19・今後の相談をしました
葬儀が終わり、翌日私は城内の客室にいた。
キムラサンと同室だが、仕方ないわね。こいつを1人にしたほうがよっぽど怖いわ。
テーブルを挟んでキムラサンと、その隣には浮いているリナリアが。
幽霊とバレてからは、通常浮いて移動しているが、今も椅子に座らず空中浮遊だ。
メイドさんからお茶を出してもらって、一息ついていた。
「ふう、これで犯人も捕まったし、葬儀も終わったし、一件落着ね」
「そうね、エミもアッコンチ伯爵領に突き出されなくてよかったわね」
そうなのよね。あれからリナリアの家族に、私が身内に殺されかけたことや、リナリアを変化させて連れてきた経緯を説明して、理解してもらえたのよ。
「その変な話し方は?」
「癖なのよ〜」
「はあ」
リナリアのパパンが、私はすでに溺死体で見つかって、腐敗がひどいので燃やしましたってアッコンチに報告してくれたの。
その時の服はこれって、私が着ていた服の一部を一緒に送ったら、すごすご帰っていったらしいわ。
私をダシに、侵略する気満々だったって、どういう一族よ。結婚しなくて、マジ良かった。
「で、これからどうするの?」
リナリアが魔法でクッキーを浮かして口に運んだ。そのままかぷっと噛んで食べている。
幽霊がどんどん進化して、食事も可能になってる。
物を動かす力って、魔法じゃなくって、ポルターガイストになるのかしら。
「それは、リナリアの方でしょ?葬儀も終わったのに成仏しないけどいいんかいって、あちこちで突っ込まれているそうじゃない」
「ぐはっ」
あ、むせた。
「ほら、お茶お茶」
カップを持ってリナリアの口元に運んだ。
「そうなのよね、普通は成仏するんだろうけど。それが幸せなんだろうけど」
「別にいいんじゃない?よそはよそってやつよ」
「そんなもん?」
「だって、もう少し自由に過ごしたいんでしょ?」
「まあね。私、急に死んじゃったでしょ?だから、やりたいこと何も出来なくて。別にこれがやりたいってことは思いつかないんだけど、でも、このまま成仏は、嫌なの」
「うん、わかる」
私もいきなり死ぬところだった。前世はいきなり死んだし。
「今回の件で、ある意味自由になったから、私も夢を叶えようかなって思っているの」
「え、エミの夢って何?」
ワクワク顔でリナリアが顔を覗きこんできた。
「前世の夢がね、繊維問屋に就職することだったの」
「…渋いわね」
「うちは7人家族でね。両親と姉が3人、私と双子の妹で、合計7人ね」
「多いわねえ」
「で、父と妹以外が手芸好きでね。将来は繊維問屋で社員割で買い物するのが夢だったの」
「…思ったより現実的なのね」
「で、仕入れのノウハウとか、いろいろ勉強して、最終的には、手芸屋さんを開くのが夢だったの」
「長い夢ね」
リナリアがふわっと笑った。その優しい笑顔につられて私も笑う。
「姉達にも笑われたわよ」
「そっか、その口調って」
「うちの家族、母が女王で姉も強くて、父は空気だったからね。私も姉達と一緒に手芸するのが大好きだったし。一緒にいたら、口調はうつるもんでしょ」
「エミらしいわ」
「そうね」
よくそう言われたわね。クラスメイトも、近所のおばちゃんも。今考えると、みんな優しかったな。
「いいんじゃない、その夢」
「でしょ?んでも、今回は繊維問屋の若獅子見参はなしで、そのままお店開業でもいいかなって思っているんだけど」
「まあ、その前に、軍資金調達しないとね」
「そうね。だからまずは冒険者をやりながらお金稼いで、旅をしながらお店を開くための場所探しとか、マーケティングリサーチとかね」
「やること多いわね」
「そうなのよ。だからね」
私は右手を伸ばした。空中のリナリアの髪を一房掴む。
「一緒に来る?」
「えええっ!」
リナリアの顔が真っ赤に染まる。そのまま上昇して、頭だけ天井を通り抜けた。もちろん、髪はすでに手からすり抜けている。
「失礼します、お茶のお代わりを…えええっ!」
タイミング悪く入室してきたメイドさんが、天井からぶら下がった体を見て悲鳴をあげた。部屋の前にいた騎士も入ってきて、天井を見る。
「お嬢様〜、びっくりさせないでくださいよお〜」
そして何事もなかったかのように、お茶を入れ替えて、皆部屋を出て行った。リナリアは、顔を隠したままだった。
ここの連中も、適応力、ぱねえな。
ようやく手芸の話が出てきた。
なかなか進まず、すんません。




