35・再会しました
驚いたわ。
むっっちゃ驚いたわ。あかりが目の前にいる。どうしてこんなところに。
「どうしてわかったの?」
「だって、この刺繍、ひかりちゃんのオリジナルキャラの、たぬきちだったもん」
そう、私は勇者の訓練服に背守りの花のアップリケと一緒に、タヌキの顔を刺繍した。
それは私のオリジナルキャラ『たぬきち』。
そう、タヌキ。なぜか皆に不評だったけど。現世でワンチャンないかなと思って、こっそり縫い付けた『たぬきち』。
「こんな変なキャラ縫うのって、ひかりちゃんしかいないじゃん」
泣いた。
ここでは何ですのでと、我々は他の部屋に連れて行かれた。
あかりは私にべったりで、なかなか泣き止まなかった。背中をポンポンと軽く叩いてあやしながら、移動する。
あまりにも注目を浴びて、とっても辛かったわ。
恐らく関係者部屋なのかしら。私が来たことなかった部屋に案内されて、2人でソファに横並びで座った。
「それで、どうしてここにいるのよ」
「ひかりちゃんこそ」
「まあ、私の場合はまあ、色々ね」
あかりをまじまじと見て、ふと気がつく。
「ねえ、あかり。あんた今何歳?」
「何急に。同い年でしょ、双子なんだから」
まさかねえ。でも可能性高い。
「あんた、もしかして15歳?」
「そうよ。そういうひかりちゃんは…なんか老けた?」
「失礼ね」
そう、年齢差を感じてしまった。
そうか、今があの時なのね。
「あかり、落ち着いて聞いてほしいんだけど」
「なあに?」
すうと息を吸う。
「あんた、15歳の時に行方不明になったのよ。半年もね」
「ええっ?」
「多分、今がその行方不明期間なんだわ」
「ってその言い方、ひかりちゃんは私にとって未来の人ってこと?」
「うーん、そんな感じ?」
「大人のひかりちゃんと対面しているのか〜不思議、というか、変〜」
「何よ、失礼ね」
ふふふとあかりが笑った。ようやく笑ってくれた。
そうよね、急に知らないところに連れて来られて、辛かったわよね。
私は再びあかりを抱きしめた。よかった、無事で。
「ところでそろそろ話してもいいかな」
そうだ、勇者関係者が一緒だったのよね。
っていうか。
「そういえば、あかりが勇者ってこと?」
私達は双子だけど、全然似ていないタイプ。二卵性双生児ってやつね。
男女だから余計に違いが明白で、私は母に似て背が高かった。あかりはパパに似て、ちんまりタイプ。
こんなにちんまい勇者だなんて。
「そうか、あんた達が、あかりを誘拐したのね…」
なんだか怒りが湧いてきたわ。許せない。
先ほど話しかけてきた方を、睨むように見た。
「…あら?」
「どったの?ひかりちゃん」
そこにいたのは、知っている顔だった。
「ねえ、あかり、この人って…」
「うん、王子様だよ。第四王子のメインデルト・キールス王子。その隣は騎士のデレクさん」
そう、そこにいたのは、私の学園時代の友人達だった。
ルカスと、デレクだ。
「うーん、そういえばあかり、あんた訓練の時間よね」
「そうだけど」
「積もる話は後にして、とりあえずお互いやることやらないと」
「ええー?」
「文句言わないの。勇者になっちゃったんでしょ」
「わかっているけど」
「ね」
あかりは渋っていたけど、ちらりと王子を見る。王子が頷くと、もう一人の騎士があかりの元へ行った。あかりはゆっくり立ち上がってそちらへ行く。
「ひかりちゃん、いなくならないでよ」
「わかってるって、後でゆっくり話しましょ」
渋々といった形で、あかりは騎士と部屋を出て行った。
部屋に残ったのは、第四王子のメインデルト・キールスと呼ばれたルカスと、もう1人の騎士・デレクだ。
「さて、私の大切な妹を誘拐した件と、もう一つ話したいことがあるわ」
私はゆっくり王子の方を向いて言い放つ。
「貴様、勇者殿の知り合いと思って大人しくしていれば、なんだその態度は!王子に向かってなんという無礼な」
「待て、デレク」
「しかし」
掴みかからんばかりのデレクを、王子が制する。
「何か言いたいことがあるんだよね。君は何者だ」
私はゆっくり深呼吸する。
息を吐いて気持ちを落ち着かせようとする。だけど、なかなか冷静になれないわね。
「仕方ない。メルヘン」
メルヘン魔法が発動して、光のサークルが私を包んだ。
「なにっ?これは魔法か?」
デレクが叫んで王子の前に立った。
「私を元に戻してちょうだい」
光のサークルが私の下から上に流れる。光が消えて、私は自分が元に戻ったことを理解した。
目に前の2人が、驚いた顔をして私を見ていたから。
「エ、エミール?」
「久しぶりね。ルカス、デレク」
そして、ものすごくしっかり笑顔を作った。
「で、王子様って、どういうこと?」
目の前の2人が、怯えていた。




