18・「犯人はお前だーっ」が言えて成仏しそうです
ようやくリナリアが、家族に会えた。
もう涙と鼻水が止まらないわ。広間の全員の啜り泣く声というか、男泣きが、正直うるさい。
なんというか、熱い漢の辺境伯一家なのねえ。泣き声が、うおおおおおおっ!!って感じだし。
…それ聞いたら、ある意味冷静になれたわね。我に返ったというか。うん。
ようやく全員泣き止んだようね。誰か、ティッシュをここにー。
「で、誰がおめえを殺ったんだ。ああん?」
あら、急に寒気がするわ。部屋の温度が一気に下がった。
「おう、そいつを引きずりだして殺っちまいましょうぜ!」
あら、今度は温度が上昇なう。寒暖差がやばいわ。
ふっふっふ。
リナリアの笑い声が広間に響いた。
「ようやく、私の出番ね。そう、名探偵リナリアさまのね!」
あ、温度が少し下がった。
「あれ、どうみても姉様だわ」
冷静に弟くんが、つっこんだ。
リナリアは、自分に起きたことを話した。拉致られて、あの村の狩猟小屋に連れていかれて、殺されたことを。
「犯人は、誰なの?」
リナリアの母が、ハンカチを口で咥えて手で引っ張りつつ尋ねる。いわゆるキーってやつ。それ、やる人いるんだ。
よくぞ聞いてくださいましたって顔に書いてあるリナリアが、弟さんを指さす。
「え、ジャック?」
「いやいやいや、殺ったら殺られるって、無理無理」
「んじゃなくって、犯人は、あんたの付き人、その3よーっ!」
「「「えええっ!」」」
「付き人その3、連れてこーい!」
「え、こいつ?」
つい、横から口をだしてしまった。
連れて来られた人は、どう見ても死にそうな姿だった。まだ若そうなんだけど、とにかくやつれていますって顔。髪は白髪が増えて、目の下には、くっきりクマさんがキャッホーしている。顔色はグレー。うん、黒に近いグレー。痩せ細って、フラフラ歩いてきた。
「こ、こいつが犯人か!」
「おめえが、娘を」
「ま、待って!」
絞めようとする辺境伯を止めるリナリア。
「どうしたのよ?」
リナリアがこっちを見て舌をだす。
「ま、間違えちゃった」
全員が、ずっこけた。
「お嬢様らしい」
騎士のサムソンがボソッと呟いた。
「だって、仕方ないじゃない?弟の付き人ってのはわかっているけど、順位なんて、アヤフヤなものは、そう覚えているかどうか…」
めちゃ言い訳しているリナリアを無視して、辺境伯はさっさと弟の付き人全員を召喚した。
第一から第十までいるらしい。
すごいわね。私には誰もいなかったし。いや、自分のことは自分で出来るからいらないし。いや、ま、いいや。
「この中にいるのか!」
「ええと…」
リナが1人ずつ見ていく。
「第一、第二、第三…」
付き人、ビクビクしている。そりゃそうだよな。
「あーっ、こいつよこいつ!」
「第六付き人ですわー、こいつ」
「…もしかして、第三付き人さん、間違ってリナに呪い殺されそうになってた?」
「犯人は、お前だーっ!」
やっと言えた〜って、こら、リナリア、成仏しかけているわよ。まだ早いって。
とりあえず、間違って呪い殺しそうになってた奴には、土下座しとけや。
即行逃げようとした第六付き人は、即行捕まって簀巻きにされた。
見覚えあるわね、簀巻き。
そのまま尋問がスタートした。
固有スキルの「審判」を持つ人がいて、その人が場を仕切ってくれた。彼が質問すると嘘もつけず、おまけに自殺も阻止できるらしい。便利。
「あなたは、リナリアお嬢様を連れ去りましたか」
「…連れ去っていません」
「嘘つくんじゃないわよっ!」
「どうどう」
リナリアの扱いに慣れてんな、さすがリナの兄貴。
「それじゃあ、リナリア様に何をしましたか」
「…お嬢様は、お可哀想なのです」
「ほう?」
第六付き人は簀巻きにされてから、目がうつろだった。だが、何かのスイッチが入ったかのように急に語り始めた。
「だって、お嬢様は、お可哀想だ。好きでもない男と結婚だなんて。だから、私がもらってあげたのです。私が優しくしてあげればお嬢様はお幸せになれたのに。なのに…」
「なのに?どうしましたか?」
「なのに、お嬢様は、私の手を振り解いたのです。あいつの方がマシだと。だから、私の言うことを理解しないお嬢様は、お可哀想なのです」
結局、犯人の言いたいことは、誰も理解できなかった。
可哀想だから、私が愛してあげる。
でも逃げるなら、可哀想だから、殺して楽にしてあげる。
そういう上から目線で、女性を見ていたようだ。
彼は元々貴族の息子だが、母親は愛人で元平民だという。そのせいで異母兄弟から嫌がらせを受けていたと。平民のくせにと。そのせいで拗らせ、自分は貴族なのだ。身分の高い者なのだと、思い込むようになったという。
その後詳しく彼に話しを聞いた「審判」スキル持ちの人が、彼の「余罪」も明らかにした。
リナリアは「八番目」の女だった。
その後、リナリアの供述通りに、彼女の遺体も見つかった。他の女性は全て魔物に処分させていたのだという。
リナリアだけは、自分に見合う身分の者ということで、埋葬してあげたのだと。
犯人の家を捜索したところ、奴の「思い出」の品という名の、彼女達の遺品が見つかり、それで被害者の身元も明らかになった。
数日後、合同葬儀が執り行われた。
リナリアの家族同様、ずっと娘を探していた人々が号泣していた。
でも、これで眠れる。
どうか、皆、安らかに。
で、リナリアどーする?成仏する?




