5・逃げ道を尋ねました
なんとか健気に頑張って進んでいたけど、もう日が暮れる。
疲れもピークなう。やばいわ。どこかで休まないと。
…メルヘンでなんとかなるかしら。
「メルヘン」
光の輪が私を中心に広がっていく。
「誰か、休憩するとこ、知らない?」
誰にっていうわけじゃなく、ぼそっと言ってみた。すると、私の周りがキラキラ光って、その光が小さな人の姿になっていく。
「妖精?」
小さな妖精が私の周りに複数飛んでいた。その妖精が指を指し示したのは、右側。
「あっちに、狩猟小屋があるよ」あるよ」あるよ♫」
囁くような小声が複数聞こえる。なんか怖いな。
「わかったわ、行ってみる。ありがとねー」
妖精達はふわりと上空へ飛び去っていった。
「さて、右ね」
曲がる私の上空に、囁く声が。
「オンボロ小屋だけど」
「村人が来ないとこだけど」
「お化けが出るから、誰も来ないけど」
後日思ったんだけど、大事なことは、早めに言ってよねーっ!
そのまま10分程度進んだところで、小屋を見つけた。かなり古いけど、これ誰か使っているのかしら。
恐る恐る扉を開ける。鍵はかかっていなかった。
「お邪魔しまーす」
扉を開けた途端、ムッとした空気が押し寄せてくる。
「うわ、これ、誰も使ってないんじゃない?空気悪すぎ」
扉を全開にして、風魔法で空気を外に逃す。中に入って窓も開ける。もちろんガラスなんてものはないから、後で締めないと。
窓を開けたら、部屋が明るくなって、中の様子も見えた。中にはテーブルと椅子、奥には棚があって、暖炉も見える。調理用具とかは見えない。当然ごはんはないわねえ。
だけど、思ったよりは、中は壊れていなかった。
「今晩は休めそうね」
生活魔法で小屋全体を掃除しながら、内部を確認する。
全ての窓や出入口の扉は、内側から施錠可能。木製の差し込むタイプの鍵だけど、とりあえずこれで、一安心ね。
奥の部屋は狭いけど、ベッドルームもあった。布団に向かって「ダニ死ね」と、全力で生活魔法を送る。
ある程度きれいになったところでリビングに戻って、椅子に腰掛けた。どっと疲れが出てきたわ。
「はああああ、なんだか長い1日だったわ」
水魔法で水を出して喉を潤す。生活魔法で自分も綺麗にする。
「お風呂入りたいわあ。でも当分我慢ね」
先ほど捕縛されたときに、剣やら荷物は全て奪われていた。だが、ピアスは奪われなかったことに安堵する。
「よかった、ピアス盗られなくて」
ピアスに軽く指で触れると、テーブルの上に袋が現れた。
これ、ピアス型のマジックバックなのよね。最新式で、友人が作ったものなんだけど。念のため用意しておいて、ホントよかったわ。
袋の中には、食料が入っている。ロウソクも。火魔法を使い、ロウソクで部屋を照らした。
非常食を出して、もそもそ食べる。コップも取り出して、火魔法と水魔法でお湯を作ってそそぐ。白湯だけど、仕方ない。
食後、マジックバックから、他のものを取り出す。
「とりあえず違う服に着替えないとね。ホント準備は大事ね」
私は長男だが、いつかは追い出されると思っていた。だから、コッソリと冒険者登録を済ませていた。ランクは低いが、一応経験値はある。
私は冒険者として活動するときの服装に着替えた。
武器の剣もある。とりあえずテーブルに乗せた。敵がここに来るとも限らないし。
「…眠る前に情報を整理するかしらね」
今日これまでのこと、これからのことを考える。
私は殺されそうになった。メルヘン魔法のおかげで助かったけど、逃げたほうがいい。
「領地に戻る必要はないわね」
恐らくすでに私が死んだものとして動いているだろう。領地の仲間や友達のことが脳裏をよぎる。それ意外は未練もないけど。それなら新しい人生を歩むのが正しい判断よね。
「前世の記憶もあるし、やりたかったこと、また出来るのよね…」
前世で、自分が死んだときのことを思い出した。
ああ、家族のみんなはどうなったんだろう。




