32・勇者さまの服を繕いました
せっかく作ったから、ポーチを洗濯室に持って行った。
「リンド〜、見てみて、ポーチを作ったの」
「え、なにそれ、可愛いわねえ」
他の子も寄ってきて私の作品を見てくれた。
「これ、もしかしてハギレ?」
「ええ、そうよ。こうやって組み合わせると、いいでしょ?」
リンドはポーチを持ったまま、フリーズしていた。他の子は可愛いって喜んでくれるけど、何かおかしいとこあったかしら。
やがて動き出したリンドは、私の腕を掴んだ。痛いわ。
「これは、仕事になる」
「そうね、一つの産業にもなると思うわよ」
今までもハギレを使った仕事はあった。だが、どうしても残る。その部分は詰め物にしたりと、少々勿体無い使い方をされていた。
だが、これなら使い方は無限にあるといえよう。パッチワークは、布で絵を描くことも可能なのだから。
「主婦の内職ってのもいいとは思うけど、細かい作業だから、自宅でやるのはお勧めできないわね。針を使うから、小さい子がいる家はなおさら」
「それならみんなが集まる場所が必要だねえ」
「そうね。洗濯するときみたいに、みんなでワイワイ楽しく話しながら仕事して、それでお金がもらえるなら、けっこう人も集まるんじゃない?」
「ここらは冬に雪が多く積もるからね。家で出来る冬仕事が欲しかったんだよ。確かに細かい作業だから、自宅で出来る人は限られるかもしれないが、いいねえ」
「領主様に話してみたらどうかしら。スヘルデン領の特産品にしてしまえばいいんじゃない?作り方やデザインも、わかる範囲で教えるわよ」
「いいのかい?」
「もちのロンよ」
少しでもスヘルデン領に貢献できれば、私も嬉しいわ。魔王の出現で疲弊した領地に、少しでもプラスになってほしい。
「今度時間があるときに、作り方講習会を開くわ。まずは自分の分を作ってみたら?」
「やるわ!」
洗濯室全員の目が怖かった。ターゲットロックオン的な。
まずは材料の調達ね。リネン室にもハギレは少しあるけど、これは破れた服に当てるための生地だから、使えないし。
「また買ってこようかしら」
ふとリナリアとの会話を思い出した。わかっているわ。買い占めたりしないから。材料増やしすぎないようにするから。
「さあ、みんな。まずは今日の仕事をこなしてからね!」
パンパンと手を叩いて、リンドが業務開始を告げた。
「さて、私もお仕事始めますか」
今日の繕い物を手に取る。一心不乱に縫っていたら、いつもよりずっと小さな服にあたった。
「随分小さな服ね」
「ああ、それは、勇者様の服ですよ」
近くにいた女の子が教えてくれた。
「頑張っているのね。あちこち擦り傷だらけ」
「そうですね、私だったら逃げていますよ」
「私も〜」
ほつれている箇所を探して、丁寧に修復していく。
「頑張ってくれてありがとう」
感謝の気持ちをこめて一針一針丁寧に。だって、わざわざ異世界くんだり来て戦ってくれるなんて、どんな罰ゲームよ。絶対元気で帰ってほしいわ。
「そうだわ」
女の子の服なんだし、可愛くしてもいいわよね。流石にフリルとかつけたら、校舎裏に呼び出されて飛び蹴りされる自信はある。
ワンポイントなら許されるわよね。
私は自分の道具箱からピンクのハギレを取り出した。それを小さな丸形にカットしていく。色を変えて同じサイズで複数用意する。
カットした丸い生地の端を内側に少し折って、布の端がほつれないように、丸く加工する。
それを服に縫いつけるんだけど、所謂アップリケね。
服の背中側の上、そう、襟から5センチ程下のところに縫い付けていく。丸を6個、六角形の位置に。
最後に真ん中に少し大きめの丸を配置して、完成。
「単純だけど、花に見えるかしら」
「あら、可愛いわね。でも、どうして背中につけたの?」
「私の故郷にね、『背守り』っていうのがあるの。子供を守るものなんだけど、どうかなって」
その花の下に、私のオリジナルキャラクターも、刺繍で小さく入れた。
「…なんか、変わった動物?魔物?」
「違うわよ、タヌキよ」
「なんですか、それ」
「え、こっちにタヌキいないの?」
ま、いっか。完成完成。




