2・固有スキルは『メルヘン』でした
川に落とされたとき、一瞬意識が飛んだ。
その瞬間、これが走馬灯というのか、幼い頃の自分を思い出した。だが、それだけではなく、違う自分も見えてきた。
まわりにいるのは、あれ、ねーちゃんじゃね?そう、両親と姉たち。
私には3人の姉と妹が1人いる。5人姉妹だったな。
あれ?それって、前世じゃね?
どうやら走馬灯が暴走したらしい。前世の地球の記憶が爆走して帰ってきたようね。
そうよ、思い出したわ。
前世の名前は岡田ひかり。ひかりと言っても、男よ。
この口調は、仕方ないのよ。だって、姉妹に囲まれて暮らしたんだもん。言葉遣いはうつるわよね。
オネエって言う子もいたけど、気にしてないわ。
絶対君主の母、絶対女王の姉と妹。そして、影の薄い父。
そんなメンバーの中で暮らしたら、普通は父みたいになるのかもしれないけど、私は姉妹と遊ぶのが大好きだった。特にみんなで『手芸』をするのが好きだったの。
姉妹はみんな可愛いものを作ってそれで着飾るのが好きで、あとコスプレもしたし、パッチワークや編み物もしたわね。私も手先を使うのが好きで、みんなでお揃いの服も作ったな。
懐かしいわね〜って、そーいや私、溺れていたんだった。
「やばいっ、うぷっ、紐切らないと!」
あ、声が出た。
水を飲み込みつつも、詠唱して紐を切り裂く。
なんとか両手で水をかいて岸に向かおうとするけど、何か音が聞こえてくる。
「ドドドって、ヤバくない?」
あれ、水が落ちる音よね?
「滝よね〜?!」
まずいわ。さすがに飛ぶ自信もないし。
このまま次の人生にテイクオフかしら。
でも、後悔ばかり残ってる。私の固有スキルもわからないままで、このまま終わってしまうの?
「あ、そういえば固有スキル…」
私は流されつつも、ステータスを展開した。そこに映し出されていたステータスは、
「固有スキル・メルヘン?…」
め
め
「メルヘンって、何?…」
溺れているのを忘れるくらい流されてしまった。滝の音がどんどん近づいてくる。
「だああ、考える時間はないわ。もう、こうなったらスキル発動、メルヘンー!」
途端にあたりが光に包まれた。
「何が起こった…え?」
私のまわりに光の円が作られた。そこだけは川の水がおだやかに波打っている。
すると、なぜか音楽が流れてきた。
ずんちゃずんちゃ。
「もしかして〜、もしかして〜、お困りですか〜♫」
ミュージカルのような歌声とともに現れたのは、巨大な魚だった。
頭は私くらいあるかしら。でもこれ、川魚よね?しかもデフォルメされた絵柄というか。
「魚のゆるキャラ?」
3頭身サイズの可愛い魚たちが私を取り囲んでいた。
「ぼ、ぼ、ぼくらはー、通りすがりの、愉快な魚さー♫」
「はい、助けてください」
とりあえず、藁にもすがる思いで頷いた。
愉快な魚達にひっぱられて、私はようやく岸にたどり着いた。あと少しで滝壺まっしぐらだったから、やばかったわ。
「さ、魚さん、ありがとう」
「困ったときは、お互いサマンサ〜♪」
愉快な魚達は、そのまま泳いで去っていった。
光の円が消えた途端に魚は普通の姿に戻って、水の中に消えていった。
「め、メルヘン…」




