24・エミール、第二形態に変身しました
先日、王都から、勇者御一行様が到着したらしい。
城内の秘密の部屋に、転移魔法陣があって、王都と繋がっているという。そこから、お客人が多数来ているのだと。
勇者達が来る前に、私はメルヘン魔法で姿を変化させた。もしもアッコンチ侯爵サイドの人間がいて、私の素性がばれたら困るからね。
で、私が変化したことを城内の人に説明しないと困るじゃん。
『あんた誰、はあ、エミールですわー、顔違うじゃん、実はコレコレで…』ってこの流れを城の全員とやるのは、正直つらい。リナリアんちって、一応城だから人多いじゃん。
そのことをリナリアに相談したのよ。そしたらみんなに報告するから大丈夫って言われてね。
どうやるのかと思っていたら、まさかの全員集会だった。
ここ辺境伯城では、毎朝全員集合して連絡交換するんだって。確かにみんながいる前で話せば、ミスも減るか。もちろん警備当番とかで来れない人を除いてね。
そこで舞台に上げられて、リナリアに紹介された。
「みんな、これがエミールの第二形態よ。ちゃんと覚えてね!」
「へいっ、お嬢!」
ま、連絡はシンプルが1番ね。体育会系さすが。
こうして新・私(第二形態)の姿で、しばらく滞在させてもらえることになった。
だって、魔王が復活したら、安心して旅に出れない、これに尽きるわ。
なので、しばらく滞在させてもらって、その間にメルヘン魔法の練習とか、手芸店のマーケティングリサーチをすることにしたの。
あの時、幽霊連れて来て、本当によかった…
「勇者様以外に王子が2人来ているのよ。だから、そっちには行かないようにね」
リナリアに城内の見取り図を見せてもらって、行動可能範囲を確認する。
「しばらくは、勇者様の教育と、訓練になるわ。戦えるようになったら、訓練を兼ねて、みんなで魔物討伐ね」
エミも行く?って聞かれたけど、笑顔でノーサンキューしておいたわ。無理って。
「私もメルヘン魔法をもう少し極めないとね」
「何をするの?」
「正直何を試せばいいのか、わからない」
リナリアとキムラサンがずっこけた。
「まあ、わからなくもないわ」
「可能性が無限すぎてね」
それと、どんどんメルヘン仲間が増えそうってのもあるけど。
「今までって、トラブルがあって、行き当たりばったりでメルヘン魔法使っていたからね。旅に出るとしても、これで魔物退治とかも出来るようになればいいけど」
「魔物もメルヘン化すればいけるんじゃない?」
「以前、狼に遭遇した時は、メルヘン魔法で狼も3頭身になったけど、攻撃はされたわね」
なので、いつかは魔物退治に一緒に連れて行ってもらって、そこで練習するのがベストな気がする。もちろん城内の気心しれた騎士さんと。
だけど今はみんな忙しそうで、声をかけにくい。
サムソンさんも例外ではなく、普段温厚なのに、目が血走ってた。うん、無理。
「それに、いくらリナリアの恩人であっても、ずっと無銭飲食はどんなもんかと思うのよ。魔王騒動が落ち着かないと出発出来ない以上、私も何か仕事しないとね」
「恩人待遇でも問題ないわよ。私も何にも仕事してないし」
「あら、リナリアはこれから忙しくなるでしょ?」
「なぜ?」
リナリアが首を傾げると髪がふわりと揺れた。知らない人が彼女を見ても、幽霊には思えないだろう。だが、幽霊。こう見ても幽霊。
「だって、幽霊でしょ。魔物に襲われることもないから、偵察にはもってこいじゃない」
「あ、そっか!」
基本リナリアは、辺境生まれのせいか、荒事は得意分野だ。だが大人になるにつれ、貴族令嬢としてのある意味『仕事』を優先させられていた。
なので、今は令嬢よりも、好きなことをすればいいのだ。
「そうね、お父様に相談してみるわ。戦力として混ぜてもらおっと」
なかなか嬉しそうでよかった。
「私は裏方希望ね。なんてったって、学園では中程度の成績だったし」
体力知力魔力すべて平均値。自信があるのは。
「ねえ、洗濯担当に紹介してもらえないかしら」
「はあ?」




