51・キムラサンの家にお邪魔しました
ここで悩んでも仕方ない。私は扉をノックした。
「キムラサン、いるんでしょ?」
「開けなさいよ。犯人はもうわかっているんだからね」
だが、返事はない。
「おかしいわね、キムラサンなら、ホイホイおいらの隠れ家〜♬とか言って出てきそうなものなのに」
「そうよね、見つかっちゃった、テヘペロくらい言いそうなのに」
辺りは静まり返っていた。
しょうがないから、再度ノックする。
「開けないと、怒るわよ」
「……留守です」
中から返事が聞こえた。声が裏返っていたけど、誰か即わかるけど。
「わかりやすい留守ね」
リナリアがツッコむ。
「んもー、開けなさいよ」
ドアノブをひねったら、ドアが開いた。
「開いてるじゃない。入るわよ」
「エミ、慎重にね」
え、いきなりリナリアに手を掴まれた。
「どうして?」
「ドラマとかだと、こういう時に相手から襲われるものじゃない?ナイフが飛んでくるとか」
「そうね」
そーっと扉を開けた。外に向けて開くタイプだったから、完全に開ききってから中を覗いた。
小屋の内部には何もなかった。というか。
「何これ」
辺りを見回す。
小屋は一部屋のみ。窓なし、床なし。外見のみ。おまけに屋根もなかった。つまり、床は地面。
そして部屋の内部には、木が一本。
「地面にそのまま家の側があるだけってこと?」
「わー、家の中に、木があるー」
思わず棒読みで木を睨む。
「木のフリしてもダメよ」
「いや、木だし」
木が、びくっと震えた。
中に入って、木の側面に回り込む。斜め上を見て口笛吹きつつ、冷や汗が滝のように流れるキムラサンを見る。
「何勝手に家作っているのよ。材木どうしたのよ。仲間を切り倒したの?」
「オイラの枝で作ったのさ……」
「キムラサンの枝って、頭の枝木のこと?細いから無理じゃないの?」
「そんなのオイラのパワーでニョキニョキ伸ばしてフンフン膨らませれば……」
キムラサンがボディビルダーのように両方の腕木で力瘤を作ると、腕木がどんどん膨れ上がった。
キムラサンがふんっと気合いを入れると、腕木がスパッと下に落ちる。
「キムラサンの両手がっ!」
「あ、即生えてきた」
「めちゃ細いけど」
再びキムラサンがボディビルダーポーズをとると、細かった腕木が元に戻っていった。
そして、先ほど落とした自分の木を、今度は空手よろしく、手でスパッと縦に切る。
それを繰り返して、簡単に板を作りだした。
「なるほど、そうやって板を作って、家を建てたと」
「さっきの看板もそれね」
「まさに自給自足」
………。
「メルヘン魔法すごいな。私が何もしなくても、家が出来てる」
「そこかい」
脳内に前世見た、家を建てる系の番組の音楽が流れてきた。ちなみに複数流れている。セリフも聞こえる。自主規制。
「キムラサンが凄いのはわかったけど。自給自足で家建てても、怒らないわよ。他に何を隠しているのよ」
「そ、それは…」
雨にうたれようとかまわない奴が建物を作る。屋根ないけど。
そんな不審極まりない行動をするということは。
「何を隠したいのかしら」
「ドキ」
「隠したいものがあるから小屋作ったんじゃないの?」
「ドキドキ」
「今なら怒らないから、白状しなさい。でないと」
「で、でないと?」
「メルヘン魔法、解約するわよ」




