43・二人でまったりお茶をしました
芸術的な水魔法教えてどうするんだって、自分ツッコミが脳内で炸裂しているわ。
「教えるって、難しいわね。手芸だったら簡単なのに」
「ひかりちゃん、それしかやってないじゃん」
否定は出来ない。
そういえば、あかりに聞きたいことがあったわ。
「ねえ、あかりも固有スキルあるのよね」
「うん。持ってる」
「みんなそれを聞いても、理解できなかったって聞いたわ。日本語なのかしら」
さっきから少しずつ、あかりの顔の角度が斜め後ろに向き始めている。
「何、目をそらしているのよ」
あかりは全速で後ろを向いた。
「だって、変なスキルなんだもん」
「勇者様のスキルよ?それで魔王を眠らせることが出来るんじゃないの?」
「そんなことに使えるとは、絶対思えない……」
あかりがしゃがみ込んで、そこらにあった木の棒を掴んで、地面になんか描き始めた。そういえば、あかりは画伯級変な絵王だったわ。
「拗ねてないで、教えてちょうだい。固有スキルを強化して、早く家に帰りましょう」
あかりの手が止まる。ゆっくりこっちを向いたその目は、潤んだままだ。
「なんかさ、ずっと我慢していたけど、ひかりちゃんに会ったら涙腺緩みっぱなしで、困っちゃうよ」
「うん、そうだよね。急がせてごめん」
私もしゃがみ込んであかりを抱きしめた。しばらく鳴き声が聞こえた。
そっとハンカチを渡すと、盛大に鼻をかんだ。どうやら少し落ち着いたようだ。
「毎日詰め込んでもしょうがないよね。今日は話しましょ」
「いいの?」
ルカスが側に寄ってきた。
「そうですね。今日は休みましょう。彼と話してみてください」
「ありがとうございます、王子」
一応人前だから、礼儀正しく挨拶してみる。ルカスは苦笑いを浮かべて、建物の方へ戻っていった。デレクや、他の従者も続く。
そこに残ったのは、私達だけだった。
「お茶、飲む?」
「うん」
マジックバッグから茶葉を取り出す。魔法でお湯の玉を宙に浮かべて、そこに茶葉を入れた。
「考えたら、すぐに飲むならポットも不要よね」
「意外と繊細そうで大胆だよね、ひかりちゃんは」
お茶の成分が出たところで、2人のコップに注いだ。もちろん、茶葉はいれませーん。
「魔法を覚えると、こういう細かい芸当もできるのよ」
「ひかりちゃんの場合、できることすごく偏りがありそうだよね」
「わかる?」
茶葉は特製ブレンド。あ、伝言妖精さんに、NEWレシピ聞き忘れてたわ。
「これ、おいしい」
「よかったわ。私と友達でブレンドしたのよ」
「そっか、こっちにも、友達できたんだ」
「うん、そう」
それからしばらく、お互い何も言わずにお茶を飲んだ。
鳥の声が聞こえる。
穏やかな風が2人の髪をゆらす。
時折木々も揺らして。
遠くから、騎士達の練習する唸り声が聞こえる。
目の前を踊りながら、キムラサンが通り過ぎる。
「何あれ」
「一応知り合い……」
「ああ……そうなんだ……」
「後で紹介するわ」
「いやー……」
ここで、まったりは不可能だった。
*****
「そうね、まずは私の固有スキルを教えるわ」
まずは、自分からよね。
「固有スキルって、みんな持っているって聞いたんだけど」
「そうよ。通常基本的な火風水土の魔法は、ほぼ全員使えるの。それ以外に特殊なスキルが使えるってこと」
「ガチャみたい」
「そうね、当たりハズレはあると思う」
私のはレアよね。レアと言うより変?まあいいか。
「それで、私の固有スキルは、ズバリ『メルヘン』よ!」
「何それ、だっさ」
「ちなみにさっきの踊る木は、この魔法のおかげよ」
「何それ、こわっ」
本人が少し思っていたことを、身内に抉るように言われると、傷つくよね。
私はさっきあかりが使っていた木の棒を持って、しゃがんだ。スネスネ。イジイジ。
「ひかりちゃん、拗ねるのいいけど、隣にさっきのやつ来てるよ」
「おおう」
キムラサンも隣にしゃがんでいた。目を合わせて、2人で立ち上がる。
「紹介するわ。こちら、木」
「ひかりちゃん、紹介が杜撰すぎる」
隣からもブーイングが聞こえる。
「わかったわ。本気の紹介しようじゃない」
メルヘン魔法、スタート。さあ、ショーの始まりよっ!




