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28/40

28・手芸店という楽園に行きました

 

 リナリアに道案内してもらい、城下町に来た。街は活気に満ち溢れていた。

 

「思ったより人が多いわね」

「まだまだ増えるわよ。国が動き出しているもの」

 

 そうね、魔王討伐のために、多くの戦士が必要になる。国の騎士はもちろん、多くの冒険者もやってくる。

 

「ってことは、冒険者ギルドも混雑しているでしょうね」

 

 予想通り、冒険者ギルド前は、人集りが出来ていた。建物の前にはギルド職員とみられる人が、人員整理を行っていた。

 

「依頼受付の方は、右から、完了報告の方は左ですぅ〜」

「ごめん、それ以外はどっち?」

 

 忙しくて涙目のギルド職員の女の子に声をかける。新人なのかな。淡いピンクの髪をツインテールにした、メガネをかけた女の子だ。

 憂憂しいその子は、我々を見ると、表情を変えた。

 

「はあ?こんのくっそ忙しいときに、それ以外の要件だあああ?」

「あ、また今度にしますー」

 

 夜叉顔のツインテールに背を向けて、我々は冒険者ギルドを後にした。うん。無理。

 

 

「そもそも、冒険者ギルドに何の用だったの?」

 

 急いでその場を離れると、リナリアが尋ねてきた。

 

「冒険者ギルドで、ギルドカードのデータ更新をしたかったのよ。ほら、魔法も増えたし、顔も増えたし」

 

 冒険者ギルドカードには個人情報が入っている。氏名等のプライベートな面や、魔法や技的なものまで。もちろん固有スキルも、である。

 万が一、カードを紛失しても再発行が可能なのは、ギルドが個人を特定することができるから。そのためにも、カードの更新は重要なのだ。

 

「まあ、変身魔法を使える人もいるから、顔の登録もしておいたほうがいいかなと思ってね。あと、連絡を取りたい人もいるから、手紙の依頼もしたかったんだけど」

「それなら、依頼者ですって言えばよかったんじゃない?」

「うん、まあそうなんだけど、言える空気じゃなかったし」

「あの新人、絶対後で怒られるわね」

 

 先に街の見物かな。

 

「それじゃあ、待望の手芸屋さんにレッツラゴー!」

「古いわよ、それ」

 

 リナリアが案内してくれた手芸店は、アンティークな雰囲気漂う、小さな店だった。

 

「これ、ドールハウス好きにはたまんない外見ねえ」

 

 前世のまい姉ちゃんがドールハウス作り大好きだったから、これを見たら大喜びしそう。少し感傷的な気持ちのまま、ドアを開けた。

 

「いらっしゃい」

 

 店奥のカウンターから、高齢の女性が声をかけてきた。おおう、熟練ですぅ〜というオーラがぱねえ。

 

「お邪魔するわね…おおう、ここは夢の国ね」

「趣味って、見えるものを変換するのね」

 

 リナリアのツッコミを無視して、私は店内をじっくり見てまわった。

 布、糸、針、毛糸もある。あああ、手芸やりたい手芸やりたい手芸たやりたい。

 

「声ださないでね。みんなドン引きするから」

「こ、興奮して、心臓が止まりそうよ」

「私も不審者で通報されそうで、心臓ないけど止まりそうよ」

 

 そうよ、少しは冷静にならないと。

 

「おほん、まずは自分用の裁縫道具が欲しいのよ」

「洗濯室にあるのじゃなくて?」

「そう、繕い物以外にも作りたいものがあるのよね」

 

 今日はそのための買い物に来たのだ。お店のお姉さんに、いろいろ聞いてみよう。

 

「お姉さん、私今日は裁縫道具を買いにきたの。針と糸、糸切り鋏は必須ね。あと、ハギレはあるかしら」

「おやまあ、口の上手い、いい男だねえ。ハギレもいろいろあるよ」

 

 お姉さんは、いろんな道具を見せてくれた。そのたびに声を上げてしまっていたけど、お姉さんがだんだん慣れてくれて、本当によかった。

 かなりじっくり見せてもらったのに、嫌な顔せず売ってくれて、感謝しかないわ。

 

「お姉さん、今日は本当にありがとう。作品が出来たら見てもらってもいいかしら」

「もちろんよ、待ってるからね」

 

 手を取り合って、きゃいきゃい話しながら、お店を後にした。

 

「リナリア、ありがとう。楽園に連れていってくれて」

「あー、なんか疲れた。何もしてないけど疲れたー」

「人の買い物に付き合うと疲れるもんね」

「今のお前が言うな」

「はい、すんません」

 

 だ、だいぶ長いことお店にいたもんねえ。来た時より太陽の位置がかなり違うわ。

 

「か、帰ろっか」

「そーね。あ、冒険者ギルドは行かなくていいの?」

「うん、ちょっと考えがあるのよ」


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