53・ペットがしゃべりました
ふいに、声が聞こえた。
「誰?」
「我はここぞ」
声の方を伺う。それは、箱の中から聞こえてきた。
「まさか、動物が喋るなんて」
「木も喋るではないか」
「あ、そっか」
「そこで納得するんかい」
動物にツッコまれた。
「箱、開けても逃げない?」
「逃げぬ」
箱を下に下ろして、蓋をゆっくり開けた。動物の姿がはっきり見えた。
それは。
「タヌキ」
「「タヌキ」」
もう一度言った。今度はリナリアとハモった。
タヌキだわ、タヌキだわ、確か異世界にはタヌキがいないって話だったけど、タヌキがいるわ。
「エミ落ち着いて」
「ごめん、全部声出してた。わかってる、興奮してる」
「我はタヌキでは……」
「いやん、可愛い〜!」
思わず抱っこして頬擦りしてしまった。うぷとか、うぬぬぬぬとかいろいろ声が聞こえたけど、なんか耳から素通りしていったわ。
「哀れなタヌキね」
「そう思うなら助けるのだ!」
「エミ、窒息するって」
「はっ、しまった」
タヌキが私の腕の中でピクピクしていた。
「だから、隠したんす……」
「キムラサン、判断正しかったわね」
キムラサンとリナリアがわかり合っていた。
「んもー、可愛い、サイコー。あんたの名前は、たぬきちね」
「たぬきち?」
タヌキが目をパチパチする。その仕草も可愛すぎる。
「そう、たぬきち。可愛い名前でしょ?」
「判断基準がわからぬ」
「んもー、賢いんだからあ〜」
頬をツンツンする。
「やめい、我はのう……」
「あ、タヌキって何食べるのかしら」
「雑食じゃないの?」
「私、お菓子持ってたわ。食べる?」
マジックバッグからお菓子を取り出した。昨日のおやつのクッキーだ。
「……食べる」
タヌキは器用に両手でクッキーをつかむと、口に含んだ。
「うまい……」
「よかったあ〜」
たぬきちは、うまうまとクッキーを食べた。
仕草が可愛すぎて、倒れそう。
「ダメだわ、可愛すぎて、どうにかなりそう」
「そうか?それなら、我が可愛いと皆、倒れるのか?」
「もちのロンよ〜」
「そうか……。それでは、これでどうだ?」
たぬきちが上目遣いで私を見た。
「うきゅんっ」
意識が飛んだ。




