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26/39

26・洗濯室は天国でした

投稿したと思ったら、出来てなかった…

大変失礼しました。


 入口の休憩スペースは、繕い物をするための場所だった。そこに戻って、作業場所や道具を教えてもらう。

 

「それじゃあ、こっちに座って。あ、裁縫道具はこれよ」

 

 針や鋏、糸などを入れた小箱を貸してもらう。道具は特に個人専用として決まっておらず、複数ある小箱を自由に使うのだという。

 

 洗濯室の仕事は複数ある。


 まずは、洗濯物の回収から始まる。

 次に中身の確認。人数が多いから洗濯物には必ずタグがついているが、たまに外れていることもある。なので先に確認するのだ。汚れ具合によってはさらに分類する。


 次に洗濯。外で手作業だ。


 次は搾って干す作業。乾いたらアイロンをあてて、たたむ。


 最後に持ち主のところへ運んで終了。ではなく、次の洗濯物と交換という魔のエンドレス。

 


 魔法を使えば他の作業も手伝えそうかしら。

 でも申し訳ないけど、まずは縫いたい縫いたい縫いたいんじゃ。

 貸してもらった小箱には蓋はなく、ただ無造作に針山に刺さった複数の針、糸切鋏、糸巻が見えた。

 ああ、ここは天国かしら。

 

「本当にお願いしていいんですか」

 

 リンドが困惑した表情で再度尋ねる。

 

「早よ、早よ、服、服」

「渡してあげて…」

 

 なぜかリナリアの目が死んでいた。

 リンドと一緒に来ていた女性が、服を手渡してくれた。ささっと繕う箇所を探す。

 

「ああ、ここね」

 

 袖口がほつれていた。その部分を裏返して残っていた糸を縛る。まち針で布をおさえた後、針に糸を通す。

 

「さて、やりますか」

 

 久しぶりの針の感触に笑顔になるのを抑えられなかった。チクチク地道に縫う。縫う。縫う。くはー、たまらん。

 

「…幸せそうね」

「これ、ホントにお貴族様なんすか?」

 

 外野がなんか言ってるが、知らん。私はひたすら、縫った〜♫

 

*****

 

「エミさん、エミさん!」

「は、何かしら」

 

 なんだかすっごく集中していたわ。久しぶりに誰かの声を聞いた気がする。

 

「やっと、聞いてくれましたね。今日はもう終わりですよ」

「え、もうそんな時間?」

 

 顔を上げたら、部屋が薄暗くなっていた。どおりで見えにくくなっていたわ。

 

「おかげでだいぶ終わりました。いつもならもっと残るのに、ほとんど終わっています」

「そう、よかった」

 

 私のいた席の近くに、繕い終わった服が畳んで置いてあった。その横の机にあったのが修復前のものだから、かなり進んだことがわかる。

 

「楽しかったわ。また明日来ても大丈夫かしら」

「ええ、もちろんです。お待ちしていますね」

 

 裁縫道具を小箱に戻して、リンドに返した。

 

「それじゃあ、また明日」

「お疲れ様です」

 

 笑顔で手を振って、部屋を後にした。

 

 部屋を出たところに、丁度リナリアがやってきた。

 

「どう、楽しかった?」

「最高よ〜。リナリア、素敵な職場をありがとう」

「ものすごい笑顔ね」

「もう、生きててよかった最高祭り、好評開催中状態ね」

「それはよかった」

 

 リナリアの目が死んでいた。

 

 その近くの柱の影で、キムラサンがこっそり覗いていた。

 

「あ、キムラサンのこと忘れてた」

 

*****

 

「エミ様、すっごく集中していましたね」

「せっかくかっこいいお貴族様が来たから、みんなで話したいのに、全部無視でしたね」

「でも、ものすっごくいい笑顔でしたね」

「眼福でしたね」

「やばかった」

「尊い」

 

 前世、ご近所のおばさまのハート鷲掴み男は、今世も洗濯室の女性の心を鷲掴み男だった。

 

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