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40/81

40・ルカスの呪いの正体は


(ルカス視点)


 私の名はメインデルト。キールスの第四王子。

 兄である第一・第二王子は王妃の子、第三王子の母は、元メイド。私の母は側室で、現辺境伯の妹にあたる。

 

 他の兄弟姉妹はいない。父は娘が欲しかったようだが、王妃から釘を刺されたらしい。

 

「また王子だったら、どうなさるの?」

「で、でも、他国との友好の架け橋で、娘を嫁がせるのもありじゃないかと……」

「だから、生まれたのが娘じゃなかったら、どうするおつもりですの?」

 

 王妃の逆鱗に触れ、却下されたという。王弟である叔父上のところは逆に娘ばかりで、そちらが友好の架け橋となる予定だ。

 

 第三王子であるフランシス兄上の母は、元メイドで子爵家の出身だが、そちらで王子を支援することは不可能だ。たまたま聖魔法の素質があったこともあり、現在は神殿で暮らしている。

 

 今のところ第一王子が王太子ではあるが、第一・第二王子共に同母でしかも王妃だ。どちらが王位を継いでも問題はない。

 

 王は、第一・第二王子の優れた方に王位を譲りたいと、問題発言をしたことがある。王妃も止めはしなかった。

 

 一応は、第一王子が王太子ではある。そうではあるが……ということだ。

 

 恐らく2人が切磋琢磨することを望んだのだろうが、そこで足を引っ張ることに全霊を注ぐのが、第二王子のカッスールという奴である。

 

 しかも、私を巻き込んで。やめてよ、ホント。

 

 私の母は、辺境伯の妹だ。

 魔王が出現しなくても、魔物やら隣国の脅威やらで、日々戦いに身を置いている世界の人で、つまりとても強い人だ。

 そんな母を持つと、どうなるか。想像しなくてもわかるだろう?

 母は、とにかく私に厳しかった。賢くあれ、強くあれ、最強であれ。……何度か死にかけた気もするが。

 

 その甲斐あってか、私も少しは強くなった。剣もそうだが、魔力操作もね。


 あれは10歳くらいの頃か。

 剣術の稽古を師匠と行っていたときに、たまたま父上が通りがかって見てくださった。とても褒めてくださって、私も素直に嬉しかった。

 だが、翌日、それは喜んではいけないことなのだと理解したよ。


 毒を盛られたのだ。

 私ではなく、母でもなく。

 私の師匠がね。

 

 師匠は、母の友だった。ここ、辺境領出身の女騎士だ。男性を母の側には置きたくないと、父上が仰せになってね。

 母の親友であるサラが私に剣を教えてくれた。魔法も、戦う術も。

 サラも、元は辺境で母と共に戦っていた、本当の騎士だ。だからこそ、実際に役に立つ剣を教えてくれた。それは、型にとらわれない本当の剣。

 だがそれは、型に囚われた、見せかけの綺麗な剣しか習っていない者からすれば、野蛮で許せないものであったのだろう。

 

 幸いサラはすぐに毒に気がついて吐き出したから、命は助かった。

 だが、代償は大きかった。

 

 手がね、震えるんだよ。足もね。冬で体が冷えたときは、うまく歩けないこともある。

 もう、剣を教えることなんて、出来なかったよ。

 

 皆、私のせいではないと言った。

 だが、私のせいだ。


 私は母に常々言われていた。自分を誇るなと。

 王子であれば、強いのは当たり前。賢いのも当たり前。それだけのものを貰って生きているのだ。お前は謙虚に生きねばならぬと。

 

 なのに、私は父上に褒められた。とても嬉しくて、つい、笑ってしまったのだ。

 それを、兄に見られたのだ。カッスールに。

 あの時のあいつの顔を忘れることはできない。

 私のせいでサラは。

 

 今、サラは辺境領に帰っている。だが、会うことは、母に止められている。

 

 私は自分を許せない。

 

 私は自分を力なき王子だと示さなくてはならない。権力など望まず、王家に跪く臣下として。

 

「それを呪いと呼ぶのかもしれない。私はこんな王家からさっさと抜け出して、冒険者として生きていきたいと思っていたんだ」


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