40・ルカスの呪いの正体は
(ルカス視点)
私の名はメインデルト。キールスの第四王子。
兄である第一・第二王子は王妃の子、第三王子の母は、元メイド。私の母は側室で、現辺境伯の妹にあたる。
他の兄弟姉妹はいない。父は娘が欲しかったようだが、王妃から釘を刺されたらしい。
「また王子だったら、どうなさるの?」
「で、でも、他国との友好の架け橋で、娘を嫁がせるのもありじゃないかと……」
「だから、生まれたのが娘じゃなかったら、どうするおつもりですの?」
王妃の逆鱗に触れ、却下されたという。王弟である叔父上のところは逆に娘ばかりで、そちらが友好の架け橋となる予定だ。
第三王子であるフランシス兄上の母は、元メイドで子爵家の出身だが、そちらで王子を支援することは不可能だ。たまたま聖魔法の素質があったこともあり、現在は神殿で暮らしている。
今のところ第一王子が王太子ではあるが、第一・第二王子共に同母でしかも王妃だ。どちらが王位を継いでも問題はない。
王は、第一・第二王子の優れた方に王位を譲りたいと、問題発言をしたことがある。王妃も止めはしなかった。
一応は、第一王子が王太子ではある。そうではあるが……ということだ。
恐らく2人が切磋琢磨することを望んだのだろうが、そこで足を引っ張ることに全霊を注ぐのが、第二王子のカッスールという奴である。
しかも、私を巻き込んで。やめてよ、ホント。
私の母は、辺境伯の妹だ。
魔王が出現しなくても、魔物やら隣国の脅威やらで、日々戦いに身を置いている世界の人で、つまりとても強い人だ。
そんな母を持つと、どうなるか。想像しなくてもわかるだろう?
母は、とにかく私に厳しかった。賢くあれ、強くあれ、最強であれ。……何度か死にかけた気もするが。
その甲斐あってか、私も少しは強くなった。剣もそうだが、魔力操作もね。
あれは10歳くらいの頃か。
剣術の稽古を師匠と行っていたときに、たまたま父上が通りがかって見てくださった。とても褒めてくださって、私も素直に嬉しかった。
だが、翌日、それは喜んではいけないことなのだと理解したよ。
毒を盛られたのだ。
私ではなく、母でもなく。
私の師匠がね。
師匠は、母の友だった。ここ、辺境領出身の女騎士だ。男性を母の側には置きたくないと、父上が仰せになってね。
母の親友であるサラが私に剣を教えてくれた。魔法も、戦う術も。
サラも、元は辺境で母と共に戦っていた、本当の騎士だ。だからこそ、実際に役に立つ剣を教えてくれた。それは、型にとらわれない本当の剣。
だがそれは、型に囚われた、見せかけの綺麗な剣しか習っていない者からすれば、野蛮で許せないものであったのだろう。
幸いサラはすぐに毒に気がついて吐き出したから、命は助かった。
だが、代償は大きかった。
手がね、震えるんだよ。足もね。冬で体が冷えたときは、うまく歩けないこともある。
もう、剣を教えることなんて、出来なかったよ。
皆、私のせいではないと言った。
だが、私のせいだ。
私は母に常々言われていた。自分を誇るなと。
王子であれば、強いのは当たり前。賢いのも当たり前。それだけのものを貰って生きているのだ。お前は謙虚に生きねばならぬと。
なのに、私は父上に褒められた。とても嬉しくて、つい、笑ってしまったのだ。
それを、兄に見られたのだ。カッスールに。
あの時のあいつの顔を忘れることはできない。
私のせいでサラは。
今、サラは辺境領に帰っている。だが、会うことは、母に止められている。
私は自分を許せない。
私は自分を力なき王子だと示さなくてはならない。権力など望まず、王家に跪く臣下として。
「それを呪いと呼ぶのかもしれない。私はこんな王家からさっさと抜け出して、冒険者として生きていきたいと思っていたんだ」




