3・木と遭遇しました
川から這い上がって、ゼーゼーハーハー息をはく。つらかったわ、マジ死ぬかと思ったわ。
まだ頭は混乱していたけど、ゆっくり息を吐きながらあたりを見回した。
私が今いるところはわからないけど、元は婚約者の領地へ呼ばれて来たところからはじまっている。義父となるアッコンチ侯爵から、婚姻前に領地へ招待されたのだ。
その時に川で移動するからと船に乗せられて、そのまま簀巻きにされたと。
「ってことは、侯爵もグルか。あんのタヌキ親父〜」
だが、なぜ私を殺す必要があったのだろう。
「こんなに普通なのにね。へ、へ、へっくしょい!」
そういえば、ずぶ濡れで、風邪ひいて死にそうな運命からも免れていなかったわ。
今いる場所がわからないから、本当は川沿いに進むのがセオリーかもしれないけど、追手が来ないとも限らない。私は仕方なく隣の森の中へと足を進めた。どこか隠れるところを探さないと。
とりあえず風魔法で着ている服を乾かすことに。火魔法も混ぜれば乾きも早いわよね。武器は取り上げられていたし、頼りになるのは通常使用できる魔法と、怪しいスキルだけか。
メルヘンって、どういう魔法なんだろう。あの時、私の周りを円を描くように光に包みこんだわね。その中は波も穏やかになった。魚が、ゆるキャラになった。そして、私を助けてくれた。
「これを使うと、動物が助けてくれるってこと?」
疑問符が頭部からザクザク出て来そうな気分だが、こればかりはね。
「試してみましょう」
私は近くの木を見つめながら、
「メルヘン」
と唱えてみた。また私の周りが光出した。
ずんちゃずんちゃ…
きたよ、歌が聞こえてきたよ…
「やっほ、やっほ、おいらは木ー!」
「まんまやないかーい」
速攻で目の前の木につっこむ。予想通り、私が見つめた木が3頭身のゆるキャラに変化していた。
「お困りですかなー、そこのイケメーン〜♪」
「まあ、紳士な木ですこと」
褒められて悪い気はしないわ。素直な木ね。
「私、逃げておりますの。どちらへ向かえば助かるかしら」
「それは、困った問題だー♫」
ずんちゃずんちゃ。
木が踊ってターンする。
よく見たら木が増えている。みんなでダンスを始めたんだが。
「右かーい」
「いや、左よーっ」
「どっちが、正解、きーみーのためー♪」
寒いから、早くして。
最初に聞いた木が、中央に躍り出る。彼をスポットライトが照らす。
「そー、おー、だー」
くるるるるる。びし。
「まっすぐ進めば、辺境伯領。ここは安全な土地なのさー♫」
「おおお、領主はいい人、みんないい人、安心してすすめ〜♪」
じゃーん。
とりあえず、拍手しておこう。
「ありがとう、まっすぐ進むわ」
木が道を開けてくれたので、そこを走って進むことにする。
ゆるキャラたちに見送られ、私はまっすぐ進んだ。
急いでいたから、最後まで歌が聞こえなかった。
「気をつけてね」
「気をつけてね」
「ここは、魔の森〜♩」
「狼でるよ」
私がいなくなった場所は、光が消えて、元の森へと戻っていった。




