50・キムラサンを探しました
めっちゃ驚いた。まさか上空のリナリアと電話出来るなんて。
ちなみに受話器は、妖精が光の中に投げ込んで収納していた。ワイルドね。
「てっきり妖精さん達が、テレパシーで私達の会話を、伝言してくれるのかと思っていたわよ」
「何それ、めんどくさー」
あ、妖精の目が冷たい。
「まあ、確かにスマホがいいなあって、思っていたけどね」
もう1人の妖精と共に、リナリアが戻ってきた。表情は『満面笑み』そのままで。
「これ、すごいわ!これなら、下にいる仲間に連絡できるわ!」
「「毎度あり〜」」
妖精姉妹が、ニヤっと笑ったんだけど、なんか、その顔……。
「何かしら、背筋が怖いというか」
「何かしら〜、ありがとって言っただけ〜♩」
「だけ〜♬」
ま、いっか。
「支払いは、テオのツケでね」
「もちのロンですう〜♬」
テオ、ごめん。出世払いは、無理だわ。なるべくお金は貯めて、手芸に使いたいの。
いつか、テオに土下座しとこ。
「それじゃあ、早速キムラサンを探しますか」
「もうキムラサンは森へ行ったの?」
「そうなのよ、今朝も早くにね」
最近のキムラサンは、夜明けと共に出掛けてしまう。
夕方には帰ってきて、普通に他の木と一緒に立っているから、知らない人が見て、時々悲鳴が上がっている。
薄暗い森の中に、パンイチの木(顔付き)が混ざっているのは怖い。その悲鳴でキムラサンの帰宅を知る毎日なんだけど。まいっか。
「普通なら、そこで踊って誤魔化すくらいなのにね」
「それはそれで嫌だけどな」
そこは本人に聞くしかないわね。
「さて、妖精さん。最近のキムラサンの様子、知ってる?」
すると、今までずっと出番がなくて、私の頭の上で寝ていた伝言妖精が起きた。
「キムラサンのこと、知ってますがな」
「毎日どこに行ってるかも知ってるの?」
「もちのロンですわ〜♬」
「……もしかして、案内も出来るとか?」
「もちのロンですわ〜♬」
私とリナリアが、目をあわせる。
「「尾行作戦、いらなかったんじゃね?」」
2人でその場に座り込んだ。そんな私達の上を、楽しそうに妖精達が飛び回っていた。
少々反省会を開いた後で、私達は伝言妖精に、キムラサンのところへ案内してもらった。
リナリアの秘密基地のある北の森の奥に、毎日キムラサンが向かっているとのこと。私達もそちらに向かった。
森の中に入った途端、早速怪しい物を見つけた。
「何これ?」
「怪しい……」
そこにあったものは、看板だった。
『立入禁止』
「……日本語なんだけど」
「しかも裏に『キムラサンより』って書いてあるわよ」
誰が作ったものかは、聞かなくてもわかる。
看板を無視してそのまま進む。更に看板を発見して、そのまま進む。
「これ、道標じゃないわよね?」
「わざと誘い込んでいるとしか思えないんだけど?」
看板の文字は『立入禁止』『入るな危険』『引き返すなら今だ』『出口はあちら』『また来てね』『ご利用ありがとうございました』。
「段々温泉地の帰り道に思えてきたんだけど」
『高速道路はこちら』あたりを過ぎたところで、少し広い場所に出た。そこには、以前リナリアが囚われていたのと同じような、狩猟小屋らしきものがあった。
「こんなところに小屋なんてなかったはずよ」
地元民リナリアが唸る。
「わかったわ、犯人はこの中ね!」
びしっと小屋を指差し、ドヤる。
「いや、言わなくてもわかるって」
「なんでよ?」
私は小屋の扉を指差す。そこにあったものは、表札だった。
『キムラサン』
おまえ、家建てたんかい。




