中でつっこんだ。
洗濯物を届けに行く途中で、治癒施設の側を通った。
今までも勿論辺境伯領には治癒魔法士は大勢いたけど、なんて言うのかしら、色が変わった?
「はい、これで大丈夫ですよ」
「聖女様、ありがとうございます〜♬」
見えないけど、ハートマークが飛び交っている気がする。
聖女様が大勢来て、辺境の色が鮮やかになったわ。
「私も手芸で辺境を色鮮やかにしたかったけど、まだまだね」
「いいえ、エミ様が来られて、楽しくなりましたよ」
一緒に洗濯物を運んでいた、洗濯室仲間が慰めてくれた。
「そう言ってくれて、嬉しいわ。ありがとうみなさん」
「……今日のエミさん優先権、当選してよかった」
「何か言った?」
「いえいえ。ささ、早く行きましょう。終わったらおやつ時間ですよ」
「そうね。今日のおやつは何かしら」
きゃいきゃい話しながらその場を通り過ぎた。その姿を、1人の聖女様が見ていたとも知らずに。
光魔法部隊は治癒も得意だけど、一番の仕事は魔物討伐だ。彼らは辺境伯領の騎士達と連携して魔物を狩る。その連携なんだけど、どうもうまくいってないみたい。
仕事上がりの、たぬきちとの癒しタイムの最中に、リナリアがやってきた。
なお、床と屋根は完成済み、おまけにソファとクッションも完成している。もちろんクッションは私作よ。キムラサン、若干やつれたかも。
「やほー、エミー、たぬきちー、キムラサンー」
「リナリア、目が死んでるわよ」
「うん、自分死んでるー」
「大丈夫っすか?」
「ほら、木に同情されてるわよ。人生の危機よ」
リナリアがムンクの叫びそのままの顔で、ヘロヘロ飛んでやってきたのだ。
「……クッキー、食べるか?」
「たぬきちい〜」
「タヌキに同情されるって……」
たぬきちを抱っこして、リナリアが充電している。わかるわ。タヌキはチャージ可能よね。
「で、何があったの?」
「光魔法部隊、ムカつく」
「除霊されそうになった?」
「当たり」
「……冗談のつもりだったんだけど、マジ?」
「そうよー。私一応、辺境伯の娘よ?それを『お前は悪霊になる』とか言って、光魔法を当てようとするのよ?エミが私を変化させていなかったら、どうなっていたかわからないわ」
問答無用で攻撃するなんて。それを見て、辺境伯領の騎士さん達も怒ったらしい。
「なんか自分達が偉いんだぞーオーラ出まくりなのよね、あいつら」
「近寄らないほうが無難ね」
「それ、お父様にも言われたわ」
リナリアの家族にしてみれば、ようやく会えた娘なのだ。それを後から来た奴に、簡単に消されてたまるかと思うのだろう。
だけど、魔王の件があるから、仲違いするわけにもいかないし。
「しばらくは、洗濯室にいたらどう?」
「お兄様にも同じこと言われたわ」
「それか、たぬきちと仲良くしてたら?」
「それも、違う意味で昇天しそう」
確かに、こんなに可愛いたぬきちとずっと一緒にいたら、天国へダッシュしちゃうわ。
「我、可愛い?」
たぬきちが、潤んだひとみで上目遣いという技を放った。
はううう。
リナリアと一緒に、昇天しそうになった。




