22・閑話 ラルフの告白・そしてもう一人
(ラルフ視点)
俺の名は、ラルフ・ガーデン。
次男だが、後継者に決定している。生まれた時から、俺は勝者だ。
父は伯爵だが、母親は元男爵令嬢。若い日の過ちとかいうやつで平民になったが、父と再会して所謂お妾さんになった。
だが、父の妻が病死して、父が母と再婚。俺は正式に息子になった。
家には前妻の息子、つまり長男がいた。
ヒョロい体に色白の顔。どうみても運動神経は、なさそうだった。
俺は頑張った。強くなって、俺が後継者になってみせると。
あいつは、勉強そこそこ、魔法も普通。戦う力はからっきしの、てんでダメな奴だった。
おまけに神から貰った固有スキルは、そもそも読めない。
これは、勝った。明らかに俺は勝者だ。
ある時、あいつの婚約者が俺に声をかけてきた。隣の領地のアッコンチ侯爵家のパトリシア嬢だ。あいつにはもったいないほどの、美しい女性。青みがかった銀髪と、青い瞳がその美しさを際立たせている。
「私は、ガーデン家の後継者の妻になるために来たのです。それは、あのお方ではないでしょう?」
その通りだ。後継者は、俺だ。
彼女が微笑んだ。
どうみても後継者は俺だが、相手は一応長男だ。
あいつの母方の祖父母も他界していて、その息子が後を継いでいるが、そこからの援助はほぼないと聞いている。
だが、難癖をつけられても困る。
だから、堂々と俺が後継者になるには、あいつに消えてもらうのが1番なのだ。
パトリシアがあいつを領地に招待した。こっそり同行して、みんなであいつを川に落とした。
美しい妻も、地位も権力も、全てが俺のものになった。
*****
(アダルベルト視点)
「パトリシア、ご苦労様」
「お兄様」
船遊びから戻った妹に声をかけた。一緒にいた新しい婚約者には、先に休んでもらっている。
今日はさぞかし疲れたことだろう。
我々は、二人でお茶を飲むことにした。
「新しい婚約者はどうだい」
「はい、とてもわかりやすくて良いお方です」
「前の長男よりはマシか」
「そうですわね。エミール様は優しいお方でした。ですが、心の中までは読めないところがございました」
「アレは御し易い。お前が全てを支配するんだ」
「おまかせください。ガーデン領は良さそうなところですから」
「頼んだよ。可愛い妹よ」
妹の手を両手でそっと包み込む。妹の頬が赤く染まって潤んだ瞳が私を見つめる。
「ああ、可愛い子だ。私はもう一つの方を始末しないといけないからねえ。それが終わったら。わかっているよね」
「もちろんですわ。お待ちしております」
「いい子だ」
掴んだ手を引き寄せ、小指に口付けた。うっとりとした表情の妹に、微笑みを返した。
私の名前はアダルベルト・アッコンチ。侯爵家の次男だ。
そう、次男。長男のスペア。
両親は私に期待する。長男より強くないこと、賢くないこと、野望を持たないことを。
そのくせスペアなんだから、そこそこ優良品でないと困るというわけだ。随分勝手なものだよね。
ただねえ、こう言っては何だけど、この程度の侯爵領なんて、ちっとも欲しいとは思わないんだよ。
私が欲しいものはね、もっと大きいんだ。
「私の固有スキルなら、世界を手にすることだって可能なのだから」
まずは隣の辺境伯領あたりから。
どうせただの森だ。焼き尽くしたって困ることもあるまい。
次回からは、勇者と魔王編となります。
読んでいただき、ありがとうございます。




