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48/81

48・キムラサンが怪しい


 あれからあかりは、野球の特訓をはじめた。特訓というと、ものすごく力強いイメージだが、これは違う。

 いかにゆるーくボールを投げるかだ。


 初めてボールを投げた時の被害は、的と木が3本だった。試しに全力で投げてみたらと言ったら、みんなにドン引きされた。

 いつか誰もいないところで、こっそりやってもらおうと企んではいるけどね。

 

 

 あかりが特訓をしている間、始めは付き添っていたけど、考えてみたら私、特にやることないのよね。なので、洗濯室に戻ることにした。

 

「ひかりちゃんから、手芸を奪う真似はしないって。……怖いし」

 

 空気を読んだあかりの提案で、私は手芸を再開した。

 

 洗濯室のメンバーと、パッチワーク講習会をやったり、繕い物の仕事をしたり。

 

 その合間に、一度朝会で私の事情を説明した。もちろん、あかりがいない時に。

 前世の兄であること。つまり、向こうの世界で死んでいること、それをあかりが知らないことを。

 辺境の漢どもが、号泣した。

 

「「「任せろっ!お前の妹は、オレ達が守ってやるっ!!」」」

 

 頼もしい言葉に、私も泣いてしまった。みんな、ありがとう。

 

 その時にリナリアにも事情を説明した。

 彼女は今、幽霊の偵察隊として、皆と訓練している。 その際の服装は、冒険者風にチェンジしてある。ようするに、高度飛行可バージョンなのだ。

 

「私も役に立つわよー」

 

 と、かなり気合が入っている。お互い、忙しいのね。

 

 

 そんな毎日を送っていて、ふと、気がついたことがある。

 

 ……キムラサンが、怪しい。

 あいつが、大人しい。朝、ふらっと出掛けて、夕方ふらっと帰ってくる。

 

「何してたの?」

 

 って聞いても、笑顔で答えない。

 以前出掛けていたのは、バックダンサーを増やす為だと思っていたけど、まさか他にも何かしている?

 

 無茶苦茶怪しい。

 

 なので、リナリアに相談した。結論として、尾行することになった。

 

「忙しいのにごめんね」

「いいのよ。というか、あいつが何かしていると思うと、訓練に身が入らない」

「私も」

 

 リナリアが上空から、キムラサンを尾行する。そして、到着した場所を、上空から戻ったリナリアに教えてもらう。そこへ突撃する。

 そういう計画を立てていたのだけれど、失敗した。

 

「キムラサンが森に入ったら、どこにいるのかわからないっ!」

 

 当たり前だった。

 

「あいつ、木だった。忘れてたわ」

「上から見たら、全部キムラサンやんけ」

 

 2人で膝から崩れ落ちた。

 

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