54・キムラサンに重大任務を言い渡しました
ツンツンと、誰かが私の頬を突いている。
それに気がついて、目を開けると、たぬきちが私の顔を覗きこんでいた。
何これ、ご褒美?
「私、最近苦労していたから、天からご褒美がきたのね」
「いや、違うから」
タヌキに突っ込まれるという、スペシャル付きね。
「いい加減起きなさいよ」
リナリアからも呼ばれては、起きないとダメね。
「いい夢見たわ〜」
「私より、エミの方が昇天しそうになってるわよ」
「人間、癒しは大切よね」
「伝言妖精、正しかったわ。『エミさんは、可愛いが敵』って」
そういえば言ってたわね、伝言妖精さん。
「気をつけるわ、多分」
「「これ、無理だな」」
そんなに死にそうな顔しているのかしら。
「さて、それじゃあ、キムラサンに重大任務を与えるわ」
ようやく起き上がって、まずは大事なことを始めるわ。
「はいっ、なんすか?」
キムラサンがびしっと、キメる。その前に3回くらい回っていたけど。
「まずは、たぬきちのベッド作りからね」
「お任せー」
「本人サイズでね。こんな箱はぺっしなさい!」
「おーっす」
「後は床と屋根も作るのよ!バックダンサー増員していいから!」
「きゃっほー!」
「どさくさに紛れて、面倒臭いこと承認したわね」
リナリアの予言は的中しない、多分しない……。よね?
「まあいいわ。後悔は後でする。その時、泣く」
「録音しておきてえ」
「とにかく」
たぬきちの方を向く。彼はキムラサンが作った箱の上で伸びていた。
かわええ。
「クッションも用意しなくちゃ」
創作意欲が半端ない。萌え、じゃなかった。燃えるわ。煮えたぎるわ。
「キムラサン。たぬきち隠してたの、暴露してごめんね」
「わかってくれて、嬉しいっす」
なんかリナリアが懺悔しているけど、何故かしら。
「さて、やることが決まったから戻らないと。キムラサン、たぬきちのこと頼むわよ」
「お任せあーれ」
キムラサンがターンしてキメ顔作った。ま、いーか。
「たぬきち、しばらく留守にするけど、いい子でお留守番しててね」
「我はいつも良い子ぞ?」
「ぐはっ。そ、そうね。いつも良い子よ」
たぬきちを抱き上げて、頭を撫でた。たぬきちの顔を、自分の胸にあてる。
「本当に良い子。ゆっくり休むのよ」
「我は、眠ってもよいのか?」
「うん、おやすみ。いい夢見るのよ」
たぬきちは、ゆっくり目を閉じた。しばらく彼の背をそっと撫で続けた。少しすると、背がゆっくりと上下し始める。眠ったようだ。
「おやすみ、たぬきち」
「しまった、布団がない」
「どどどうしよう」
「そうだ、マジックバッグに」
たぬきちを抱っこしたまま、ピアスに片手を添える。すると、下に私の上着が落ちた。
それでたぬきちを包んで、キムラサンに渡した。
「守ってあげてね」
「がってん」




