26・洗濯室は天国でした
投稿したと思ったら、出来てなかった…
大変失礼しました。
入口の休憩スペースは、繕い物をするための場所だった。そこに戻って、作業場所や道具を教えてもらう。
「それじゃあ、こっちに座って。あ、裁縫道具はこれよ」
針や鋏、糸などを入れた小箱を貸してもらう。道具は特に個人専用として決まっておらず、複数ある小箱を自由に使うのだという。
洗濯室の仕事は複数ある。
まずは、洗濯物の回収から始まる。
次に中身の確認。人数が多いから洗濯物には必ずタグがついているが、たまに外れていることもある。なので先に確認するのだ。汚れ具合によってはさらに分類する。
次に洗濯。外で手作業だ。
次は搾って干す作業。乾いたらアイロンをあてて、たたむ。
最後に持ち主のところへ運んで終了。ではなく、次の洗濯物と交換という魔のエンドレス。
魔法を使えば他の作業も手伝えそうかしら。
でも申し訳ないけど、まずは縫いたい縫いたい縫いたいんじゃ。
貸してもらった小箱には蓋はなく、ただ無造作に針山に刺さった複数の針、糸切鋏、糸巻が見えた。
ああ、ここは天国かしら。
「本当にお願いしていいんですか」
リンドが困惑した表情で再度尋ねる。
「早よ、早よ、服、服」
「渡してあげて…」
なぜかリナリアの目が死んでいた。
リンドと一緒に来ていた女性が、服を手渡してくれた。ささっと繕う箇所を探す。
「ああ、ここね」
袖口がほつれていた。その部分を裏返して残っていた糸を縛る。まち針で布をおさえた後、針に糸を通す。
「さて、やりますか」
久しぶりの針の感触に笑顔になるのを抑えられなかった。チクチク地道に縫う。縫う。縫う。くはー、たまらん。
「…幸せそうね」
「これ、ホントにお貴族様なんすか?」
外野がなんか言ってるが、知らん。私はひたすら、縫った〜♫
*****
「エミさん、エミさん!」
「は、何かしら」
なんだかすっごく集中していたわ。久しぶりに誰かの声を聞いた気がする。
「やっと、聞いてくれましたね。今日はもう終わりですよ」
「え、もうそんな時間?」
顔を上げたら、部屋が薄暗くなっていた。どおりで見えにくくなっていたわ。
「おかげでだいぶ終わりました。いつもならもっと残るのに、ほとんど終わっています」
「そう、よかった」
私のいた席の近くに、繕い終わった服が畳んで置いてあった。その横の机にあったのが修復前のものだから、かなり進んだことがわかる。
「楽しかったわ。また明日来ても大丈夫かしら」
「ええ、もちろんです。お待ちしていますね」
裁縫道具を小箱に戻して、リンドに返した。
「それじゃあ、また明日」
「お疲れ様です」
笑顔で手を振って、部屋を後にした。
部屋を出たところに、丁度リナリアがやってきた。
「どう、楽しかった?」
「最高よ〜。リナリア、素敵な職場をありがとう」
「ものすごい笑顔ね」
「もう、生きててよかった最高祭り、好評開催中状態ね」
「それはよかった」
リナリアの目が死んでいた。
その近くの柱の影で、キムラサンがこっそり覗いていた。
「あ、キムラサンのこと忘れてた」
*****
「エミ様、すっごく集中していましたね」
「せっかくかっこいいお貴族様が来たから、みんなで話したいのに、全部無視でしたね」
「でも、ものすっごくいい笑顔でしたね」
「眼福でしたね」
「やばかった」
「尊い」
前世、ご近所のおばさまのハート鷲掴み男は、今世も洗濯室の女性の心を鷲掴み男だった。




